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2025年EUバリアフリー化:日本からウェブサービスやスマホアプリを提供するための対策ガイド

こんにちは、ドイツのIT企業でフロントエンド開発及びWebアクセシビリティ対応を行っているN4BEです。今回は2025年の夏頃に施行される欧州アクセシビリティ法について解説します!

ヨーロッパ(EU)では2025年に、法的拘束力の強い欧州アクセシビリティ法 (European Accessibility Act, EAA)が施行されます。EAAはバリアフリーを強化することを目的とし、障害者や高齢者などの利用者にもウェブサイトやスマホアプリのアクセスを容易にすることが義務付けられます。このEAAは、EU内の企業だけでなく、EUにサービスを提供する全ての企業にも影響があります。

そのため、ソフトウェアやデジタルサービスに対するアクセシビリティの改善が不可欠です。EAAの適切な対応は今から着手することが重要です。この記事では、法律の説明や改善案などを解説します。


そもそもEuropean Accessibility Act (EAA)とは

European Accessibility Act(EAA)は、2025年に欧州連合(EU)で導入される法令であり、障害者や高齢者などの特定の利用者にもウェブサイトやスマホアプリのアクセスを容易にするためのアクセシビリティの強化を目的としています。日本からウェブサービスやスマホアプリをEU市場に提供する企業にとっても重要な法令となります。従わない場合、罰金またはその他の法的措置の対象となる可能性があります。EU加盟国は2025年7月までに同法を施行を目指しています。しかし、まだ法的基準は発表されていません。

EAAは特定の製品とサービスを対象としており、コンピューターとOS、ATMや発券機、スマートフォン、デジタルテレビサービスに関連するテレビ機器、電話サービスや関連機器、テレビ放送や視聴覚メディアサービスへのアクセス、航空やバス、鉄道、水上旅客輸送に関連するサービス、銀行サービス、電子書籍、電子商取引などが対象とされています。

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?catId=1202&langId=en

EAAの対象

IT関連でいうと以下を含むソフトウェアやデジタルサービス、ハードウェアが指令の対象になります。

ソフトウェア

  • OS(オペレーティングシステム)

  • 電子書籍

  • スマホアプリ

デジタルサービス

  • 銀行サービス

  • オンラインショッピングのウェブサイトとスマホアプリ

  • オーディオ・ビジュアル・メディアサービス(AVMS)

  • ウェブサイト

  • スマホアプリ

  • オンラインチケットサービス

ハードウェア

  • コンピューター

  • スマートフォン

  • タブレット

  • 電子書籍リーダー

今からバリアフリー化に対応する重要性

先述した通り、EAA自体は技術的なアクセシビリティ基準を提供していませんが、加盟国はほとんどがWCAGの特定の要件に従うことを想定されています。

WCAGはWebコンテンツアクセシビリティガイドラインのことを指します。ソフトウェアやデジタルサービスのバリアフリー化で世界的な影響力を持つガイドラインです。

EAAの技術的なアクセシビリティ基準を先取りし、WCAGの基準に従うことで、ユーザーの多様なニーズに対応したウェブサービスやアプリを継続して提供することが可能となります。

以下では具体的な施策について、スマホアプリとウェブサイトでそれぞれ説明します。

ウェブサイトでのバリアフリー化

WCAGの中でも特に重要なウェブサイトでのアクセシビリティ向上の施策3つです。

  1. 文字と背景のコントラストを高める:ウェブサイト上のテキストやグラフィックは、適切なコントラストを持つことが重要です。コントラストが不十分だと、視覚障害者や高齢者など、一部の利用者がコンテンツを読み取りにくくなります。ウェブサイト上の全てのテキストや画像に適切なコントラストを適用することで、視認性を向上させます。コントラストのチェックはこのようなサイトで気軽に行えます: Contrast Checker

  2. シンプルなナビゲーション:明確で一貫性のあるナビゲーションを提供し、ユーザーが簡単に目的のコンテンツにアクセスできるようにします。特にスクリーンリーダーやキーボード操作を利用するユーザーにとっては、効果的なナビゲーションが必要です。視覚的な制約があるユーザーや操作が困難なユーザーにもアクセスしやすいウェブサイトを作成するための指針が示されています。具体的には、スクリーンリーダーが理解しやす見出しタグ(h1~h6)の使用などがあります。

  3. 読み上げ機能や拡大機能の導入:ウェブサイト内のテキストを読み上げたり、文字のサイズを拡大したりする機能を備えることで、視覚や読解に障害のある利用者に配慮します。

スマホアプリでのバリアフリー化

WCAGの中でも特に重要なスマホアプリでのアクセシビリティ向上の施策3つです。

  1. 視覚効果の調整:点滅やフラッシュなどの強い視覚効果を緩和することで、光過敏性のある利用者への配慮を行います。具体的には、点滅やフラッシュの頻度を減らすことを意味します。

  2. タブレットやスマートフォンでのジェスチャーや音声入力のサポート:スマホアプリは指の操作や音声による操作が主要な方法となります。ジェスチャーや音声入力をサポートすることで、視覚的な制約を持つユーザーでもアプリを利用しやすくなります。例えば、タッチジェスチャーだけでなく、ダブルタップやスワイプといった操作方法を提供することで、ユーザーの操作性を向上させます。

  3. テキストの読み上げ機能の導入:アプリ内のテキストを音声で読み上げる機能を提供し、視覚障害者にとって情報のアクセスを容易にします。スクリーンリーダーをサポートし、テキスト情報だけでなく、ボタンやメニューのラベル、アプリ内の重要なコンテンツを適切に読み上げることで、視覚に頼らないユーザーでもアプリを利用できるようにします。


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