世界はカラフル(告白雨雲)
昇降口で靴に履き替え校舎の軒下まで歩くも、雨はまだまだ止む気配がなかった。薄墨色の空を見上げ睨んでいたら、斜め前の席の男子がふと私の横に立った。
授業中にいつも足を組みながら机の下でスマホの動画を見ていて、何を考えているのかよくわからない人だったので驚いた。
彼は赤い傘をこちらに差し出し、その中に私を入れてくれた。
思わず、なんで男なのに赤なのよって言ったら、死んだかーさんのだからって答えた。じゃあ私が持とうかって言ったら、オレンジに染めた頭を横に振った。
帰路の沿道に生えている黄色い花が、緑と雨露によく映えて、今日は特に綺麗に見えた。
家に到着すると母はこれで拭きなさいって、青いタオルを彼に差し出した。
彼の左肩は傘をこちらに傾けすぎたせいでぐっしょりと濡れていて、拭いたタオルはみるみる藍色になった。
「送ってくれて本当にありがとうね。これ帰ったらおやつに食べて!」
母が彼に渡したのはルマンドだった。
彼がそれを見てにやっとした瞬間を私は見逃さなかった。
「好きなんだ、ルマンド」
「あったりめーだろ」
割れないように大切にカバンにしまうと「じゃあな」って小走りに去っていった。気が付くと雨は上がっていた。
「母さんはあの子が好きよ」
母がにこっと笑って指差した先には、七色の虹がかかっていた。
(了)
このお話はこちらの企画に参加しています‼️
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?