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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【10-12月期調査③】ゆとり世代の転職が急増?その原因は

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要
世代区分

ゆとり世代の転職が急増?

「転職(会社命令等の出向や転籍は除く)」というライフベントについて、この四半期(3か月間)に経験した人の割合を世代別に調査した。下図は世代別の結果を示している。

転職(会社命令等の出向や転籍は除く)した人の割合【世代別】(n=3600)

今回調査の10-12月期、ゆとり世代の転職(会社命令等の出向や転籍は除く)を経験した人の割合が急激に上昇した。そのほか、プレッシャー世代やポスト団塊ジュニア世代の若年層でも割合が上昇している。

なぜゆとり世代だけなのか?世代間比較

なぜ、ゆとり世代だけ急激に転職した人の割合が上昇したのだろうか。一つ上の世代のプレッシャー世代と比較すると、その理由が見えてくる。

プレッシャー世代は、前回の7-9月期にも上昇しており、堅調に転職実施率が上昇している。一方、ゆとり世代は、7-9月期に一度実施率が低下している。もともと転職は、上期の始まる4月頭と、下期の始まる10月頭に向けて行われることが多いと考えられる。転職活動期間を考えると、夏の時期は、7-9月期に実施率が上昇する傾向にあると考えられる。しかし、今年の7-9月期は感染拡大第5波が到来し、転職活動を実施し辛い状況にあった。そのため、ゆとり世代では、7-9月期に実施されていたであろう転職が、ワクチン接種が普及し、第5波が収束した10-12月期に後ずれした可能性が考えられる。なお、従来通り7-9月期中に転職したものの、第5波の拡大によって自宅待機をした後、実際に勤務し始めたのが10月以降になった場合も考えられる。同様の傾向は、ポスト団塊ジュニア世代にも見受けられる。世代間でのコロナに対する認識の違いが確認できる。

しかし、それにしても、4%という実施率はやはり大きいと考えられる。コロナ禍を通して転職への意欲を持ちつつも、実施に踏み切れないでいた、もしくは転職活動を続けていたゆとり世代の若者が多く、この10-12月期に、一気にそれらが実現したと考えるのが妥当だろう。ワクチン接種の普及や、経済活動の回復に伴って、採用数が増加したことも背景にあると考えられる。

出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。