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花柄

 いつも花柄のワンピースで出社してくる同僚の女性は人付き合いが苦手なのか俯きがちで、大抵手元ばかりを見ていた。
 しかし清潔感があり誰よりも丁寧に仕事をこなすので、俺は好意を抱いていた。
 ある雨の日の終業後、傘を忘れた彼女を自宅まで送ることになり、玄関先でお茶でもどうぞと引き留められた。
 リビングは全面花柄の壁紙で彼女らしいなと自然と笑みが溢れる。座ってお茶を待つ間にぐるりと見渡す。
(いや待てよ……これは……)
 目を凝らしてみると壁には大小様々な人の手形がついており、それがまるで花柄のように見えていたのだ。
 震える手元を抑えつつ出された紅茶を一口だけ飲み、急用を思い出したと口にした次の刹、那脳の奥が白く霞みはじめた。
 彼女は微笑みながらもハッキリとこう言った。
「先輩の手形も今日からここに仲間入りですよ。私、手フェチなんです」

 少し開いた扉の隙間から奥には、何か黒い人の山のようなものが見え……る……。

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