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【辰】龍尽くしカレンダー5月・双龍と宝珠
さて5月。
昨日、アトリエの大家さんに家賃をお支払いに伺った折
「連休はみなさんいらっしゃるので?」と尋ねられ
「そうですね、みんな通常運転ですね」とさらりお答えしました。
カレンダー通りに働いている人がいない共同アトリエのメンツです。
そんな5月も月イチで龍を紹介していきます。
今月は「双龍と宝珠」がテーマです。
これまでの龍はこちら ↓↓
5月のテーマ「双龍と宝珠」
![](https://assets.st-note.com/img/1714477970391-vPOjlvuLi6.jpg?width=800)
やたら入り交じった絵になりましたので、色分け。
![](https://assets.st-note.com/img/1714529313024-UKjhGzwKYX.jpg?width=800)
①敦煌石窟 双龍羽人文の龕楯/敦煌石窟・北周297窟の西壁、557~581年
②盤竜背八角鏡/正倉院・北倉42
③金銀装雲龍文銅製経箱/厳島神社・平家納経、1164年
敦煌の双龍がなかなかの顔立ちです。
②の龍は、
もとは2匹の首が相かわされ絡み合う、とても素敵な図像。
デザインの都合上、離れ離れになってもらいました。
「盤竜背八角鏡」で検索頂きますと、八卦文の配された中に浮かぶ
かっこいい龍が拝めます。
ふにゃっと柔らかい2本のツノもイイものです。
今回、年代はバラバラですが
どれも実にグッとくる龍ばかり。
![](https://assets.st-note.com/img/1714535495191-DE4x2M8CFt.jpg?width=800)
グッときたものを共有して頂ければそれで本望。
お時間ありましたら双龍と宝珠についてゴソゴソ見ていって下さい。
双龍について
龍に限らず2匹セットはよくあります。
樹の下のオシドリ、シカ、トラ、
シシとコマイヌも「ニコイチ」パターンです。
〈ニコイチパターンの背景として想像できるもの〉
①シンメトリー構図を使った均衡・調和の演出
②技法上の制約・利便
信仰・宗教に根付く図像には均衡の保たれた空間・調和を演出できるシンメトリーが多い。
また、何か1つの型紙を対象に配していく「パターンの連続」、
夾纈染などシンメトリーが生まれる技法が多種あること。
小難しい話はオイトイテ、
格好良く効率良いものが時代をグイグイ引っ張っていくのでしょう。
「デザイン優先で2匹の龍を描いた」
↓
「五行思想や陰陽、天地などをそこにあてはめた」
この流れだろうと思いつつも、私の中の天邪鬼沼がいまだに
「なにかイワレがあるのでは…」
「双龍って青龍と黄龍の可能性は…」
そこにこんな話が舞い込む。
「わたしは昔からこの池にすむ青龍です。ちかごろ、黄龍という悪龍がわたしを追いだそうとしているのです」
どう見ても権力争い。
黄龍=黄河の象徴。
それを治めた皇帝のシンボルとなり、五行思想の中央、黄色、黄龍となる。
そこのところに繋がる話かなぁと思いますがはてさて。
それにしても、中央に黄龍を置くなら
東は青龍でなくても良かったのになぁと思うのは私だけでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1714477596958-qtGgfbhdbE.jpg?width=800)
宝珠について
そしてもう1つ、双龍デザインで
組み合わせに多く用いられるのが宝珠あるいは宝塔です。
今回の5月の龍も2匹の間に珠や塔がありますし
前回、4月の双龍文環頭大刀柄頭もそうです。
![](https://assets.st-note.com/img/1714531228712-nO7xRaPe27.jpg?width=800)
一般的にこの宝珠に対し2匹の龍は、
守る・奪い合う・戯れるのいずれかをしているように描かれます。
珠は「如意宝珠」とされることが多く
仏教と習合して龍が「法の守護獣」となってからのメインアイテム。
これも身も蓋もない言い方をすればデザイン優先。
「樹下〇〇図」で聖樹を配するように、
シンメトリーの中心にポイントを置くのに一役買っているのだろうと
もちろん思う。
が、
これまた何かイワレを探してしまう図像沼です。
調べる中で面白かったのは
〝珠は「太陽」「月」の象徴で、それを龍が呑み込むことで「雨を降らす」”
雨乞い伝承の中でなかなか説得力のある思想だなぁと思いました。
こういうのが出てくるとやっぱり
ドキドキが止まりませんね。
果てなく広がり沈んでいく図像沼です。
と、今回もお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
そもそも五行思想がわかっていないなぁと諸用ついで本屋へ出向きました。
しかしあまりピンポイントなそれ関連のものがなく
吉野裕子さんをイチから読むかどうか悩んだ挙げ句、何も買わずじまい。
図像のことを調べると「デザイン優先だろう」と思うことが多いのですが
卵が先か鶏が先か、
くんずほぐれつしながら生まれていったのではないか、
そういうあてどもない背景に思いを馳せるのが楽しいです。
たまにメッケモノがあると本当に嬉しい。
完全に本業に差し障りがありそうなので、
月イチの楽しみに留めておきます。
お次は6月。
梅雨時、「雨龍」を予定しています。
どうぞ来月もお楽しみに!
龍カレンダー5月の参考
①双竜羽人の龕楯/敦煌窟北周297窟の西壁
関友惠.敦煌装飾図案.科学出版社東京株式会社.2019年,p59より
②盤竜背八角鏡/正倉院・北倉42
宮内庁正倉院事務所.正倉院.(財)菊葉文化協会.1993年,p19より
③金銀装雲龍文銅製経箱/厳島神社・平家納経
京都国立博物館.特別展覧会 金色のかざり ‐金属工芸にみる日本美‐.イメージファクトリー.2003年,p120
その他参考
荒川紘.龍の起源.紀伊國屋書店,1996年
笹間良彦.図説 龍とドラゴンの世界.遊子館,2008年
おまけ
![](https://assets.st-note.com/img/1714538651626-Ps7koxCae7.jpg?width=800)
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