道ゆく人差なきや

「道ゆく人差なきや」

幹線道路の隅に、ぽつりとあった石碑のようなものに刻まれていた言葉だ。よく見ていたわけではないので、それがなんのために設置されていたのかは分からない。そもそもあの石碑の正式名称は何なのだろうか。もっと言うと、本当にふと目にしただけなので、全然違う言葉だったかもしれない。
それでもとにかく、茹だるような暑さの中で、視界の隅で捉えたその言葉にひどく衝撃を受けたのは事実である。

私は、夢を追い、結果の出ない日々に焦っているところだった。正確に言えば今も焦っているのだが、その時はちょうど、かなり焦っていた。
新しく挑戦し始めたことが3ヶ月目に入り、そろそろ成果が欲しくなる頃だった。時間も気力も目一杯使って作ったものが、世間の目に触れる頃には原型がなくなるほどの修正が加えられている。今はまだ期待されているからチャンスをもらえているが、そのうち、向いてないから辞めようと言われてしまうのではないか。情熱はあれど、辛いものは辛くて、いっそのこと放り出してしまいたくもあった。それでも、諦められなくてもがいていた。

そんなときに、その言葉に出会った。

私は「道ゆく人」である。無謀だと思うし思われているだろうが、日中は飲食チェーン店でアルバイトをし、夜は夢を追いかけるフリーター(仮)だ。そして、これを読んでいる人にも「道ゆく人」がいるのではないか。私とは違う「道」でも、その人なりの「道」を進んでいる人がきっといる。

見える景色が違くても、目指すところが違くても、ただ前を向いて歩く。歩き始めたばかりでも、何十年と歩いていようと、ひたすら進む。そこには何の違いもない。

「道ゆく人差なきや」
通りすがりに見ただけなので、もしかしたら本当にただの「道」を表している交通標語だったかもしれない。しかし、その言葉でまた前を向くことができた。
夢を追い始めたばかりの人も、夢を今にも掴みそうな人も、進むのみ。自分も、進むのみ。

やるしかないじゃないか。

この記事が参加している募集

最近の学び

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?