怪奇、怪奇。世。間二間に。

音が聴こえない。目の前が真っ暗のまま。なんの匂いもしない。
凸凹、つるつる、ざらざら、触れてみても何も感じない。
恐る恐る、口のようなものを近づけて、ペロッと舐めたように何かを動かしなのか、何かを含んだのか。
味は何も、熱いも冷たいも、感じられない。

すべてが闇に包まれた感覚。恐怖、興奮、目のような何かから涙を流す事もなく、ただただ、言葉も持たず、何の目的も持たぬまま。

時間という流れゆくモノのなかで、のらりくらりと、動くだけ。
今の場所すらも見当がつかず、どうしようかと検討もつかない。

言葉なんてありはしない。ただ、そこに佇むだけ。佇んで、動くだけ。

ーー佇む。ただ、佇む。

言葉はない。ただ、そこに佇むだけ。佇んで、のらり、くらりと動くだけ。
固さも厚さも感じない。ただ、言葉も持たず、何の目的も持たぬまま。

ふと、風が吹く。

風は感じない。だが何かが聴こえる。
音は感じない。しかし、暗闇が分かたれた。
瞬き程の、薄く、硬い、白い線。
世界は暗いはずなのに、不思議なほどに、白く短い線が覆いつくす。

すこし経てば、元に戻る。
少し断てば、元に戻る。る。もど、すこし、たてに戻る、少し、経てば戻る。たて。もど、もとにもとにたてばすこし、すこしたて

……気が付くと、暗い世界に、なにかがあった。
ないはずなのに、なにかがあった。

これはなんだ。

動く。動きたい。動かない。分からない。

匂い、匂いたい、匂わない。わからない。

見る。見たい。見れない。分からない。

跳ねる。縦に進む。横に進む。何かに近づく、何かとぶつかる。
早くなる。近づく。気になる。速くなる。速く早く疾く速くはやく。

……止まる。佇む。
……止められた。何かに捕まった。
…….焦る。逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ。

やられる。

跳ねる。横に動く。動かない。元に戻る。少し、経てば戻る。

戻れない。

「~~~、~~、~~~~~~…….~~」

何かが聴こえる。分からない。分かりたい。

……冷たい。何か。触れた。触れられた。

「~~~~~~……~~!!」

音が聴こえる。聞こえない。聴こえた。聞こえない。聴こえた。

瞬く間に。世界が白に染まった。

黒に戻る。戻りたい。黒に、もどりたい。もどり、もどりた、

もどりたくない。

ポツっと呟く。

「~~~…….ーー~~~~……..お家におかえり」

声が出ない。何かが聴こえた。白が覆いつくした。声が出ない。
何かに触れられた。跳ねながら、触れられた。

微かに、微笑みが見えた。









…….


…………


気づくと、黒を白が覆いつくした。

黒は、微かに、白に残る。

俯いているような気がした。

顔を上げてみる。

言葉がわかる。「ーーーあ」
話してみる。

何かに持ち上げられた。
辺りを見回す。優しく。体に触れられた。

泣いた。初めて。声を出せた。
大きく、大きく、胸いっぱいに空気を吸い込む。
ゆっくり、そして、ゆっくり。空気を吐いて出していく。

気が付くと、握る、舐める、目を開く、閉じる。



ふと、誰もいなくなる。
白い中に、誰かが見える。1人? ...…1人。
だれだろう。顔を横に軽く倒す。

温かさを感じる。誰かが僕をよんでいる。
そろそろ行かなきゃ。

ふと目を横に配らせると、遠くに。ぎりぎり見える。ほどほど遠くに。
白い装束を来た誰かが見える。

コチラをみていない。
小さい背広と足の裏が、こちらを向いている。
髪の毛は、まるで今寝起きたかのように、ぼさぼさ。

気になる。

「~~~~、~~~」

呼びかけてみる。

……彼は振り向く。
「久しぶりだね。おかえり」


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