見出し画像

努力するのにもっともらしい理由は要らない話

たくさんのちびっ子・中高生と話していると、彼らの勉強する理由・受験で志望校を決める理由は様々です。でも世の中的に、受験とか就活の面接って「それらしい理由」がないと印象悪くなるのはあいも変わらずだと思います。なぜそれらしく聞こえる・もっともらしい志望理由を書いたり述べたりするのか?その理由は明確です。昭和マインド満載のおっさん・おばちゃん達が喜ぶからです。

今回は僕が出会った、一般的には「不思議な理由」から学校を決め、共に学んで受験に臨み合格を勝ち取ってきた数名の方々のエピソードから思うことを綴ります。

画像2

【努力の理由①:自動販売機に憧れた少年】

学校を選ぶ時、文化祭とかオープンキャンパスを参考にする…ってよくあるんです。そこで校風とか、校長の思いとか、カリキュラムとか、実績とか、在校生の雰囲気とか…。様々な角度から「将来自分(保護者の場合は我が子)にどんな風に役に立ってくれるか?マッチングしそうか?」的なものを見てくる…というのが学校選びの王道。でも大体の学校は説明会となると色々盛られていたり、その日はまあ余所行きだったりするんですよね。半分くらいしか参考にならない。だから僕はよく「残り半分は登下校の生徒の様子を数日見るとわかる」とか言っていました(笑)

涙もろく弱そうに見えて、本番には異常に強いりょう君(仮名)が小学4年生の頃に、とある学校の文化祭見学に行ってきた後のこと。りょう君は僕を見つけると一目散に駆け寄ってきて、興奮気味に話し始めます。

りょう君「先生!オレこないだ〇〇中学校行ってきたんだけど!!」

ソガ氏「おーおー、母上から聞いていたよ。どうだった?」

りょう君「それがさ、すごい発見しちゃったの!」

ソガ氏「ほう!なになに?教えてよ!」

りょう君「なんとその学校ね・・・自動販売機があるの!

ソガ氏「ほーぅ。。なるほどね・・・」

りょう君「違うんだよ先生!それはね、パンの自動販売機なの!!」

彼は自動販売機の中のロボットアームのような奴が動いて、鮮やかにパンを落としてく様子にすっかり魅了されたようです。いや、自販機は他のとこにもあるから(笑)

何と彼は「いつかこの学内の自販機でパンを買う」という野望を絶やさぬまま受験勉強を続け、最終的に意中の学校への合格を果たしてしまったのです。

【努力の理由②:蜘蛛が嫌いな虫博士を迎えてくた生物部】

とても博学にして冷静な男の子。ミッチーという愛称の彼はスナフキンを地でいけるオーラを漂わせている、ある意味での不思議キャラでした。(見た目も似てた)

画像1

彼は「ありとあらゆるものに精通しているんじゃないか?」と思うほどの知識を、小学6年生にしてすでに備えている子でした。その中でも特に石(宝石とか)と昆虫類には異常と言えるほどの知識を持ち合わせていました。しかし、昆虫は大好きなのにも関わらず、なぜか蜘蛛だけが好きになれないという特殊な悩みを抱えていました…。

そんな彼が、あまり興味がわかなかったけどとりあえず行ってみた某私立進学校の文化祭。ここで生物部副部長と運命的な出会いを果たします。なんと偶然にも、その年の生物部のその年の出し物に蜘蛛の標本があったそうなのです。「おいおいマジかよ…」と彼は思ったそうですが、その副部長の丁寧かつ巧みなプレゼンにあっという間に魅了されたそうです。結果、なんと彼は自力で克服できなかった蜘蛛嫌いを治してもらって帰ってきたのです!(笑)

その後、彼はドンピシャでこの難関私立中学に合格を果たします。合格の報告に来てくれた彼と話しました。

ソガ氏「いやー、よかったね!この合格はすごい!」

ミッチー「あぁ…。まあ。どうも。」

ソガ氏「相変わらずのリアクションやね(笑)嬉しいでしょ?」

ミッチー「はい、まぁ…。でも・・・」

ソガ氏「でも?どしたの?なんか気になるの?」

ミッチー「いや、目標はまだこれからだから…。生物部で副部長にならないと…

ソガ氏「・・・あ、そっち?!」

そういえば彼は副部長になったんだろうか??

【努力の理由③:合コンでモテるには?】

10歳前後のちびっ子たちは、大人がどんなに予測や想像をしていても、いつもそのさらに斜め上からいろんなこと言ってくるなぁ…といつも思います。

中学生・高校生くらいになってくると分別もついて、良くも悪くも大人しくなっちゃう人が多い。ただ、僕の経験上何%かは純粋に興味や好奇心で学び続ける人がいます。その「純粋な好奇心」が時として大人を驚かせることもあるわけで…。

当時、担当していた中1のクラスの男子みきお君(仮名)と面談をした時。真顔、というかすごくニュートラルな表情で彼がポツリと言います。

みきお「先生・・・、合コンでモテる大学ってどこですか?

ソガ氏「ほう・・・え、ていうか今から?なんで?!」

みきお君曰く「合コン」という音の響きが良いらしく、そこでモテる自分でいたい。そしてどうやら大人の世界だと「合コン」という場でモテる人とそうでない人がいて、それは大学の名前や音の響きで変わるらしい…。

そんなこと、誰に教わった?何をみたの?まだ中学生ぜよ?

これ、受け答え難しいですよね?今これを読んでいる皆様だったらなんて答えますか?下手をすれば思いっきり炎上しそうな話題・・・。そもそもそんなのデータになっているわけでもなく。なっていたとしても、怪しい週刊誌とかの根拠なきデータだったりしますからね。ので、僕も言葉を選びながら答えます。

ソガ氏「いやー。どこでもモテるやつはモテるし、違いはないんじゃん?」

みきお「いやいや先生、甘いっす。女子はそうでもないみたいっすよ?先生の感想とかもでいいんで幾つか教えてくださいよ!」

ソガ氏「うーん・・・。そう言われてもなぁ・・・(困惑)」

みきお「例えば〇〇大学ってあるじゃないですか?あそこはどうです?」

ソガ氏「あー・・・モテそう(笑)」

みきお「ほら!やっぱり!!そういのが知りたい!」

結局、その日の面談は、面談というよりも単なる喫茶店の会話のようになってしまいましたが彼は大満足で学校の名前を仕入れて帰ったのです。(どんな大学を挙げたかは内緒)

次に彼は「合コンにモテそうな大学に入るためにどんな高校に行くと良いのか?」という考えを軸に高校入試を考え出します。結果、「大学の選択肢を拡げられるような学校が良い」という結論に至り、地元で1番の公立高校に行こうと決めたのです。この時が中1の秋。

この時、彼の成績は偏差値37。目指した学校の偏差値は63くらい。普通に考えて難しい。ところが彼は半年ほどで20以上偏差値を上げて、合格のリアリティが出て来て中学2年生へと進級し、結局本当に意中の高校に合格してしまいました。

彼の場合は、成績が上がって本当に狙えるかも・・・となった時点で当初の目的がどうでも良くなったのも印象的でした。「とりあえず合格してみて、あの高校で学校生活を送ってみたい」という想いに変わっていたのです。

その新たな想いも強かったからか、あっさりと合格を勝ち取って来たのです。

【努力する理由づけで大切なこと】

登場してもらった彼らの理由は特別でしょうか?おそらく現時点では特殊な部類のはずです。一般的に、入試における学校の志望理由も、就職活動の志望理由も

「貴校の〇〇という学校方針や、△△の活動に憧れて・・・」

「御社が掲げる〇〇という理念に共感し・・・」

「まあ、自分の身の丈にあったところから考えるか・・・」

まあこんな感じです。学校や会社の側に自分を寄せていこうとするのはよく聞くこと。だから個性が抑圧されていくのかな・・・みたいな。そのような「相手に寄せていった理由」で頑張れれば良いけど、うまくいかなくなると苦しくなってくる人が多いし、努力が続かない。結果、他責の人生を歩んでしまいがち。

努力する理由づけは必要か?という問いの1つの答えは「その理由でもって、本人が努力というか、夢中になって没頭できるならば必要」だと思うのです。

・自分のことをフッた彼氏を見返したいという女子の美への強い執着

・竹馬に乗りたくて、傷だらけなのに涙目でも諦めない粘り強さ

・なんか褒められちゃったら気持ちよくなってやめられないお菓子作り

・あの人に「ありがとう」と言われるためだけに時間と努力を惜しまない姿勢

何というか、最近流行りの「好きなことをやろう!」とはちょっとニュアンスが違う・・・飢餓感みたいなものがあるとめっちゃ強いと思うのです。だからその人の没入感とか飢餓感を生み出してくれるならば、論理的で整っていて社会性のある素晴らしい理由である必要は、特に無いんですよね。

【学ぶことや努力は好奇心と飢餓感で彩られる】

画像3

僕トマトが好きなんです。美味しいトマトってどうやって出来るか?テレビだか漫画だかでみた記憶があるのですが、畑であげる水をギリギリまで減らす。その方が美味しくなるんですって。

僕は昔から10〜20年先の未来を想像しながら、長期的な目標やビジョンを持ち行動したり計画を立てたりすることに憧れがあります。でも多くの人が「ごもっとも!」というような長期目標を作るのは難しく、かえってモヤモヤしてしまうことの方が多いなぁ…と反省もするのです。

未来への目的・興味は変わって当たり前。ならばあまりそういうものに拘りすぎず、好奇心をあちこちから刺激する工夫をする。そして与えすぎないで(摂取しすぎないで)上手に・適度に飢えを感じられるようにする。それって学びや教育においてとても重要な気がします。

要領の良いテクニックを教える。大多数の人が良しとしそうな模範回答を与える。そういう効率的な何かじゃない、もっとコアな、個々のハートにダイレクトに突き刺さるような、他の人が聞いたら「お前大丈夫か?」と言いそうな、それでいて一見非効率的な…。そういうものに出会う機会・環境作り=未来教育=共育に、令和になった今も(令和になってより一層)憧れ、模索を続けるのです。

社会がもっと変人に寛容になると良いなぁ…

社会がもっと「〇〇っぽくない動機」に前のめりだと幸せな人が増えるかと…

働き方改革が進んだところで、結局「年中夢求」が一番なわけで。

「どうでもいい理由」も素晴らしい!そんな社会になりますように✨

教育に未来を価値を感じて、記事で心が動いた方からのサポートは嬉しいです。いただいた信頼の形は、教育セミナーで使いたい本とかレゴとか…etcに使います!