滲んだ紫陽花 | フォトエッセイ
小学校まで徒歩30分 集団登校で歩きながらの道々、傘を差しどんよりした空の下 戸建ての家が立ち並ぶお庭や軒先に咲く花を見ていた。
一際目立つ花、紫陽花に惹かれた。
その頃から好きな花は紫陽花。
図工の時間 紫陽花を描くことになった。大好きな紫陽花「よし、頑張るぞ!」いつになく念が入る。今までに見たピンク、青、紫を思い浮かべ この画用紙に花を咲かせよう。パレットに絵の具を出し それぞれの色の微妙なグラデーションを創っていく。丁寧に塗る。サイドに置いた黄色い細かく仕切られたバケツの水入れで色が混ざらないように筆を洗う。
時間がかかったが結構満足のいく出来栄え。周りの子たちのを見てもみんな鮮やかで綺麗だ。紫陽花の絵は色の好みで個性が出るもの。
片付けようと席を立つ。
「あっ……」 水入れを倒してしまった。
画用紙の上を滑りながら水が床に溢れた。
「大丈夫!?」前後隣の席の友人達が綺麗に洗った自分の雑巾で床を拭いてくれた。水で滲んだ絵は押さえるようにポンポンと優しく拭った。何が何だか分からない咄嗟の瞬間の出来事…
(あぁ、どうしよう……)
絵の描き直しを手伝おうか?そう言ってくれる子もいた。もう色塗りは間に合わない、花弁を縁取り紫陽花らしく見せるのが精一杯で仕方なくそのまま提出した。
後日、学年で数名の紫陽花画が廊下に貼りだされたと知る。私のもあると……
ー 何故?あれは失敗作だ ー
校長室へと続く廊下に"私の紫陽花"が貼ってあった。
先生からは『ボカシが絶妙』と褒められた。(苦笑)
自己評価が低くても他者から見たらそうでない時もある。思いを込めて創作したことには違いはない。
失敗だと思っても悲観する事なく次のステップへ進んでみよう。
あの時、水を拭いてくれた友の温かさ。
自分も同じように友の助けとなろう。
"私の紫陽花"はそんな気づきをたくさん教えてくれた。
〜時を重ね 今も紫陽花を愛でる 〜
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