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社寺検分のすゝめ -高野山・大門-

突然ですが皆さま、社寺に赴かれるのは1年に何回くらいでしょう?
初詣や各種イベント、御朱印めぐり、観光、散歩などなど
気軽に立ち寄られる方も多いかと思います。

かく言う私、月1回は社寺検分したいなぁと思いながら、
この3年だと10社に満たないぐらいですが
気になる社寺に赴いては彫刻や彩色などを鬼のように撮って帰る…
そんなことを定期的に行っています。
今回は今月初めに行ってきました高野山のことなど。




社寺研究会

「定期的に社寺に行きたい」という人がチラホラ周りにいます。
そんな方々が集って「社寺研究会」と称し、
出無精な私をありがたいことに誘ってくださるわけです。

主なメンバーは3名
Aさん:前職のOB、今は外注業者さんとして作業(70代)
Bさん:前職の外注業者さん、アトリエも一緒(50代)
Cさん:前職でお世話になっていた元請けの大工さん(50代)
という、なかなかアクティブな先輩方です。
幽霊部員で私がたまに参戦するのですが、みなさん本当お元気…
AさんBさんはよく現場で作業していたこともあり、
年の差はあれど非常に話が弾みます。

Cさんがいつも自家用車を出してくださいまして
運転も全てやってくださいまして。
(車があると遠地の検分や検分のはしごがしやすいので本当にありがたい)
早朝から1時間半ほどかけて京都に来られ、
そこから各メンバーの玄関前まで迎えに来てくださり、
車中の珈琲からお菓子からDVDから全て用意され、
帰りも勿論玄関までそれぞれを送り届け、
深夜に自宅に着かれるという、ものすごく手厚いスタイルです。

始めて参戦したときはそのモテナシぶりに恐縮しきって
翌日までぐったりしました(今は少し慣れた)


高野山まで

さて、そんなスタイルで今回もCさんが皆をピックアップし
そのままイザ高野山。
京都からだと高速を使って3時間ほどです。

道中の会話は最近の現場の話やなんやら。
途中「父鬼」という地名を看板で見つけ、
「ちちおに!」と私が喰い付いていたらBさんが
「ミノムシは鬼が父という話があったような…」
「チチー…チチー…って鳴くんだって」とすこぶる面白そうな話をしてくれてまた興奮する私。
帰ってから調べたら確かにありました。


高野山到着・大門

前職の入社したてに1度行ったきりなので、かれこれ10年ぶり。
お出迎えは大門です。

高野山の正面玄関・大門
赤い塗装は和歌山ならではの丹土(につち)

検分には曇りの方がヨロシイのですが、そうはいっても素晴らしい快晴。
秋・紅葉の高野山ということもあって人出はありましたが、
京都のようにイモアライ状態になるわけでもなく落ち着いた賑わいでした。

さて検分。
そもそも検分って何をするのと思われるでしょう。

私の検分は主に撮影です。
1人で行ってゆっくり見て回る場合は
+αの作業としてラフな平面図に配置を書きとめたり、
カメラで撮影した彫刻や彩色をズームで見てフムフム、
更に詳細な撮影をしたりです。

単独行動でなく時間があまりとれないときや、見る物件が複数の場合は
時間の許す限りとりあえず撮ります。

①まず引きで全体の概観
②組物のかたまり1つ
③彫刻の全体
④彫刻の細部(各モチーフや長い部材なら3等分にして再度撮影)
⑤気になる・面白い・ユニークな部分

時間があれば建物側面や背面、1間ごとの引き、1間ごとの軒から下まで、②や③を左右の斜め下から(構造がわかるように)などなど…
今回の大門だと合計14間(正面・背面5間、側面2間ずつ)あるので
1間あたり5枚撮ったら、それだけで60枚撮影するわけです。
そこから彫刻や部材を細かく撮るのであっという間に100枚を超えます。

帰ってからの画像整理が大変だ…と心中ぼやきながら
ポジションを選ぶ足とシャッターを切る指は止まらない。
回し車のハムスター状態であります。


今回はそこまで時間がかけられないので
彩色のあるものを中心に撮っていきます。

正面上層・桁下の支輪板彫刻
中央は鯉と流水・雲、赤い方の鯉はニシキゴイ仕様の彩色で面白い


センターにニシキゴイというのもなかなかユニークです。
鯉の顔も愛嬌のある感じ。
あとあと見て回るに、高野山は中央部分の彫刻に龍があてがわれる傾向にあるような印象を受けましたが、こちらの鯉も「龍の前身」という意味合いで配置されているのでしょうか。
門をくぐる前は鯉で、くぐった後は龍になる、まさしく登竜門的な。
そんな仮説を話す間もなくとにかく撮影。
気分は狩りです。


背面下層の支輪板彫刻は菊水
上の写真の細部
このポポポポポと連なる流水の小さな渦がユニークである


このポポポポポな流水は面白かったのですぐにBさんに報告。
一緒にムフムフする。
背面の上層の支輪板彫刻は5間中4間が「雲」だったけれど
端の1間のみ「蓮に流水」でこれまた変わっておりキャッキャする。
雲・雲・雲・雲・ハス。謎である。

下層の支輪板はぐるりと「菊水」かと思いきや、両側面は菊ではなく。
桜と思しき彫刻がありまたも興奮。

南側面の支輪板彫刻
おそらく桜で、結構レアだと思います
北側面の支輪板彫刻
波の彫りが正面とは明らかに違って面白い
やや「オシドリらしからぬ彩色」のオシドリがいる
北側面の支輪板彫刻もう1つ
大門の彫刻の中ではこの彫刻がイチバン謎でした
右上の謎植物
実らしきものの上から伸びている赤いナニカ
左のほうのもにょろっと伸びる赤いナニカ


よくある彫刻で似ているのはこういうヤマモモ(楊桃)かなぁと思いますが
赤いナニカが本当に謎です


それに加え中央付近のこのウサギさんのひょうけた顔も良い味だしています


大門での狩りをとりあえず終え、次なる場所へと移動します。
ちなみに社寺研究会の行動計画はノープランである。
私は本能のままに撮影を行い、あとのお三方もそれぞれ楽しんでおられる。
Aさん・Bさん・私は彫刻や彩色に目がいくけれど、Cさんに関しては大工さんなのでまた眼の付け所が違う。
面白いものがあれば共有するという非常にフリーな集まりです。


検分時には撮影必須の案内図
各建物の位置関係や名前が記録できます


こちらも撮影必須の建物説明
創建や再建年代、文化財指定の有無など確認できます


駆け足で大門を終え、次なる目標へ。


その前に腹ごしらえです。
Bさんが文明の利器スマホを用いて選んでくれたお店は、少し路地に入ったご夫婦2人のお寿司屋さん。
何やら外人さんのクチコミが高評価だったとか。

高野山でにぎりとは思っていませんでしたが、更に想定外だったのは非常にリーズナブル。
サービス精神旺盛な厚く切ったネタ10種に、大きなお椀でのあら汁、最後にはパイナップルと柿の水物まで。至福。

加えてお会計時に衝撃だったのは、おそらく消費税度外視なことです。
年季の入った木の札に書かれていた価格そのまま。
「高野山には増税の通知が届いていないのでは(失礼)」と、色んな意味で驚愕のお昼でした。


社寺と風景以外撮らない私に、いつもAさんが思い出写真をくれます
AさんBさんは先駆け一杯付き(私は運転の可能性を考え飲まず)




お次は中門・金堂・根本大塔の立ち並ぶ壇上伽藍エリアへ。
そちらはまた日を改めまして。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
また次の投稿で。




「そうだ 高野山が待っている」的なイメージで撮った一枚
久々の社寺、楽しかったです


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