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#創作大賞2024
蜃気楼のかいじゅう【詩】
蜃気楼のかいじゅう
周縁にて燃えており明るい夜
欠けのいびつさを見るにあれはかいじゅう
モールス信号で言わなくていいことを言って叱られるモールス信号で
甘ったるくてすぐに腐ったケーキ
空腹のかいじゅうが泣きながら蹂躙を繰り返す
からだにあいた底なしの穴
きみが線を足してこれがイクトゥスになりますように
おのれを構成するうつくしい悪意我々はかいじゅうとされている
かいじゅうの本質は孤独だがか
水晶標本.jpg【詩】
水晶標本.jpg
鉱石これはいつ何時もショーウィンドウの中
反射光がわたしのすがたかたちの真似をする
おまへ結晶、そのように背を正すことを覚え
みずかき切られてしまってからに綺麗な音色
夢想に奪われてリッチテキストとなる肢体よ
被造物に恥辱を感じて汽笛の音が聞こえるよ
出航だ
蝶々を半紙のごとくやわにちぎって散らばす
人が死んだから受け取った保険花びらの山々
躾を怠ったのでしょう、だってこの
21gの輪郭【小説】
魂を砕いて、抱きしめてもらえる弱さを削ぎ、かみさまだけを信じて行き着くところがここならば。
「夏目の暗いところが縁取る光を、おれだけはずっと覚えてるよ」
と言った。夏目も何か言ったけれど、すべてが途切れて、おれに聞けることは何もなかった。木の枝に積もる雪と、眩い曇り空を見上げていた。雪に埋もれているのに、繋いだ指先だけは暖かかった。
失われた光が、そこには確かにあって、それがおれにはやけ