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失注案件の資産化。未来の成果へ繋がる取り組み

「失注」

営業に関わる人なら、できれば言いたくない / 聞きたくない言葉だと思います。
今回は、そんなネガティブな印象の強い失注を未来のポジティブに変えるための取り組みを紹介します。

はじめに

ダイニーの大西です。
先月からダイニー社員食堂というコンテンツが始まり、そのトップバッターとしてインタビューしていただきました。
パーソナリティが分かる内容になっていますので、気になる方はご覧いただけると嬉しいです。
ダイニーにおける役割としては、インサイドセールス(以下、IS)の立ち上げ・仕組みづくりとフィールドセールス(以下、FS)のマネージャーをしています。

7/15からは、パートナーセールスをスケールさせていくための仕組み化ミッションも持つことになりました。

ダイニーについて

事業概要

取り組みを紹介する前に読み手の方がイメージしやすいよう、事業概要を簡単に紹介します。
私たちは飲食業界に特化したコンパウンドスタートアップです。
ダイニーのことを認知されている方からすると、「モバイルオーダーの会社」と思われることが多いかも知れませんが、それはあくまでも提供しているサービスの1つであり、他にも飲食店運営に必要不可欠な「POSレジ」「決済端末」、飲食店運営をより良くするための「売上管理」「顧客管理」「アンケート」など複数のプロダクトを提供しています。

商材特性

大きく2つあります。
1つ目は、POSレジというハードウェアかつ飲食店における基幹システムの導入ありきのサービスであること。言い換えれば、すでに営業している飲食店は基幹システムのリプレイスが必要となり、耐久年数や契約期間などの縛りや他システムとの兼ね合いで検討可能なタイミングや条件が限られます。

2つ目は、タイミングよくPOSレジ切り替え時期に商談が作れても、飲食店を業態 / 席数 / 客単価などの条件で見るとモバイルオーダーの相性が明確に分かれるということ。
一般的には、以下に該当する飲食店が相性が良いと言われます。

  • 繰り返し注文が発生する業態

  • スタッフのオーダーテイク業務負荷が高くなる席数

  • モバイルオーダーがお店の雰囲気を壊さない客単価(≒コンセプト)

そして、ダイニーを導入する最大の売りが「モバイルオーダーで取得した顧客データ × POSレジで取得した売上データの活用」であり、そのためにはモバイルオーダーの導入が必須になります。

ダイニーは、タイミングや相性のハードルが高い商材

営業組織

2024年4月に専任ISポジションをつくり、本格的なIS活動を開始しました。それまでは兼任ISは存在したものの、インバウンド対応が主であり、リソースの観点からインバウンド対応以外に本腰を入れて取り組むことができませんでした。
そのため、FSが過去失注案件の再アプローチを試みるも、目先の予算達成が最優先で失注のお客さまと継続的に接点を持ち続けることが難しい状態にありました。
そこで専任ISポジションができた瞬間に、インバウンド対応と同じかそれ以上の重要度で失注案件の再商談化ミッションを持つことにしました。

取り組んだこと

失注案件を資産化するために行ったことは以下です。

  1. これまでの失注理由の分解と整理

  2. 失注タイプ毎の再アプローチタイミングの設定

  3. 失注=悪ではないというマインドセットを醸成

それぞれ詳しく説明していきます。

1. これまでの失注理由の分解と整理

幸いなことに、ダイニーでは以前から失注理由をSFAに残すという文化が定着していました。その内容は以下の通りです。

- 失注タイプ(金額ネック / POS入れ替えネック / 他社決定 / 機能不足 / ニーズミスマッチから選択)
- 失注理由回収(実際に直接失注理由は回収できたか)
- 誰から失注を言い渡されたか?
- 失注理由ファクト(言われた事実のみ箇条書きで。Nの場合は記載不要)
- 失注理由解釈(上記交え営業担当が商談過程などで得た所感)
- たられば(どう商談を設計/進行できていれば受注できたか?)
- 商談復活方法(何がどうなれば再アプローチできるか)

一方で、「ただ記録されているだけでISが再アプローチする上で有効に使えていない」という問題があり、資産と言うには程遠い状態でした。

まず初めに取り組んだアクションが、過去の失注案件数百件を正しい失注理由に分解することです。地味で骨の折れる作業でしたが、このアクションなしには有効なデータ(=資産化)にはならないため、かなり時間をかけて整理を行いました。

SFA上に数百件存在していた失注案件を1つずつ確認 ※MO=モバイルオーダーの略称

その中で、発見した問題点が大きく3つありました。
1つ目が、とりあえず失注理由をニーズミスマッチにするという問題。
中身を見ると、商材特性の部分でまとめた「POSリプレイスができないタイミング起因の案件」や「そのお店の業態や席数、客単価などからモバイルオーダーがミスマッチの案件」などが混在しており、失注案件の約4割がニーズミスマッチに該当する状態でした。

2つ目が、POS入れ替えネックの理由が不明瞭という問題。
一言に「入れ替えNG」といっても、「直近で入れ替えたばかりだからNG」なのか、「既存POSの契約期間などの縛りがあるからNG」なのか、「他システムとの連携が必須であるからNG」なのかなど、その理由によっては再アプローチのタイミングと条件が変わるところ、案件を対応したFSしか把握しておらず、機会損失が発生していた状態でした。

3つ目は、他社決定の敗因が把握できないという問題。
どこに決めたのか?を知ることはいうまでもなく重要ですが、資産として活用していくためには、その理由の「XXができない(から他社にした)」「価格が高い(から他社にした)」といった情報が必要でした。しかし、それらが他社決定という失注タイプに隠れてしまい、再アプローチの際に他社にしたという表面的なことはわかっても、その背景を踏まえた本質的な再アプローチができない状態でした。

1件ずつ見ていく中で見えてきた問題点と改善に向けた整理

これらの問題を解決していく上で考えたのは、ISが再アプローチしやすい状態から逆算することが重要と捉え、その視点で新しい失注タイプを設定していきました。

失注案件の真の理由を把握し新しい失注タイプを設定(一部) ※MO=モバイルオーダー

2. 失注タイプ毎の再アプローチタイミングの設定

次に進めたことは、ISが「どの案件に」「どの頻度で」接触しにいくかの部分です。verticalであることも多少関係ありますが、お客様の数は有限です。そのためには、場当たり的な「あれからどうですか?」といった買い手・売り手共に何の生産性もないアプローチではなく、失注時の状態を踏まえた「適切なタイミング」と「適切なアプローチ」をしていくことが何よりも重要と捉えていました。

その考えのもと、まずは整理した失注タイプを大きく2つに分けて優先順位を定めました。

  1. 営業活動の工夫で再チャレンジができるもの

  2. 事例創出やプロダクト改善ありきで再チャレンジができるもの

MOミスマッチや機能不足など、事例創出やプロダクト改善ありきの再チャレンジに関しては、仮に商談がつくれたとしても同じ理由で失注になってしまうことが多いため、ISの再アプローチ対象の優先度は下げました。

そのため、注力すべき案件として営業活動の工夫次第で再チャレンジができるものから、失注タイプ毎で以下のように定めました。

  1. 「不通」や「失注理由が回収できていない」案件は、失注〜1ヶ月後にISが失注理由の回収を行い、正しい失注タイプを把握する

  2. 「コスト」や「タイミング(時期不明)」案件は、自社の施策やお客様の状況次第で再検討可能となるため、1ヶ月に1回は接触する

  3. 「タイミング(時期明確)」案件は、再検討可能な時期がオープン日などから把握できるため、案件毎に逆算して接触する

  4. 「POS入れ替え」案件は、短期的に状況が変わることがほとんどないため、3ヶ月に1回接触する

短期は3ヶ月以内、中期は1年以内、長期は1年以上のイメージ

適切なアプローチの部分については、まだまだコンテンツとデリバリー方法が足りていない部分もあり、試行錯誤の真っ最中です。そのため、この詳細についてはISメンバーからいつの日かメソッドが展開されることを期待して、今回は割愛しておきます。

3.失注=悪ではないというマインドセットを醸成

最後は、失注にしやすい環境をつくることです。
どれだけ仕組みや体制を作ったところで、案件を担当するFSが「失注にすると怒られる / 詰められるから一旦持ったままにしておこう」と思っていたら機能しません。
実際、ダイニーでも案件として保有しているものの毎月月末・月初になるとクロージング予定日がズレ続ける「常連さん」が存在していました。実際にその案件のアクション状況を聞くと、最後にアクションしたのが3ヶ月前といった案件も少なくありませんでした。

ただし、これだけは強く意識すべきこととして「この案件はタイミングが合わないから」「この案件はモバイルオーダーが合わないから」など、100%の提案をやり切る前から諦めモードになってしまうことだけは絶対に避けなければなりません。あくまでもやり切った上での失注という意味です。

その上で、特に機能した2つのアクションを紹介します。
1つ目が、ISとFSの信頼関係を構築することです。
失注にしてもISが後追いをしてくれるから半年後また案件として復活してくれるという安心感があればFSも「今は提案しても難しいから失注に回そう」と判断できるようになります。
そのために、ISとFS合同で行う週次MTGや日々のSlackや口頭コミュニケーションの中で、架電件数や獲得商談数といった定量情報だけでなく、失注案件のアプローチ方法の共有や個別案件のアプローチ方法の相談など定性情報の共有・相談を積極的に行っています。

普段からISとFSが連携し、同じ成果に向き合えている状態

2つ目が、週次の案件確認で失注にするべきものを明確にすることです。
上述したように、営業担当であれば「失注にしたくない」という気持ちが発生します。そこで、客観的な視点で失注にする定義を「自身でボールが持てていない案件」かつ「受注から逆算した際にネクストアクションで何をするべきか見えていない案件」は失注に回すように伝えて失注にする心理的ハードルを下げる工夫をしました。

これらの取り組みによって、失注案件の資産化の道のり進めています。

おわり

取り組みの成果

まだ道半ばではあるものの、今回の取り組みの途中結果を紹介します。
以前にXで投稿しましたが、前提としてダイニーのFSチームは受注率が30%を超えています。

その中で、本取り組みを進めた4月以降の受注率データを見てみると、まだまだ課題はありますが、一般的に高いとされているインバウンドリードよりも高い受注率を出せています。

インバウンドと過去掘り起こしリードの受注率比較
2024年4月
- インバウンド:11.1%
- 過去掘り起こし:33.3%
2024年5月
- インバウンド:28.1%
- 過去掘り起こし:60.0%
2024年6月
- インバウンド:44.0%
- 過去掘り起こし:75.0%

ただし、インバウンドリードに比べて過去掘り起こしリードの数が少ないことや全体傾向として受注率の向上が見られるため、一概に本取り組みの成果と言い切れない部分もありますが、1つ1つの案件の質やISとFSのやり取りを見る限り、まずまず順調といって良いと捉えています。

ISがトスアップをした案件に対するFSからのフィードバック。適切にアプローチできている証

まとめ

  • 失注理由は失注した結果ではなく、失注に至った理由を把握するべし

  • 理由に合わせて適切なタイミングでアプローチをするべし

  • FSが安心して失注にできる環境を作るべし

締め

今回の内容には含めていませんでしたが、本取り組みを進める上で今年の4月に専任ISポジションを設置するなど、biz組織の試行錯誤も常に行なっています。
この辺りのvertical × 事業フェーズならではの組織に関する取り組みについても今後書いてみようと思います。

同じようなvertical企業、SaaS企業、営業組織を管掌している方々に少しでも参考になったなら幸いです。Xでも日頃の取り組みなどを呟いていきますのでよかったらフォローしてもらえると嬉しいです!

そして、何よりも伝えたいことは、ダイニーの事業成長をより加速させていく仲間を大募集しています!ほんのちょっとだけダイニーの魅力を書いておきます。

  • 飲食業界で自分たちにしか提供できない価値がある

  • ダイニーを起点にした新しい飲食店運営モデルがつくれる

  • 飲食業界を日本の代表する産業に発展していける

  • 飲食店で過ごす時間やそこで働いている人がもっと飲食を好きになれる

こんなチャレンジを一緒にしていきませんか?
ダイニーや大西に興味を持ってくださった方。ぜひ気軽にお話ししましょう。Pittaでお待ちしています!

以上になります。改めてお読みいただき、ありがとうございました!

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