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燻された真実(音声燻製)
「おかしいな……」
本来ならライブの前半、スモークが炊かれるタイミングでの衣装替えで一度舞台から捌ける予定だった。
イヤモニからスタッフの声が聞こえてきた。
「優(すぐる)さん、勝(まさる)さんが動きません!」
それを聞いて動悸が激しくなった。
どうしよう……勝がいないとこの先は歌えないのに。
スタッフの判断でここまででライブを中止することに。平身低頭ファンの皆さまに謝罪した。
「昨夜から喉の調子が悪く、今の状態ではこれ以上続けるのは非常に難しく……」
一部のファンからはブーイングが上がったが、幸い大きなトラブルはなく俺は舞台を降りた。
「勝の初号機しか用意してなかったわけ!?」
俺はスタッフを叱りつけた。
「優さん、二号機も三号機も優さんが長く歌わせ過ぎたから修理に出してるんですよ……」
そうだ。俺は冒頭の三曲しか歌詞を覚えられないから残りは全部俺そっくりに作ったクローンの勝に歌わせている。
そして俺の歌は勝が歌った場合のみ人々を感涙させることができるのだ……。
(了)
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