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コンクリばいばい記念日

今年初めに受けたセッションのテーマに

大好きだったはずの吹奏楽を楽しめない。見るのも聞くのも辛い。

というのを選んだことがあった。


私は中学校・高校・大学・社会人とずっと吹奏楽部で打楽器を演奏していた。

素人なりに基礎練習を繰り返したり、レッスンを受けたり、楽器を買ったり(打楽器は無限にあるのでマリンバやスネアなどのいくつかだけど)してずっと演奏活動をしていた。

部活の顧問として吹奏楽部に関わった時期も長かったし、顧問だけど打楽器に関しては生徒にレッスンする立場になったりもしていた。

演奏会も何度も足を運んだし、コンクールを見るのも聞くのも大好きだった。


でも、そんな私が吹奏楽を楽しめないことになった。


原因はいろいろあってここでは書かないけれど、外を散歩していて中学校や高校から楽器の音が聞こえるのも嫌だった。

楽器の音が聞こえるとドキドキして、息苦しくて、目を背けたくなった。


そんな自分が嫌でセッションテーマに選んだ。


コーチと一緒に自分を眺めて、心の中にいたトゲトゲのかたまり(コンクリート製の巨大ウニみたいなイメージ=コンクリ)と出会った。

コンクリは傷ついた私が作り出していて、思い出すたびに私を傷つけていた。


吹奏楽と打楽器は私のアイデンティティの大きな部分だったのだけど、仕事で吹奏楽部のハードな活動やアイデンティティの否定(必要とされていない)を感じて、私はめちゃくちゃに傷つけていたこともわかった。

傷ついたのに、それを無視していると、体は訴えてくる。

『ここにいるよ!』

私の場合は楽器の音がトリガーだった。


そんなコンクリ。

いるのはわかった。
傷ついたことも認めて、無理に触るのでなくゆっくり傷を癒す時間をとった。


そして半年が過ぎたころ、

職場のイベントでちょっと楽器をやらないかという話が出た。

打楽器は持ち運ぶのがしんどいので、大人の手習いで始めたフルートを引っ張り出してカラオケで一人、吹いてみた。

ちゃんと音が出て、指も覚えていた。


そこから少しずつ音楽を聴けるようになってきた。むかし演奏した曲、フルート、打楽器アンサンブル…YouTubeのオススメでどんどん出てくる音楽をスキップしないで楽しめるようになった。

記憶が繋がって、思い出した曲を検索して聞いたりもした。


そして2週間前。

いつものように夫とぶらぶら飲み歩いていて、たまたま入ったお店で常連さんとマスターが話している会話から、その人たちが社会人バンドのメンバーだということを知った。

そこから話が盛り上がり「今度演奏会あるので来ませんか」と誘っていただいた。

すごく嬉しくてすぐに予定を入れた。


そして今日。


25年ぶりに『お客としてだけ』演奏会を聴きに行った。

今までは、自分が演者だったり、運営者だったり、関係者だったりして、純粋に客席で聴くことに集中できる環境ではなかった。
たまに聴きに行っても、どうしても打楽器を中心に見てしまい批評的に見ることが多かった。

だから、おそらく中学生の頃以来25年ぶりに純粋に音楽だけを聴くためにホールへ足を運んだ。


久しぶりに正面から入るホール。
チケットをもぎってもらって入る。

手先が震えてドキドキした。

ホールに入ると、吹奏楽独特の空気が動く感じが漂っていて涙が出そうなほどだった。


私、また吹奏楽大好きに戻れた。


その瞬間だった。

コンクリ、傷ついた私を教えてくれてありがとう。ちゃんと教えてくれたから傷を癒して前に進めたよ。

また自分を傷つけていたら教えてね。


ありがとう。ばいばい。


今日はそんな記念日になりました。

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