ジャーナルvol.2「最新のスタートアップ支援-インキュベーションからアクセラレーションへ-」
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ジャーナルvol.2「最新のスタートアップ支援-インキュベーションからアクセラレーションへ-」

「起業トレンドジャーナル」では、全国の起業家・支援者の方々から、起業に関するテーマでお話いただきます。
vol.2では、各地の創業・新事業支援拠点の運営等に携わり、起業家への支援等をされている吉田さんから、「最新のスタートアップ支援-インキュベーションからアクセラレーションへ-」をテーマに寄稿いただきました。

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吉田 匡氏
(タシテン株式会社 代表取締役)

<プロフィール>
大手総合リース会社営業職、外資系企業マーケティング職を経て、東北大学産学官連携推進本部国際連携室長准教授、千葉大学大学院融合科学研究科特任准教授を歴任。その間、福島駅西口インキュベートルームにて創業支援にも従事。2014年からは独立行政法人中小企業基盤整備機構が開設した、創業・新事業支援拠点「BusiNest」立ち上げに参画、2017年3月まで、日本初の公的機関直営アクセラレーターである、BusiNestアクセラレーターの企画・運営に従事。現在は、若手起業家への定期的なメンタリングを行う他、地方での創業支援プログラム構築の支援も積極的に行っている。
東北大学大学院工学研究科博士課程修了(工学博士・技術経営)、オーストラリアGriffith University,Nathan,MBA

最新のスタートアップ支援
-インキュベーションからアクセラレーションへ-

1. 3日に1件開催?増加するアクセラレータープログラム

 企業名や都市の名前を冠したアクセラレータープログラムは、年々その数を増し、eiicon companyを運営するパーソルイノベーション社の調査によると、日本国内で、2018年には108件、2019年には122件のプログラムが展開されていた。筆者が2013年に国内外のインキュベーター・アクセラレーターの調査を行った時点では国内で展開されているアクセラレーターは10件にも満たない状況であり、この5年間で急速に市民権を得たと言える。
 本稿では、なぜここまでアクセラレーターが急速に広まっていったのか?について一般的に語られているリーンスタートアップの普及と言った外的な要因からではなく、運営者の目線から、アクセラレーター普及以前にスタートアップ支援の主要な施策であったインキュベーターとの比較も加えながら考えてみる。また、近年注目を集め始めている、スタートアップススタジオ・ベンチャービルディングについても触れていく。最後に、最も悩ましい「こうしたプログラムをどう使い分ければ良いのか?」についても検討していきたい。

 年間122件、言い換えれば3日に1件のアクセラレータープログラムが展開されていたことになる。これらは企業の名を冠したコーポレートアクセラレーターと呼ばれるものが多くを占めるが、これら122件の他、自治体が主催するアクセラレーションプログラムを加えるとその数は更に増えていく。なぜこれほどまでに急速に普及したのか?最大の要因は、短期で終わる、基本ハコ物が不要、この2つと考える。

2.なぜアクセラレーターがここまで普及したのか?運営者の視点から

2-1.要因1:短期に終わる
 第一に、短期に終わる、これにより高い柔軟性をもっての運営が可能となる。日本国内では一般的にプログラム実施期間が3ヶ月から6ヶ月であり、実施期間3ヶ月のプログラムを2回行ったとしても、募集からデモデイと呼ばれるプログラム最終発表会まで単年度内に確実に終了する。単年度で一区切りを付けることができることは運営側としては極めて好都合である。その時々の時流や経営戦略の変化に応じてテーマを変えることもできる。加えて、先ずは1回(1年)やってみると言ったトライアル的な取り組みも可能である。
 インキュベーターの場合、施設の準備を伴い、利用者の複数年にわたる利用を前提としているため、長期的な計画・戦略の策定が不可欠となる。単年度で閉鎖・終了とはいかない。
 これらのメリットは当然、プログラムの参加にとってのメリットでもある。様々な企業が参入し、プログラムを企画することで、参加側としては選択肢が広がる。時流に沿うテーマをもって企画されることで、参加側も時流へのキャッチアップも可能となる。

2-2.要因2:ハコ物が不要
 第二に、ハコ物が不要な点は、当然初期投資の圧縮に繋がるばかりでなく、企画から実施までの期間も短縮できる。現在の様なコロナ渦と言われる状況においては、参加者の選考からメンタリング、デモ(成果発表)に至るまでフルリモートでの実施も可能である。
 一方、インキュベーターは施設設置が前提となるため、主催団体の保有施設を利用する場合でも改修等が必要となる場合が殆どで、一定の計画・準備期間を要する。初期投資回収のため、先ずは稼働率を上げることに運営の力点が移り易く、本来入居すべきでない企業が入居してしまう場合といった、本来の設立・運営の趣旨から逸脱してしまう可能性も高くなる。

3.新たな支援プログラム「スタートアップスタジオ」

 普及を続けるアクセラレータープログラムであるが、メンタリングの提供、少額出資等によるスタートアップの支援のためのもので、事業自体はスタートアップが主体的に行うものである。言い換えると、そのスタートアップの成否はあくまでスタートアップ次第となる。 
 そこで有望なビジネスアイディアを持つ起業家・スタートアップの成功確率を上げるため、支援の枠を超え、人的・金銭的資源を積極的に投入し、主体性高く、成功確率の高いスタートアップを排出する仕組みとして、近年注目されているものが、スタートアップスタジオ(ベンチャービルディング)である。
 国内ではQuantum、Sun*等数々のスタジオが既に展開されており、Crewwや01Boosterといった国内主要アクセラレータープログラム運営企業もスタートアップスタジオに参入している。国内でのオープンイノベーションが実質的に、幹部候補生の人材育成、社内の変革機運の向上と言った実利ではなく本来付随的な目的に利用されていたものから、コロナ渦という世界的な変革期において、より実利を追求する本来の姿になってきている。スタートアップへの関与を高め、成功確率を高めるスタートアップスタジオは今後も広がりをみせていくであろう。

4.支援プログラムをどう使い分けたら良いのか?

 最後に、これまで触れてきたスタートアップの支援プログラムについて、どう使い分けたら良いか?検討してみようと思う。敢えて「使い分け」としているのは、次々と新たなものが出てくると、最新は最善と思われがちになるが、一概にそれが正しいとは言えない。それぞれに良さがあり、以前のものを全否定することが出来ないばかりでなく、時として選び方を誤るとかえって成長の妨げにもなってしまう。
 日本に普及していった順からみていくと、インキュベーターは複数年という長期に渉り支援を受けられ、場が確実に確保されるので、複数年に渉る確固たる戦略を既に策定・遂行している場合には最適である。特に研究開発系で装置を必要とするものが腰を据える場が必須となるため、研究開発系のインキュベーターは極めて有効である。 
 アクセラレーターはプログラムに参加する際の審査(一般的に書類とピッチ)、期間中のメンタリング、最終発表であるデモデイと自らの事業を他に晒し、評価を得る場面が数々用意されている。事業の成長段階でユーザー以外からの評価を得ながら、成長スピードを上げるためには有効である。上述の様に短期のプログラムであるため、インキュベーターに入居しながらその成長過程において、アクセラレーターに参加する企業も少なくない。
 最後にスタートアップスタジオにはどんなスタートアップ・起業家が向くであろうか?良いビジネスアイディアやそのアイディアの土台となる知識・技術を有するが事業化へのリソースが圧倒的に不足している場合(例、起業家単独でチーミングが出来ていない場合)、リソース獲得へのリスクを自ら負うことが出来ない場合(例、養うべき家族がある場合)には、人的・金銭的資源の投入を得られるスタートアップスタジオは有効な手段である。

5.まとめ:最新は最善なのか?

 本稿の題名「最新のスタートアップ支援」は、繰り返しとなるが、「最新は最善」を意味するものでは無い。新型コロナウイルスという、2019年前半には全く予想すら出来なかった事態に世界は遭遇し、新たな生活様式、働き方も模索されている。また新たな支援施策が登場するかもしれない。それに期待もするが、それが本当にそのスタートアップの事業、成長段階に有効なものか?冷静に判断する目は持ち続ける必要があるだろう。


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