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選挙の応援で見えるもの

こんにちは。木暮です。
お久しぶりです。

先日、東京では東京都議会議員選挙が行われました。
私も某選挙区にて選挙に携わらせていただきました。

私はこれまで、学生の頃から統一地方選挙、都議会議員選挙、衆議院選挙、参議院選挙と、いくつかの選挙に携わり応援をしてきました。
(市長選や県知事選挙等、首長選挙は経験ないな…)
それぞれ自治体も異なれば、候補者の性別や世代、選挙チームが抱える問題等も様々でした。
また、私は2017年頃からこの業界で働いており、そこから一つの政党だけを応援していますが、学生時代に携わった選挙は政党もバラバラでした。政党が違うと選挙のやり方もまた色々です。(学生時代は政治に関心がなく、友人に誘われて応援に行っていましたが政党にこだわりはなく適当でした。)

現行法下の選挙になってから、どの選挙も方法はあまり変わっていないと思います。選挙はノウハウ化され、一つのパッケージになっています。
強い政党やベテランのいる選挙は、法律内で最良化された選挙戦略を練って当選を重ねています。(伝統的な選挙ですが、特に国政は派手な選挙をしていて、これはこれで面白いし勉強になります)
一方で、若い新人候補の選挙は事務所を手伝うのも若者が多く、政治経験の多い人がチームに少ないので手作り感満載の選挙になります。(ベンチャー選挙という感じで、刺激もあり楽しいです。)

選挙の応援をすると色々なものが見えてきます。
政治家を将来の職業として目指している私にとって、選挙に携わることは、もちろん候補者の当選を最大の目的としていますが、全身全霊をかけた学びの場でもあります。
また、後述しますが、「政治興味ないからな…」という方でも、ちょっと選挙を手伝うだけで、世の中の解像度が上がるような感覚を覚えるはずなのです。

都議選が終わり、今年の秋には衆議院選挙があるということで、今回は「選挙は大変だし面白い」とみたいな話をゆるりとしていきたいと思います。(続編も書けたらいいなー)

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↑2017年の衆院選最終日。連日の雨ゆえ寒すぎて、9月なのにダウンを中に着ています。睡眠不足も祟り、げっそりしています笑
最終日につき、配れるチラシもほぼなく、確認団体冊子を一日中駅で配っていました。(ニッチな内容)

政治家を目指す人は是非、選挙の応援へ

政治家を目指す人が、前もって経験したほうが良いこととして、
「選挙の応援をする」
が挙げられることがあります。

自分が立候補する前に、まずは他の誰かの「選挙の応援をする」のです。
都議選期間前に、参議院議員の音喜多駿さんが選挙チームにコミットする経験についてブログを書かれていました。

応援は、数時間や一日ではなく、選挙期間中がっつり入ることをおすすめします。
例外もありますが、例えば市議会議員選挙なら7日間。
県議会・都議会議員選挙なら9日間。衆議院議員選挙なら12日間。県知事選挙や参議院選挙は17日間もあります。ひい。
選挙期間前から数ヶ月に渡って応援に入るのが最も好ましいのですが、それは多くの社会人にとっては困難なことでしょう。
音喜多さんが仰るように、政治家という職業を将来視野に入れる学生さんにとっては、大変貴重な経験になると思います。

選挙の応援ってなにをするの?

政治にあまり興味がない人にはあまりピンとこないかもしれませんが、選挙期間中はやることがたくさんあります。細かいので挙げるとキリがないのですが、
・駅や街でチラシを配りまくる・掲示板にポスターを貼りまくる・選挙カーに乗ってウグイス嬢として喋りまくる・電話をかけまくる・チラシにシールを貼りまくる・公選ハガキを仕分けまくる・チラシを折りまくる・来訪者の接遇をする・集会会場の設営をする・SNSを使って色々やる・・・

おそらく読んでもらってもよくわからないものも混ざっているかと思いますが、選挙の応援とは、基本的にフィジカルゲームで大変疲れます。やることが多い上に体力がものを言うのです。しかも朝早くて夜遅い。人に会いまくり気も使いますので相応のストレスもつきまといます。人手はいくらあっても足りません。

それに、これらをただこなして済めばそれでいいのですが、選挙期間中というのはトラブルがつきものです。
夕方に駅でチラシを配っていたら酔っ払いに絡まれてしまう、政治信条の異なる方に目の前でチラシを破かれる、マイクを持って喋っていたら通行人に中指を立てられる、電話をとったら突然「しね」と言われる、せっかく貼ったポスターを傷つけられる、事務所前に立っているだけで暴言を吐かれる・・・(実際に私がやられた数々です)
そうです、大変なのはフィジカルだけでなく、メンタルもです()
別に私自身の人格を否定されているわけではないのですが、こういうことに遭遇すると気分は悪いですし、メンタルは擦り減ります。

選挙期間中、候補者にとって最も大切なのは「露出」だと思います。
もちろん、候補者を選ぶ基準として、その人がいかに普段の活動を一生懸命やり、「これまでどんな仕事をしてきたか」という実績が重要なのは言うまでもありません。
しかし、選挙が始まってしまえば、あとはもう一も二にも露出度を上げて、有権者に認識してもらうことが大切です。

そんな候補者は、公職選挙法という決められたルールの中で、できる限りのことをして選挙区内での露出度を高めていきます。
ルールに定められ、認められている活動が、先に述べた「選挙期間中にやること」に大体集約されています。

そして気が付く過酷な世界

そんなこんなで、選挙期間中は朝から晩までメンタルの擦り減りやフィジカルの消耗を跳ね除け、人前に出て頑張るわけなのですが、
これを一度本気でやってみるとですね…

普通に、きついなって思うんです。
政治家になるの、大変だなって。

本気の本気でやると、正直イヤになるのですよ。
私、こんな思いをしてまで、将来本当に政治家やりたいんだっけ?って立ち止まりそうにくらいには。

候補者自身も、初めての選挙の前は
「選挙やるのが嫌になるくらい活動しろ」
なんて言われることがあるようなのですが、心身を消耗しながら人生をかける候補者自身が最も大変ですし、なんなら選挙どころか、選挙前の数ヶ月〜数年前からの活動が一番苦しいのです。
あと、選挙の種類にもよりますが、候補者本人はそこへ膨大な資金を費やすことになります。

「もはや、そこまで大変だと知らないうちに飛び込んでしまったほうがいいのでは?」
というご意見を頂きそうですし、私もこの業界に入ってから何回かそう思ったことがあるのですが、いつか必ずぶち当たる壁には早めにぶち当たっておいた方がよいと思っています。
そもそも、メンタルが擦り減るようなことが当たり前になっていてはいけないですし、候補者や政治家、その支援者になら罵声を浴びせたり嫌がらせをしたりして良いわけがないのです。
そういうことが簡単になくなれば良いですが、今のところ、政治の世界に関わるとこの現実を避けられません。

やってみないと何もわからない、不可思議な世界なのです。

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↑2019年の統一地方選挙。初めて女性新人候補を応援。選挙は春でしたが、活動は真冬のコートが手放せない寒い時期から。候補者と朝から駅で凍えながら挨拶していました。選挙中、女性スタッフは全員ピンクに白いボトムスで揃え、アイコンに。事務所が華やかでした🌸

誰かの選挙を応援すれば

将来政治家を目指す方は、選挙チームに張り付くことで、選挙期間中のことを一通り知ることができます。それこそ、細かい仕事から特有のトラブルまで。そうすることで、自分が候補者になった時のシミュレーションをひっそり、でもリアルにやることができます。

候補者になったらこれくらいお金が必要なんだ…人手は思った以上に必要だな…対抗馬のあの人のSNS戦略はクオリティ高いから真似したいな…自分だったらポスターやチラシはどんなデザインにするだろうか…自分の家族は応援してくれるだろうか…こういうトラブルが起きたらこうやって対処すればいいのか覚えておこう…等々

さらに、もしも自分が将来本当に候補者になった時、応援した側の気持ちを知っていることで、忙しい中でも応援してくれる人たちへの感謝の気持ちが倍増するに違いないですし、然るべき対応やお願いができるはずです。
候補者になってしまえば、もう忙しすぎて自分のために自分の知らないところでめっちゃめちゃ大変な仕事をやらされている人のことまで気が回らなくなってしまうんですね。
でも自分の経験したことであれば想像はできます。
応援しに来てくれる人たちは「この人のために」と思って候補者へ時間と己の心身を捧げてくれています。想像できれば、頭が地中に埋まるくらい感謝を伝えたくなるに違いありません。

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↑今年2021年の都議選。政党確認車に乗って地域をぐるぐる。都議選はいつも夏なので日焼けしまくりです。今年はマスクをしているので、悲劇的な日焼けをすることに…当たり前ですが、マスクをしていると顔の視認性がかなり下がるようで、よく候補者と間違われました。

選挙応援すると見えるもの

これまで、選挙の応援は政治家志望にとって良いみたいなことを綴ってきましたが、実は「政治に興味がない」という方にも良い影響があると思っています。

例えば学生さんで、将来政治家になりたいと思っているわけではないけれど、政治家の事務所へ短期インターンとしてくる方がたくさんいます。動機は様々だと思いますが、学生さんにとって政治は、接点を持とうと能動的にならないと一生遠い存在だと思うのです。
政治家に直接会う機会もなければ、政治家が普段どんなことをしているのか想像もできないでしょう。
この状態で政治家事務所へ飛び込んでも全然問題ないのです。
むしろ、少しでもこういった機会を得ることで、自分の住んでいる自治体の選挙に興味を持ったり、街角に貼ってあるポスターが目についたり、ポスティングしやすそうなマンションを見つけてテンションが上がったりし(ニッチ)、少しずつ自分の生活と政治が近くなっていくのです。
学生さんは授業や試験で忙しい時期もあると思いますが、企業インターンとは雰囲気の違う貴重な社会勉強になるはずです。

私自身、学生時代は一度も選挙に行ったことがないくらい政治に興味がなかったのですが、友人に誘われてたまたま行った選挙の応援がきっかけでこの業界にたどりつきました。
わけもわからず応援に行ったらすぐに選挙カーに乗せられ、都内を一日中回ってマイクで喋り続けました。
もともと「ウグイス嬢やってもらうから」と言われていたのですが、誰に教わるわけでもなく、YouTubeで延々と「ウグイス 喋り方」で検索して独学に走っていました。現地では「うまい!」「上手!」とおだてられ、いつのまにか候補者のことを駅前で語るようになっており、気づけばいつしかひたすらうるさいと思っていた選挙運動をこなしていたのでした。

わけもわからず行った選挙の応援で政治家の選挙が大変だということを知って、その後政治家という職業を徐々に学んで、政治そのものに興味を示して投票へ行くようになりました。(私の場合、勢いあまってそのまま仕事にしてしまいました)
一度選挙の応援に行くと、投票行動へ導かれるのですよね。他人事でうるさかった選挙が、なぜか自分事になるのです。

おわりに

長々と選挙の応援について書いてきました。
このご時世、今の選挙方法は賛否を呼ぶようになってきました。
例えば、コロナ禍でリモートワークをしている人が増える中、町中を選挙カーが爆音を伴って走っていたら仕事に悪影響を及ぼしますよね。寝ている赤ちゃんも起きてしまうでしょう。コロナ禍で激務を強いられている医療従事者の夜勤明けの睡眠も妨害しているに違いありません。
市民国民のために立候補した人たちなのに、有権者に受け入れられない選挙をしていては本末転倒です。
数十年変わっていない選挙方法ですが、政治家−有権者の双方向の協力で変わっていくと良いなと思っています。

なかなか巡り会わない機会かとは思いますが、多くの方々、特にこれから様々な業界で活躍する若い方々に、選挙や政治に興味を持っていただきたいなと願っています。

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