技法のはなし -繧繝彩色-
みなさま、近づく年の瀬いかがお過ごしでしょうか。
今回は彩色の中でいちばんのメジャーどころ、繧繝彩色についてです。
ウンゲンザイシキ…聞いたことのあるようなないような。
読めるような読めないような。暈繝彩色とも書きますが私は糸へん繧繝が好きです。
知っている方は知っているし、知らない方は知らないものですが、わかりやすいのは雛壇や百人一首の「繧繝べり」でしょうか。
この塗りきられた同系色の段々をウンゲンと言います。
神社仏閣ではこんな感じ。
この段階的に色を淡くしていく・あるいは濃くしていく彩色を繧繝彩色と言います。平たく言えば「ぼかさないグラデーション」。
この一見単純明快な塗分けは、世界各地で古くから用いられていまして、非常に効果的な彩色・塗装の技法です。
中国・チベットはもとより、中世ヨーロッパの装飾写本、エジプト壁画などなど、こうした多彩な塗分けグラデーションが散見されます。
広く用いられ、今もなお用いられる理由を考えてみますと、
おそらくこうした欲求に見事に応えられる技法だからかと思います。
”見映えはほしいけど面倒なのは嫌よ”っていうやつですね。
華やかにしたいからと赤・青・緑…たくさん使うのは良いけれど、彩度が高く強い色同士を隣あわせると、バチバチしてうまくまとまりません。
そこで同系色の明度の高く彩度の低い色をかませることで、境界が柔らかくなります。
また、塗料を水などで美しくぼかすことはある程度の技術が必要ですが、塗分けるのであれば比較的簡易。下手でもあんまり目立ちません。
③の立体感目的は、日本では薄れがちになってしまったのですが、敦煌壁画の彩色など見てもらえるとわかりやすいかと思います。
洞窟内をいかに本物の宮殿のように見せるか。凹凸を色味と明度で演出できることも、繧繝彩色の強みです。
さてさて、文章ばかりでも芸がないかと思い、繧繝説明つくってみました。
繧繝といっても自由で、白から一番濃い色まで何段あっても構いません。
社寺建築でいくと3~4段が多いと思います。
上のイラストでは3段繧繝としていますが、これは①白、②ウス、③コイと数えて3段です。墨はノーカウント。
4段繧繝となると呼び方が①白、②ウス、③ナカ(中色)、④コイとなりますが、これも施工する人で異なるかもしれません。
そして繧繝の幅ですが、コイ色を幅広にします。絶対そうしなきゃダメなわけではありませんが、9割方そうかなぁ。白が膨張して見えるのと、白っぽい面積が多いと完成してないように見えて辛いんだと思います。
でもたまに地方色豊かな自由繧繝彩色見ると、嬉しくて震えます。
そして繧繝は段の数も幅も自由なら色も自由。
基本的に同系色でまとめるのですが、
意外と違うパターンもあるのであんまり決めてかからないようにしてます。
また、繧繝の面白いところは同じ配色でも、結構印象が簡単に変えられるところです。文様やデザイン全般そうだとは思いますが、色と形の組み合わせは無限大ですね。
イラストの外ウンゲンは「逆繧繝」という方が一般的かもしれません。
こうした幾何的な繧繝では今は外側をコイ色にする方が多いと思うのですが、唐草や宝相華ではやはり内側をコイ色とすることが多いです。
前職の先輩が、繧繝を「光のグラデーション」と喩えられた時になるほど!と思いました。内から外に向けて発光する素敵な塗分け技法です。
さてさて、いかがでしたでしょう。
繧繝についてはまだまだお話したいことがありますが、今日のところはこれまでとさせていただきます。
最後まで読んでくださいましてありがとうございました。
身の回りに意外と使われていると思いますので、ぜひ「ここにも繧繝⁉」的な体験を!
おまけ
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