さくらんぼの憂鬱
今日も純喫茶では飲み物と一緒に苺のショートケーキと珈琲ゼリーが飛ぶように、いや弾けるように売れている。
厨房では真っ黒い顔をした珈琲ゼリーの見映えが良くなるように、てっぺんに生クリームが丸く絞られその真ん中にシロップ漬けのチェリーが一個、可愛い制服を纏った店員によって飾り付けられ客席まで慎重に運ばれている。
しかし、チェリーには不満があるらしい。
「同じてっぺん同士なのに、ショートケーキの苺さんは人によっては大切にされて後で食べられることもあるのに、なんで私たちチェリーはいつも真っ先に食べられちゃうの?しかも種があるからって、食べながら吐き捨てる場所を探してるのよ。私たちに存在意義ってあるのかしら?」
チェリーは赤い顔をより真っ赤に膨らませて、ぷるぷると怒っている。
その言葉を聞いていたプリンアラモードとクリームソーダに添えられていたチェリーたちは一斉に器から滑り落ちると、床へと逃げ出した。
(了)
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