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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【4-6月期調査①】コロナ禍の女性の日用品・生活雑貨ブームは終結か?ついに減少傾向へ反転

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

今回は、コロナ禍で生じた、女性の日用品・生活雑貨ブームについて、どうやら今回そのピークを迎えたようですので、これについて詳細に見ていきます。最新の調査概要はこちらです。

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コロナ禍の女性の日用品・生活雑貨ブームはピークに

「日用品・生活雑貨の購入に使うお金」の金額が、前の四半期(3か月前)と比較して最近どうなったかを、「増えた」「変わらない」「減った」の3段階で調査し、DI値を算出して、その推移を追っています。下図は女性の結果を示しています。

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今回、4-6月期の女性の「日用品・生活雑貨の購入に使うお金」のDI値は、1-3月期の52.1から2.6ポイント低下し、49.5となりました。昨年4-6月期から5期にわたって調査を実施してきましたが、今回初めて50を下回り、消費額が増加傾向から減少傾向に転じたことを示しています。よって、コロナ禍における女性の日用品・生活雑貨ブームが、4-6月期前後でピークを迎えた可能性が高いです。

コロナ禍の在宅時間の長時間化がブームの原因か


女性の「日用品・生活雑貨の購入に使うお金」の増減の傾向を示すDI値は、昨年4-6月期に大きな値となり、消費額の大きな増加傾向を示しました。4-6月期はコロナ禍の初期であり、1回目の緊急事態宣言が出された時期でした。外出の自粛が要請され、学校等も休校となり、多くの人の在宅時間が長くなりました。この際、日常生活をより便利・快適にしたいという気持ちが強くなったために、日用品・生活雑貨の購入が進んだものと考えられます。また、それまで外出に伴う消費に使っていた可処分所得が、外出できなくなることで余分が生じ、それを今度は、在宅時間を豊かにするために使うようになったという影響も考えられます。

前回の1-3月期まで増加傾向が継続した


DI値は、昨年4-6月期以降、前回の今年1-3月期まで、50を下回ることなく推移し、消費額が増加する傾向が続いていました。本調査の他の調査項目では、在宅時間の増減傾向についても同様に調査しており、それによると、在宅時間も一貫して増加傾向を示していました。したがって、withコロナの生活様式が定着することで、日用品・生活雑貨の購入金額が増加する傾向が、今年の1-3月期まで続いていたと考えられます。

ピークアウトの兆し


しかし、今回の4-6月期調査で、ついにDI値が49.5となり50を下回りました。「減った」と回答した人の割合が「増えた」と回答した人の割合を上回り、全体として、前四半期より消費額が減少した人が多いことを示しています。これまで常に消費額は増加傾向でしたが、反転して減少傾向となったため、1-3月期から4-6月期にかけて、日用品・生活雑貨の消費金額の増加が、ピークを迎えたと考えられます。コロナ禍が始まった、昨年4-6月期ごろから続く、巣ごもり需要による消費額増加の効果が、ついに陰りを見せてきたということです。

今後もピークは持続か?

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ただし、今回の結果について、それほど悲観的になる必要はなさそうです。4-6月期のDI値はわずかに50を下回っただけであり、まだほとんど50に近い値を示しています。つまり、消費額の増加傾向は終わったものの、そこから大きな減少に転じているわけではありません。実際、来期となる7-9月期の、消費額の見通しのDI値も50.1と、ほとんど50に近い値を示しており、現状の消費額が来期も維持される可能性が高いです。まさに、withコロナの生活様式が定着したことによって、日用品・生活雑貨の消費額が高止まりしていることを示す結果となっています。

一方、増加は難しそうだ


しかしながら、今後更なる増加は期待できません。その理由は2つあります。まず1つは、増加傾向を加速する役割を担ってきた緊急事態宣言の効果が、徐々に薄れてきていることです。今年1-3月期にも、2回目の緊急事態宣言の影響で、日用品・生活雑貨の消費額の増加傾向が強まりましたが、その効果は、昨年4-6月期の1回目の時の半分程度でした。また、今回の4-6月期も、やはり緊急事態宣言の影響下にあったにもかかわらず、増加傾向が弱まるばかりか、逆に減少傾向に転じました。すなわち、緊急事態宣言によって消費額の増加傾向を強める効果は、回数を重ねるごとに小さくなってきているのです。これは、Withコロナの生活様式が定着しており、これ以上、緊急事態宣言が出されても在宅時間が伸びないためだと考えられます。そのため、今後さらに緊急事態宣言が延長されたり、新たに出されたりしても、消費額の増加に与える影響は、これまでと比べてさらに小さくなっていくだろうと考えられます。


また、2つ目は、緊急事態宣言を出す必要が生じる感染拡大そのものが、抑制されていく可能性があることです。今後、ワクチンの普及とともに感染状況が収束に向かきますくと、外出を自粛する必要性自体ががなくなっていきます。そうなった場合、これまで在宅時間が長くなることで活発化していた巣ごもり消費でしたが、在宅時間は徐々に減少していき、巣ごもり消費に充てられていた可処分所得が、再び外出消費へと転換されていく可能性が高いです。
したがって、今後は現在の消費額をピークとして、一定程度ピークを維持し、少しずつ減少傾向を示し始めることはあっても、これ以上増加することは考えにくいでしょう。もちろん、驚異的な変異株が蔓延したり、それにより、政府がより強力な措置を講じたりした場合は、再度増加する可能性もありますが、それはあまり考えられない事態でしょう。


よって、コロナ禍における女性の日用品・生活雑貨のブームは今回ピークを迎え、コロナ禍が収まるまで、現在の傾向・レベルが持続し、コロナ禍の収束とともに2019年以前の消費額へと戻っていくと想定されます。


出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

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