【詩】古書店と女
日本列島の極めて太平洋に近い街の一角にある古書店で
彼女は降り積もる埃と戦っている
身をかがめてすばやく動く
それはまるで命令を受けた塹壕の兵士のよう
生活のための戦闘は毎日続く
そうすると、支払われる給料より不平不満の方が多くなってしまう
いつもいつも同じ景色
新書と文庫本と雑誌とハードカバーがつくり出す宇宙
その闇の中に沈んでいく心
それを掬い出したくて確かめる懐
この世のはじまりからおわりまでの、ホモ・サピエンスが知ったすべての一部
彼女は多くを知っているが、真ん中にあるものはまだ見えない
海を越えて街に吹く風
彼がもたらしたものか、DNAかはわからないが
人間より前から居た何者かが
今日も彼女を、積もる埃と戦わせる
いつも応援してくださりありがとうございます。