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超年下男子に恋をする53(最後に心からの感謝を込めて)

 彼のことが本当に好きだった。記事を書いてみて改めて思った。

 6月、出会った頃は「なんだこの子」と思った。イケメンはイケメンだけどドンくさいしモテないのがよくわかった。バイトも失敗ばかりで、みんなに変な子と言われて、でもそれがおもしろくて私が面倒をみるとなついて、「尊敬してます、お母さんの次に!」なんて言われたんだった。

 7月にはもう私の推しで、小学生みたいな彼が息子みたいで、息子ってこんなに可愛いのかなと溺愛した。彼は自分が大事に特別にされることを喜んでいたし、「山田さんがいる日はモチベ上がる」とまで言っていた。

 8月、一番忙しい時で、彼もバイトでやられていた。二人で初めてご飯を食べに行ったのはこの頃だっけ? その直後彼がバイトを無断欠勤。もう辞めるかと思ったけれど、彼は戻ってきた。この頃になるともう好きだった。
でも「二十歳なら彼女にしたのに。どうして二十歳じゃないんですか!」という彼にとって超年上の私は恋愛対象外。

 9月、飲み会でやらかして、酔った勢いで抱きついて、フラれて、でもつないだ手を離せなくて、何もかも忘れたふりをして、その後も彼のそばにいた。この頃になると彼は仕事もできるようになってきて、わたしを助けるようになって、「僕は一人の男です」とか「山田さんは女の人だから」とよく言うようになってきた。勝手なもので、振ったくせに、男の顔を見せてくる。

 10月、バイトの時は彼を車で送り迎えすることがもう当たり前になっていて、夜中までよく一緒にいた。二人になるといつも微妙な空気が流れた。付き合ってるわけでもないのに付き合ってるぐらいに身近に感じた。でも恋をしているのは私だけで、私は彼にとってただ「何でも許してくれる甘えられる存在」なだけだった。

 11月、彼のことが本気で好きだった。年齢なんてもうどうでもよかった。ただただそばにいたかったし、いつでも会える関係になりたかった。シフト希望は彼とあらかじめ相談して出勤日を合わせていた。でもいっしょにいたいのはいつも私だけだったと思う。彼は私をぞんざいに扱うようになってきた。それに傷ついたり怒るとあわてて機嫌をとってくる。その繰り返しだった。

 12月、彼の誕生日に冬の花火をした。彼に忘れられない思い出をプレゼントした。でも寒くてひどい思いをしたというのが彼の思い出。二度とやりたくないとまで言われた。あの冬の花火は私の恋そのものだったと思う。

 1月、元旦は年明けからずっと何時間も彼とLINEしていた。もっともっと今年は距離が近づけばいいなと思った。でも彼はこの頃にはバイトを辞めるのが決まっていたし、クリスマス以来、お母さんがさらに厳しくなって、なかなか二人で会えなくなった。

 2月、バレンタインデーのチョコレートも気軽にあげられないぐらい、もうこの恋は苦しかった。そして彼にとっても私の恋はもはや重かったんだろう。「感じ悪っ」っていうのが私の口癖だったし、早く帰りたがる彼に不満な私に彼はいつも困っていた。あんなにお母さん大好きだった彼が「家を出たい」とか「お母さんがいやだ」とか言うようにもなっていた。

 3月、彼はバイトを去った。もう今までほど会えなくなると、メンタル不安定な私に対して「これが最後じゃないでしょう」とのんきな彼。その気持ちの温度差がつらかった。

 4月、二人でお別れ会をしたけれど、それがもう最後になった。「もっと一緒にいたい」と言ったら「僕が与えられるものはあなたにすべて与えている!でもあなたは決して満足しない」と彼が初めて怒った。もう彼もキャパオーバー。私は彼にとってただのめんどくさい存在だったんだろう。

 5月、映画も名古屋飯も花見もドライブもコロナとゼミを理由に連続で断られて、もうダメなんだなぁと思った。そしてLINEの連絡も断つ。

 6月、試験で沖縄に行き、すべて想いも捨ててこようと思ったのに、捨てきれない想いの欠片のような透明な青い箸置きを彼のために買ってしまった。

 7月、私はバイトを辞めた。彼に「卒業します」とLINE。本当に彼を忘れようと瀬戸内海の島でワーケーション。環境が変われば彼のことも忘れられると思った。

 8月、忘れるどころか思い出してばかりで、このnoteに想いをつづり始めた。

 9月、彼に久しぶりのLINE。最初は喜んだ彼とやりとりも続いたけれど、私の「会おうよ」の一言で止まる。

 10月、LINEの既読無視を引きずる。彼のことだから返事をしようとしてもうまい言葉がみつからなくて、めんどくさくなったのかもしれない。そしてそのまま忘れたか。いずれにしてもめんどうだったり忘れるぐらいの存在で悲しい。何も考えてない彼にいつも私は勝手に傷ついてばかりだった。

 11月、このnoteももう終わる。本当は「会おうよ」って言葉に返事があればすぐにも戻るつもりだった。12月の彼の誕生日をまた一緒に祝いたかった。そしてまたクリスマスのケーキを一緒に食べたかった。あの教会のイルミネーションの青い光が今は切ない。

 『実らずに終わった恋は怖いほど透き通る』という昔の歌の歌詞を思い出す。実らずに終わった恋はどこに消え去っていくんだろう。

 あまりにも幼くてまだ恋も知らない彼のことをずっと好きなまま大人になるのを待ち続けることができないのは、私が超年上だから。

 彼はこれからさらに大人になって成長していくんだろう。美しく花開くのもこれからだろう。でも私の容姿は若さを失い衰えていくばかり……。

 結局彼は私の実年齢は知らなかったし、バイトの子たちもアラサーぐらいに思ってた。でも私が30としても21の彼にとってはかなりの年上。若い頃の一つや二つの差、学生と社会人との差は想像以上に大きい。

 そもそも年齢が問題だったんだろうか。

 恋に落ちてさえしまえば、年齢なんて関係ない。フランス大統領夫妻や池田理代子さんがいい例だ。ましてやフランス大統領なんて、奥さんに会った時は18歳。奥さんは高校の先生で当時43歳だ。ドリカムの吉田美和といい、男が惹かれる超年上女だっている。

 だから結局は自分の魅力不足と彼にとって私は恋する相手じゃなかったってだけのこと。

 人の名前もろくに覚えられない彼のことだから、私のこともきれいさっぱり忘れてしまうんだろう。それか昔のバイト先に世話好きな人がいたような気がするけれど、顔も思い出せない、そんな感じ。想像がつく。

 季節外れに咲いた花はただ凍って枯れていくだけで、雪に埋もれてきっと誰にも気づかれない。

 それでも花が咲いたこと、冬の花火のように散ったこと、その記録を残しておきたかった。

 誰の目にも触れないと思っていたけれど、何人かの方が「スキ」をくれたりいつも読んでくれて嬉しかった。

 ただ枯れていくだけの冬の花に暖かな光をあててくれてるみたいで、それだけで書いてよかったと思えた。

 今この場を借りて最後にお礼を伝えたい。

 本当に本当にありがとうございました……!

 私は彼のことが本当に好きだった。私がバツイチの超年上女でも、彼が超年下のポンコツ男子でも、彼のことが愛しくて愛しくてたまらなかった。

 最後は傷ついて終わったけれど、彼に恋なんてしなきゃよかったなんて言いたくないから、宝物のようだった想いを文字にしてボトルに封じて海に流すような気持でこのnoteを書き続けた。

 もしまた誰かが私の恋の記録に気づいたら、その時その瞬間だけは、愛しかったあの日々が一瞬蘇る気がする。あの時間の中にとどまる私がまだ笑っている気がする。

 凍りついて枯れる花が一瞬だけ生気を取り戻す。誰かの暖かな光で。

 だから感謝を残して終わりたい。

 暖かな光で照らしてくれた人たちに。

 私の心の清浄機だった愛しい彼に。

 季節外れの冬の花火のようだった私の恋に。

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