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【ショートショート】タイムマシーン占い


「うーん、、、見えます、、、。子供は3人、上から男、女、男です。
 それとペットの犬に囲まれて幸せそうに笑うあなたが見えます。
 奥さんは・・・、そう、あなたが見せてくれた写真のこの方です。」

そこまで言って私は水晶玉から目を離し、相談者の目を見つめてこう言った。

「未来を覗いてみましたが、現在の彼女と結婚して、幸せになったあなたが見えました。
 この彼女と結婚して問題ないと思いますよ。」


『本当ですか!ありがとうございます!これで結婚に踏み切れます!!』

そう言うと相談者は興奮しながら外に出て行った。

きっとこのあと彼女に会ってプロポーズをするのだろう。
そんな事くらいは未来を見なくても分かる。

[占いをお待ちの整理番号42番の方、こちらへどうぞー]

前の相談者が出ていくとすぐ、アシスタントの声が部屋の外から響いた。
少しくらい休ませてくれれば良いのに。


そう、私は当たると評判の占い師。今日も外には大行列だ。

なんせ、この水晶玉型タイムマシンで本当の未来を見てきて
それを伝えてるだけなのだから当たって当然。

未来が見えると謳ってはいるが、まさか本当に未来を見ているとはお客も思うまい。

神妙な面持ちで次の相談者が入ってきた。
中肉中背の、特にこれと言って特徴もない男だ。

私はいつも通り尋ねる。

「さて、今日は何を占ってほしいんですか?」

『この先・・・、例えば来週とか、再来週とか、あるいは1か月後とかに
 私が有名になっているかを占ってもらえますか?』


若手芸人か、駆け出しの俳優だろうか?
それにしてはくたびれているし、ちょっと年もいっているような。

確かに言われてみればどこかで見たことがあるような気もするが思い出せない。

なんにせよ、1週間で有名になるとは気の早い話だ。


「では、見てみます。少々お待ちください。
 あ、流石に顔だけで判断するのは難しいので、名前を教えてください。」

一瞬、男はためらったように見えたが、名前を告げた。
芸名を言うか本名を言うかで悩んだのだろうか。


「わかりました。ではそれで調べてみます。」


私は水晶玉に目を向けて意識を集中させ、1週間後の未来へタイムスリップした。

そこでテレビや雑誌にざっと目を通し、彼の顔や名前があるかをチェックしてみたが、
もちろん彼の情報など見つからない。

念のためネットなどでも彼の名前を検索してみたが、特に見つからなかった。


当たり前だよな、1週間やそこらでそんなに名前が売れる訳ないじゃないか。
本当はもうちょっと先の未来まで見てあげたいところだけど、
あんまり長い時間かけて調べてると時間ももったいないし、
ここらで適当に切り上げるか。


どうせ占いなんてハズれても文句を言われる事もないんだし。。。


そんな独り言を言いながら、水晶玉に目を向けた直後の"現在"に戻った。

そして男に告げる。

「未来を覗いてみましたが、今後有名になっていると言うことはないようですね」

『あー、そうですか。それは良かった!!』

突然明るい声を出した男にきょとんとしてしまった。

「良かった?
 不思議なことをおっしゃいますね。有名になりたかったんじゃないんですか?」

『いや、その逆さ。有名になりたくなかったんだ』

そう言いながら彼は黒い鉄の棒のようなものを振り上げ、鬼の形相でこう言った。

『適当なことを言って人の未来をめちゃくちゃにした、インチキ占い師殺しの犯人としてはね』

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