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人に針を刺すことの話

点滴や注射の時に針を刺すのだけど、相性があるっていうときがある。

自分の技術と患者さんの血管の相性ね。

どんなに立派に血管が見えて触れる患者さんの腕でもなかなかうまく刺せなくて、後輩に代わってもらったらすんなり入るとか、逆のパターンとか。

もちろん、患者からすると一発で刺してもらえるのが一番の理想。例えば採血の時は大抵、肘の内側の真ん中にある正中皮静脈が第一選択。さ、みなさん、自分の両肘の内側を見てください。

これ私の腕。撮れたてほやほや(椅子を使ってスマホでセルフタイマー。ちょっと間抜けな姿勢)。

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皆さんの血管と比べて、私の肘の内側って、正中皮静脈がない。(写真だとわかりにくいけれど)

なので、採血の時には採血者さんにご苦労をかけています。

もちろん、私と同じく正中皮静脈がない方もいると思います。

こういうふうに血管の走行も人それぞれだし、血管壁の硬さ、脆さ、蛇行の有無なども人それぞれ。

よくあるのが高齢の方は血管壁が固くなっているから針先から逃げて刺すのが難しいとか、脆い人だとすぐに破れて漏れちゃうとか。浮腫んでパンパンの人はそもそも血管が見えなかったり触れなかったりするし。脱水の人は血管がペタンコ状態なので採血が難しい。

そして若い人もなかなか。血管に弾力がありすぎるとハリが強すぎて針先からツルっと逃げちゃう。

さらに、採血のような一時的なものならまだしも、点滴みたいに時間をかけて針を留置しておくには、肘だと動かす時に困るだとか、留置針と言って採血よりも少し長めの針を入れるので血管の走行がまっすぐなところがいいとか、様々に条件が出てくる。
(メモ:いつか針の違いについても書きたいな)

こういうとアレだけど、私は針を刺すのが上手な部類だと思っている。

新人から今まで10数年間の確率を計算すると打率10割とはいかないけれど、難しそうな血管に入れられることが多いし、他の看護師から頼まれることも多い。内視鏡室にいたとき、午前中はほとんど鎮静下(眠くなる静脈注射を使って検査する)患者の点滴の針ばかり刺していた。

教員生活1年間。模擬腕(看護学生はこれで採血の練習をする。私が学生の時は学生同士やった記憶があるけれど)を使って学生指導をしたけれど、生身の人間に刺すには1年以上のブランクがあった。

が、割といい血管を選択できて一度で刺すことができた。

しかし今日は悉く失敗。。。太い血管があるのに、見えているのに、触れるのに

ここだ!と思っても血管の中に針が入らない。5回も刺してようやく血管に入れることができた

これが病院だったら。3回刺してダメなら別の看護師に代わってもらうことができる。しかし、訪問看護は基本的に一人で訪問する。変わってくれる人は誰もいない。何とも不安な仕事である。しかしこれに慣れていくしかないのだなぁ。。。

上述の通り、私はこと採血においては刺しにくい血管の持ち主である(留置針はまだマシ)。採血も血管が細すぎて、子供の時なんて普通の健康診断で3回は刺さないと必要量の血液が採取できなかった。痛いのを自分だけ3回もやる。必然的に刺されることが恐怖になった。今でも、自分が採血されるときは直視できず横を向いている。前々職では慣れているのもあって、刺す血管を指定したりした(これ、知らないところでやったら普通に嫌がられるタイプ)。人に刺すのは平気なのにね。

長くなってしまったけれど、つまるところ何が言いたいのかというと、穿刺(採血・点滴の針を刺す)する人は皆、一発で刺そうという心意気でやっているということ。

一発で刺せないと、相手に苦痛を与えてしまうということは皆さん想像が容易につくだろうし、経験した方もいるだろう。相手に苦痛を与えるなんて多くの医療者は望んでいないだろう。うまく刺せなかったとき、本当に申し訳ない気持ちになる。このことは何と表現したらよいのかわからない。

そして、一発で刺せないとロスタイムが発生する。駆血帯(腕を縛るゴム)を外して消毒綿を当てながら針を抜いて、次はどの血管を刺すかまた探して。。。かなり時間をロスする。業務が立て込んでいることが常なので穿刺だけで時間を使い果たすわけにはいかないのだ。

さらに、穿刺の失敗は穿刺者の自信を失わせることにつながる。これほど成功・失敗がわかりやすい看護技術はないだろう。実際、今日の4回の失敗は、私って下手なんだと思わせるのに十分だった。
次回の穿刺の際も今日の失敗が頭の中をちらつくだろう。

また失敗するかもしれない。

でも、今日は大丈夫かもしれない。

人に針を刺すということ。人に傷をつけるということ。

それが許可された資格。そのことを胸に明日も強く頑張ろう。それがその人にとって大切な治療だからね。


あと遅れましたが、看護師あるあるの私も血管フェチの人間であることを申し添えておきます。

ではまた。



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