今日を肴に、今宵も一杯。②いぶりがっこクリームチーズ
前回はこちら。
今日は「いぶりがっこクリームチーズ」で飲む。
そう心に決めて、会社を後にしてきた。
昨日まで溜まりに溜まっていた仕事も、とりあえず一旦落ち着いた。というか、力づくで捩じ伏せた。鎮まれ山の神よ。
帰り際に会社の上司から、「おつかれさまー。これあげる」と言われ、渡されたのは、秋田名産「いぶりがっこ」。
どうやら得意先からいただいたらしい。
「こういうの好きでしょ」と片頬をあげる。さすが姉貴。ええ、とっても。
と、ありがたくいただいたものの、そのまま食べるのも芸がない。
家に半端なクリームチーズがあるから、つい最近漫画で見た「いぶりがっこクリームチーズ」にしよう。
今夜の肴が決まれば、駐車場から車に向かう数分間で、何のお酒に合わせようかなと考える。
漬物だから、日本酒はハズレなし。
チーズだから、ワインでも絶対美味しい。
試したことはないけれど、苦味の強いクラフトビールなんかも合うんじゃないかな。
色々考えながら車にたどり着く瞬間、何かが降りてきた気がした。
「燻製だからウイスキーも合うのでは?」
ウイスキー?普段はあまり飲みもしないのに?
…想像してみる。
スモーキーなウイスキー×薫香の強いいぶりがっこ。
うん。合わないわけがない。
今日の晩酌は、かくして決まった。
そうと決まれば、話は早い。
帰宅して爆速で家事を終わらせれば、待ちに待った晩酌の時間だ。
薄くスライスした いぶりがっこにクリームチーズをのせ、砕いたブラックペッパーをまわしかけ、またいぶりがっこで挟む。
たったこれだけで、夢にまで見た「いぶりがっこクリームチーズ」の出来上がり。
肴の準備ができれば、次は部屋の片隅で埃をかぶっていたウイスキーを引っ張り出し、氷を入れたロックグラスに注ぐ。
あまり飲み慣れていないので、樽香が濃厚と言われるバーボンウイスキーではなく、あえて軽めのスコッチウイスキー。
ガラスの底にウイスキーが辿り着いた瞬間、ふわっと独特の琥珀色の香りが立ち昇る。
口にすると、カッと喉に熱を感じる。でもその中に確かに香る、オーク樽の香りとモルトの甘味。針葉樹林の香りって北半球ーって感じがして、好きなんだよなぁ…。
そして、待ちに待ったいたいぶりがっこクリームチーズ。この年になって初めて口にする食べ物に、恐る恐る一口。
なるほど「スモーキー」。確かに鼻に抜ける燻製の香りと酸味に、まろやかなクリームチーズがぴったりかも。
ちびちびやっているうちに、最初は強いアルコールを感じさせたグラスの中身も、氷が溶け出し加水されて、さらに香りと甘みを開かせていく。
うわーっ!美味しいー!(語彙力)
飲み会でジョッキをぐいっと傾けるのもいいけれど、こうやって静かな夜に家でちびちびやる時間も豊かで大好きだ。
大量の仕事を片付け、幸いにも明日は休み。
連休明けからずっと忙しかったから、自然に目が覚めるまで思う存分ごろごろするんだ。
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