メルカリで出会う、パラレルワールド 〜ツキノワグマの熊脂 編〜
インターネットの良さは、自分の居る場所と異なる世界へ、自由に行けることだと思う。それはある意味、並行世界の自分達に出会うような魅力がある。
今回は、ツキノワグマの熊脂というアイテムを通じ、その世界を楽しんだ話をしたい。
インターネットで『どこかの誰か』と交わる楽しさ
例えば、Tiktokで、普段は触れ合わないような年代の子たちの流行や悩みを同じ速度で知っていく、Xで山でアヒルを飼っている人の日常が、私はアヒルなんか触ったこともないのに、やけに高い解像度で流れてくる。
Instagramでは、遠くの存在に思えている厳格なあの巨匠クリエイターも、土曜日には素敵な奥様と、昼間から素敵な中庭でビールをイチャイチャしながら楽しんでいる。パラレルワールドの私は、いつでも彼ら、彼女らの友人であり、ご近所さんだ。
そんな感じで、インターネットは、いつも私に、普通に生きていたらたったの一度も言葉を交わさずに生涯を終えるだろう、たくさんの『どこか』や『誰か』との世界をくれる。
『どこかの誰か』と交わる媒体としてのメルカリ
それは普段は、SNSでのテキストや画像や動画なんだけども、それをもっと生々しい肌感に落としてくれるのが、我らがメルカリだ。
メルカリは、個人同士がやりとりを通じてモノの売り買いを楽しむフリマアプリ。売り手の書く商品文や、購入後のメルカリ内でのメッセージのやりとり、そして、商品が届いた時に、彼らの思い思いの梱包を開き、モノと対面することで、より身近な『どこかの誰か』との並行世界での記憶が鮮明に広がる。
並行世界での記憶が広がる、なんて言うと大袈裟に感じるかもしれないが、ここはアツく主張していきたい。メルカリは、違う世界の人々との通信機器なのだ。
ツキノワグマの熊脂、知ってる?
そんなパラレルワールドを行き来できた体験として、是非この場で紹介したいのはこちら、ツキノワグマの脂にまつわる話。馬油のように使える品物らしい。
私は、fūunというWEB制作会社をお手伝いしている、東京在住の人間。出身は福島だが、新幹線の停車駅になっているくらいには都会で、田んぼも車で1時間行ったくらいに遠く、野生動物は、幼い頃に家の近くの茂みでキジとハクビシンを見たことがあるくらいで、熊を身近に感じたことはない。
そんな背景だからか、どちらかというと自然的なモノは好きな方だと思うけど、ガチで山に身を置くほどではない。でも、ジビエの店とかあると入ってしまう…。
豆乳よりヤギミルクの方が強い、というアニミズム的動物崇拝
そんなニワカな自分が、なぜこんなニッチな商品にたどり着いたかというと、定期的にゴートミルク(ヤギミルク)石鹸や、馬油、サメのオイルを買い求めてしまう自分の中にある、アニミズム的動物崇拝の傾向に気付いたためだ。
なぜだかわからないけど、豆乳や米糠より、ヤギのミルクの方が強そうな気がする、だって本来、ヤギは険しい山岳でも平気な顔でいる動物だ。大豆や稲は、人の整備した場所でしか生きられない。
馬油に使われている馬は、きっとヤギよりも家畜感が強く、人が世話しないと死ぬだろう。でも、今一度、想像してみて欲しい。
何千何万の人間を、走るという種としての特性だけであれだけ魅せることのできる美しい動物の体躯を。大豆や稲より、個人的にはグッとくる。
サメだってそうだ。サメのオイルは、スクワレンオイルと言われ、深海鮫の肝臓から抽出するらしい。そんなの…絶対効くにきまっている。その神秘さに人間は、根っこの部分で動物たちの持つ美を超えることはできないと思う。
もうこの考え方は、アニミズム的動物信仰そのものだ。
彼らの力に憧れ、その力を借り、自分のものにしようとする、人間の姿。
人間は恐ろしい。それに気づいた瞬間、私は『考える限り、一番強く、険しい自然を生き抜く動物』を探し、その力を得ようとしてしまったのだ。
そう、それこそが熊脂との出会いだった。
いろんな『どこかの誰か』が熊を崇拝していた
熊は、その強さと賢さで古来から崇拝の対象だった。
カナダからアラスカにかけて、北西太平洋岸の先住民は、熊の強さや思慮深さを尊敬し、その姿をトーテムポールとして刻んだ。熊が殺された時には長老の家に運ばれ、高い最高位のゲストとして扱われたという。
ゴールデンカムイで有名な熊送りも、アイヌの最大かつ最重要の儀礼であると聞く。
北欧神話に登場する狂戦士、ベルセルクの語源だって、Bear Shirt(熊皮のシャツ)、またはBare Shirt(剥き出しのシャツ=裸)の意だ。
熊は、狩猟文化の濃い地域で、動物の王であり、戦士であり、自然の言葉を伝えるシャーマンであり、その身体で大きな恵みと再生を与える動物だった。
熊脂、買っちゃいました
私は、迷わず購入ボタンを押した。
出品者の、”ツキノワグマの油です”からはじまる簡素な商品説明を信用していた。熊に詳しくない人間は、熊の種類なんかわからない。
それに、熊脂が当たり前にある彼の世界の周囲の人間には、熊脂は当たり前のものだからだろう、使い方も”人の体温位でクリーム状にすぐ溶けます”くらいしか書いていない。
唯一、商売っ気を感じるとすれば、『現役の本物の猟師の方が作ったとても貴重な物です』、『野生動物たちの命を無駄にしないためにも、ご購入くださる方にお役立てて頂ければ嬉しい』という部分だろうか。
それでも、彼の文章からは、自分本位ではない、熊や熊を狩った猟師への尊敬の念を感じる。
そんな彼に好感を持った私は、彼の今までの出品物を覗いた。
並ぶのは、ちょっとした趣味のものや私服、そして大量の熊脂だった。
確かに、熊一匹殺したら脂は大量に作れそうだもんな…。きっと彼のなかでは、趣味のCDや本と同じくらいに身近なものが、熊脂なんだろう。
パラレルワールドの自分と、熊と出品者との対話
熊脂は、何度も何度も煮て、漉して作る、大変手間のかかるものなのだという。到着を心待ちにする間、熊脂の作り方動画を観ながらパラレルワールドの自分に思いを馳せる。
その世界での自分は、”アニミズム的動物崇拝”なんて言葉は知らない。あるとすれば、日常に組み込まれた、熊に向き合う素朴な時間だ。
そこでの自分は、冬になると近所の馴染みの猟師に、当たり前に脂がたっぷりとついた肉をお裾分けしてもらう。冬の間は、脂がすぐ固まり作業しやすい。きっとそこで過ごす冬はとても静かで、コトコトと脂を煮る音と火の音だけが響き、もしかするとその音だって外には漏れず、雪に全て吸収されているのかもしれない…。
何本も何本も熊脂を作ってメルカリで売ってきた出品者こと、ベアトリクスに好感を持つ私は、もしかするとその世界では、彼に熊脂の作り方を教わっている、なんて繋がりがあるのかもしれない。(ベアトリクスはBearとかけているのだろうか?)
と言うのも、メルカリの熊脂には、熊脂に使われる熊はツキノワグマだったり、ヒグマだったり、さまざまな熊を使われていたのだ。googleで検索してみると、熊を獲る時期や、加工する部位でも脂の仕上がりは変わるという。
きっと、彼は、マタギ系Youtuberとして東京から逃げるように山暮らしを始めた私(パラレルワールドでの設定です)に偏見を持たずに親切にしてくれるのだ…。ありがとう、ベアトリクス。
現実世界での彼との実際のやりとりは、”購入しました。到着楽しみにしております。”、”かしこまりました。発送までお待ちください。”のみのとても簡素なものだった。しかし、それでいいのだ。きっと日本のどこかに存在する、この世界での彼も、パラレルワールドの彼も、口数は少ないが、心根はとても優しい男で、それが少し分かりにくいだけなのだ。
購入後、実感した熊脂の保湿力
無事にうちに届いた、熊脂。匂いはそこまで強くないと言うが、恐る恐る開けてみると確かに馬油と違う方向性の獣臭さがあるような…。
手に取ると、常温だと溶けると言っていた彼の言葉通り、溶けて液体状になったバターのようなテクスチャだった。
ブースターとして乾いた肌に少し伸ばし、化粧水でミストをした後、もう一度肌に塗り込む。手にとった時点でわかっていたが、とても滑らかで、馬油のような浸透性も感じる。一般的に言われている、『熊脂は馬油の上位互換』という口コミはまさに、という感じだった。アトピー肌の自分でも、夜塗れば朝も簡単なケアで肌の状態も良く保つことができた。
獣臭さについては、伸ばせばそんなに気にならないのと、化粧水をローズウォーターにすることで、逆にその獣臭さと薔薇の香りが組み合わさって海外ブランドの自然派石鹸のような気配にもなる。(ちなみにこの、メドウズのローズウォーターをつかっている)
本当に少しで全身に塗り広げることができるし、熊や手作り品に抵抗がない人ならなかなかコスパもいいのではないだろうか?
『それ、本物なの?』メンバーから寄せられた心無い声
熊脂という、不思議でスゴイものを見つけた私は大興奮だった。fūunでの社内MTGでも、最近買ったいいもの、というテーマでアイスブレイクの時間があったのでそこでも共有したほどだ。
しかし、皆んな私の、アニミズム的動物崇拝の思考背景なんか知らない。興奮して話す私に向けられたのはメンバーからの困惑の目線。あまつさえ、『それ、本当に熊脂なの…?適当な牛脂とかじゃないの…?』と言う者までいたほどだ。
熊脂を塗り続けて約5日目、私に『私が塗っていたのは本当に熊脂だったのだろうか?』という疑惑の歪みが生まれた。そこから数十分も経たないうちに、パラレルワールドでのベアトリクスと共に過ごした静かな美しい冬山の記憶がガラガラと音を立てて崩れていった。
馴染みの柴犬に吠えられ、熊脂の信憑性が増す
私が買ったのは20グラムの入れ物2つに収められた、計40gの熊脂だ。少量でスルスルと身体全体に伸びるそれは、使い終わる気配は到底ない。
しかし、買ってしまったので仕方ない。たった1000円程度の買い物だが、今までの思いもあり、陰鬱な気持ちで得体の知れなくなってしまった脂を身体に塗り込み続けた。
転機が訪れたのは、熊脂を塗り込み続け、ちょうど一週間ほど経った頃だろうか。リモートで働く私は、昼過ぎだとか、夕方よりちょっと早めだとか、そんな半端な時間に気分転換しに近くの公園に赴く。
この時間はいい。比較的ゆったりとしたライフスタイルのご近所さんが、犬を連れて散歩している時間帯でもあるのだ。
そんな家庭で育てられている犬は、やはり家庭環境がいいのかおっとりしているし、飼い主もおおらかな人が多く、犬を進んで触らせてくれる。
休息をルーティンにしていると、飼い主も犬も私を覚え、おさわりも恒例になる。何組かそういう犬連れがいるのだが、この日は、柴犬のモモジロウと出会った。
モモジロウは、”飼い主以外にはなつきにくい”といわれる柴犬らしからぬ、いつでもヘッヘ…と笑っているようないい犬だ。お腹も触らせてくれる。
遠くからモモジロウと飼い主が見える。ベンチに座る私は、会釈しながら彼らを待つ。今日も、一言、二言言葉を交わし、モモジロウを撫で、別れるのが私たちの日常だ。
『わ〜、モモジロウかわいいね〜』そういつものように手を伸ばした、瞬間だった。
ギャワワワワワン!!!!!!!ギャワワワワワガガガッッ!!!カハッッ!!!(むせる音)
モモジロウ、爆ギレ。
叫び必死にリードをたぐる飼い主。
ビビる私。…普段はまったりとした時間が流れる昼の公園は、軽いパニック状態となった。
『いつも会ってるお姉ちゃんだよ、どうしたのモモジロウ?!』困惑する飼い主をよそに私は感動に打ち震えた。
『ああ、これはきっと熊脂のせいだ。モモジロウは野生を失ったようなふっくら柴だけども、彼も熊脂を通じ、違う世界の彼と出会ったんだ。』
モモジロウは、パラレルワールドでは、銀牙伝説さながらの熊犬だったのかもしれない。
熊脂は、犬の足にも使えるものらしいので、本当は、モモタロウは熊脂の匂いではなく、ほかの理由でキレたのかもしれない。でも私には十分すぎるほどの事象だった。
熊脂を使うことで、動物の力を借り、自分のものにしようとするアニミズム的動物崇拝の姿がきっとそこに証明されたのだ。私はあの時、確かに熊だった。
終わりに
この一連を通じ、私は『すごい体験をしてしまった、どこかで共有しなくては』という想いに駆られた。
普段、パラレルワールドに思いを馳せても、それは空想にとどまることがほとんどだ。でも、メルカリはユーザーたちの多種多様な世界観を受け止める広大なプラットフォームを作ることで、違う世界、違う価値観で生きる人々との交流を容易にした。
メルカリの公式サイトには、このようにミッションが書かれている。
人間の都合で駆除される熊。それを活かそうとするユーザー。熊脂なんかどこに売っているんだろう?メルカリにあったりして…と思いつきで調べるユーザー、そこで生まれる奇跡的なマッチングと、始まる壮大な好奇心と想像の旅。
まさに、物理的なモノやお金に限らない、あらゆる価値の循環と、世界がテクノロジーでつながった瞬間を見たように思う。
ありがとう、メルカリ。
ありがとう、熊。
ありがとう、メルカリの全てのユーザーたち。
メルカリは、今日も『どこかの誰か』達との通信機器なのだ。
お得すぎるWEB制作キャンペーンの紹介
最後に、ここまで読んでくれた方へ、お礼も兼ねて、お得な情報を共有させていただきます。
私たちfūunは、始まったばかりのWEB制作会社。
正直、Xにもnoteにもまだぜんぜんフォロワーもいないし、お仕事もまだ既存の方との繋がりだけ。
でも、どんどんお仕事をしていきたい!ということで、WEB制作/ホワイトペーパー制作をお見積りからなんと半額のキャンペーンを行なっています。
安かろう悪かろうで心配している方もご安心ください。
CEOのわしおはエンジニア歴10年、ディレクターのみねこも業界8年のスペシャリストです。
WEBサイトや営業資料をどうしようかな〜〜〜と悩んでいるあなた、絶対にお得です。彼女たちはメンバーとして関わってきた私から見ても、サービス精神旺盛で誠実な人間です。
きっとここまで読んでくださる方は感性がfūunと合う方なのでしょう。いいつながりに出来ると思うので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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