湯灌【大西一郎『ある視点』第35回】
「しんどい」と「いたい」と「しにたい」が混ざったような言葉。最期の朝、父は一呼吸ごとに、「いいあい」「いいあい」とつぶやき続けた。
「何?しんどい?」「痛い?」と私が訊くたびに、曖昧にうなずいた。病院から電話を受け、母がとりあえず私を一番に病院に放り込んだので、病室にはしばらく私と父、二人きりだった。もはやぺらぺらと思い出話ができる段階ではなかったので、父の「いいあい」という言葉にうん、うん、と頷いた。もっと手を握りしめながら、優しい言葉をかけ続けたりしても良かったかもしれ