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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【6月調査②】若者のエンタメ消費はコロナでも無傷?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズは、2020年度に計4回実施するwebアンケート定点観測調査から、コロナで揺れ動く日本の消費者の心理がどのように変化していくのか、その動向について気になるトピックをシリーズでお届けしていきます。

当シリーズ投稿の趣旨出典元消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。<シリーズ説明>


【6月調査編第2回】若者のエンタメ消費はコロナでも無傷?

今回も6月に実施した第一回調査から、気になるトピックを拾っていきます。下記は6月調査の実施要項です。

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エンタメ消費も、外食・飲み会と同様、若者ほど影響が軽微だった


前回は、6月調査時点で外食・飲み会への消費額がコロナからどのような影響を受けたかについて、世代ごとの特徴を中心的に見ていきました。今回はエンタメ消費について同様に見ていきたいと思います。

下の画像は、前の四半期(3か月前)と比較して、今の四半期に、ゲームや音楽・映画コンテンツに使う金額が増加(した・しそう)と回答した人の割合から、減少(した・しそう)と回答した人の割合を引いたもので、左側の列が4-6月期の実績値、右列が7-9月期の予想値です。


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緊急事態宣言期間中を含む4-6月期、ゲームや音楽・映画コンテンツへの消費額は全世代にわたってマイナスの値となっており、エンタメ消費にも、コロナによる抑制の圧力が加わっていたことがわかります。

しかし、世代ごとに、消費額減少の影響の大きさがかなり異なっていることに気が付きます。上図では、マイナスの数値が大きいほど減少の影響を受けた人が多いことを示しており、より広範囲に影響を受けたことを表しています。

およそ年代順に、最もコロナによるエンタメ消費額減少の影響を受けたのは、バブル世代の▲18.3で、次いでしらけ世代の▲16.5となっています。一方で、最も影響が軽微だったのは、ゆとり世代の▲0.2となっており、ゆとり世代はほとんどエンタメ消費に影響がなかったという結果となっています。


世代で減少の影響が異なるのはなぜ?

前回の外食・飲み会でも同様に、高い年齢層ほど消費額の減少の影響が強く出ている結果となっています。

しかし、エンタメ消費の場合は、全体としてマイナスの値が比較的小さく、最も若年層であるゆとり世代(25~34歳)に至ってはほとんど影響が出なかったという結果となっている点で外食・飲み会の結果とは異なります。

緊急事態宣言期間中、不要不急の外出に対する自粛が要請されていましたので、外出を必ず伴う「外食・飲み会」は消費額減少の影響を強く受けました。一方、エンタメ消費は必ずしも外出を伴うことを必要としないため、比較的影響が小さくなったと考えられます。

同様に考えると、世代で消費額減少の影響が異なるのは、この、エンタメ消費が各世代でどれだけ外出と結びついているのか、その差によって影響の差が生じていると考えられるのではないでしょうか。

すなわち、高年齢層ほどエンタメコンテンツ消費と外出が結びついており、逆に若年層ほど、外出を伴わないということを意味しています。


外出と結びつかなくなったエンタメコンテンツ消費

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これには様々な要因が考えられますが、一番最初に思いつくのはやはり、各エンタメコンテンツのサブスクリプションサービスの普及が考えられるでしょう。

例えば、音楽はSpotifyやApple Musicなどのサービスが、映画やドラマなどの映像コンテンツは、NetflixやAmazon Prime Videoといったサービスが、定額課金で見放題のコンテンツ提供を行っており、自宅でいつでもそれらのエンタメコンテンツを楽しめる環境が整っています。

こうしたサブスクリプションサービスが若年層ほど普及した結果、エンタメコンテンツ消費と外出の結びつきが若年層ほど弱まっていると考えられます。

逆に高年齢層ほど、これまでエンタメコンテンツ消費に外出が結びついていたと考えられます。外出が結びつく事例としては、映画館や音楽イベントなどの体験型のコンテンツの楽しみ方が最も思い浮かべやすいですが、これに限らず、店舗でパッケージを購入したり、レンタルすることにも外出が伴う点を忘れてはいけません。

こうして、外出の自粛が要請された緊急事態宣言期間中、エンタメ消費の減少の影響は、エンタメ消費に外出を伴うことが比較的多い高年齢層ほど大きな影響を受け、あまり外出を伴わない若年層ほど影響が小さくなったと考えられます。


バブル世代としらけ世代のエンタメ消費欲は健在

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7-9月期の予測を確認すると、4-6月期と比較して、団塊ジュニア世代からゆとり世代(40代から20代)の結果に比較的変化はなく、4-6月期から7-9月期にかけてエンタメ消費額の増加と減少を予想する人の割合に変化が少ないことがわかります。一方、バブル世代としらけ世代(50代)は、その割合が大きく変化し、増加すると予想する人の割合が大きくなっています。

結果は6月調査時点での予測値ですので、当時、緊急事態宣言が明け、エンタメ消費のための外出が可能となる期待が高まり、エンタメ消費と外出がこれまで強く結びついてきた世代ほど、消費額の増加をより多くの人が見込んだと考えられます。

外出さえ可能となれば、エンタメ消費をしたい、というこの世代の強い欲求が見え隠れしているように感じます。

7-9月期のエンタメ消費の伸びは、実際にはどうなったのか、気になります。

出典:Withコロナ社会の消費者心理の変化を捉える定点調査2020


※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

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