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009 社員の主体性を高めたいなら方針づくりをさせたらよい

ときどき社長から「うちの社員ももう少し主体的になれば…」みたいなことを聞くことがある。

でもこの言葉にはやや違和感がある。

主体的な人とは目的自体を考え出せる人のことなんだけど、だとしたら、この会社には目的を考え出せる人が少ないということになる。

つまり、ワンマン企業である。

社長が「個人的な目的」を達成のために会社を立ち上げ、言うことを聞く社員を集め、トップダウン型のマネジメントをずっと続けているうちに、それがすっかり定着しているだけの話。


そもそもワンマン企業は組織じゃない。

改めて組織について考えてみたい。

当たり前だけど、人さえ集まれば組織と言うわけじゃない。

それでは運転免許センターに集まった更新時の集団だって組織になってしまう。

では、組織の定義は何か?

バーナードの定義では、「共通目的」「コミュニケーション」「協働」の3つが揃うことである。(チェスター・バーナード「組織の3要素」)

社員たちが共通目的に向かって、それぞれ自分の役割を果たすために有機的に動くようになった時、組織と呼ばれるってこと。

冒頭に書いた「主体性」はこのことを意味している。

社員みんなが主体性を発揮するためには、まず「共通目的」が必要であり、それを作り出すにも、維持するにも、「コミュニケーション」「協働(貢献意欲)」が必要ってことだ。

どうだろう? ワンマン企業と真逆なことが分かると思う。

社長の個人的な目的で動く集団を「ワンマン企業」。

社員みんなの共通目的で動く集団を「組織」。

主体性は組織にならなければ現れないんだよね。

社員を主体的にするには経営理念づくりに参画させることが近道

確かに昭和のころなら、ワンマン企業はそれなりに有効だった。

市場は今よりずっと単純だったし、働き手のニーズも「物質的に豊かな生活」だったからね。

でも、IT革命以降、世の中はすっかり変わり、「多様性」と「心理的成功」の時代になってしまった。

社長ひとりの能力じゃ市場適応も難しいし、働き手は自己実現可能性のある会社を選ぶようになっている。

じゃあどうしたら良いのか?

結論を言えば、社長から社員に「目的立案権」を移譲すれば良い。

ただし、「今日から君たちに目的立案権を移譲するから、後はよろしく!」と言えば良いのかと言えば、そんなことはない。

移譲するためには、すでに社員たちが主体的になっている必要があるからだ。

つまり、権限移譲と主体性は、鶏と卵の関係だから、次のステップが必要になる。

  1. 少し権限を委譲する

  2. 主体性の芽が現れる

  3. もう少し難易度の高い権限を委譲する

  4. 主体性の芽が伸びる

  5. さらに難易度の高い権限を委譲する

  6. (これを続ける)

もし、まったく主体的でない者に、強引に権限委譲したらどうなるか?

まあ普通、辞めちゃうよね。

じゃあ、どういう形で少しづつ権限移譲するのが良いのか?

権限を細切れにして少しづつ移譲するイメージができないという人が多いだろうから、手っ取り早い方法を提案する。

社員プロジェクトを立上げ、経営方針を作らせればよい。

社員に主体性を喚起させるには、社員たちに経営理念を作らせればよい。

社員に経営方針を作らせ方は、まず、主体性の芽が見える者を集め、チームを組成するところから始まる。

そして1年がかりで、経営方針を作成し、方針発表会を開催する。

そこまでできrばチームメンバーは間違いなく主体的になっている。

効果はチームメンバーだけでなく、それ以外の社員たちにも波及しているはずだ。

ちなみに経営方針とは何かだけど次のとおり。

  1. 経営理念(ミッション・ビジョン・行動指針)

  2. 経営方針(ビジョン達成のための現実的な一里塚)

  3. 経営計画(具体的アクションプラン)

経営理念とは社長より上位の概念である。

たまに「経営理念なんて能書きだ、何の効力もない」という人に出くわす。

まあ、分かるけどね。

でも、ちょっと思い違いがあると思う。

実は経営理念は社長より上の概念。

憲法みたいなものと考えて良い。

したがって本来の意味の経営理念があれば、社員は、社長の言うことよりも、経営理念を優先するようになる。

そのことに社長が反発して「俺の会社なんだから、俺の言うことを聞け!」とやったら、途端に経営理念は能書きと化す。

経営理念にはそうゆうものである。

自律型組織には社内コミュニケーションが不可欠

さて、経営方針づくりが社員の主体性を引き出すとして、それだけで社員が主体的になるわけじゃない。

組織には共通目的(ミッション・ビジョン・バリュー・方針)の他にコミュニケーションと協働が必要だからだ。

もちろん、コアチームに関しては、経営方針作りを1年もかけて行ったので、密なコミュニケーションと高い貢献意欲(主体性)は発揮できるだろう。

でもそれ以外の社員はまだ主体的にはなっていない、すなわちコミュニケーションと協働の「循環構造」が出来上がっていない。

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じゃあ、コミュニケーションと協働の循環って、どうやって作ったらいいのか?

基本は簡単。

リーダーが頻繁に声掛けをしたり、積極的にミーティングを開催するなどして、共通目的を機能させれば良い。

ただし、共感できる経営方針になっていなかったり、リーダーシップが弱かったりするとなかなかうまくいかない。

組織作りは簡単じゃないんだよね。

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