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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【6月調査①】なぜ若者はコロナ禍でも外食・飲み会へ行ったのか?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズは、2020年度に計4回実施するwebアンケート定点観測調査から、コロナで揺れ動く日本の消費者の心理がどのように変化していくのか、その動向について気になるトピックをシリーズでお届けしていきます。

当シリーズ投稿の出典元となる消費者調査については、前回の記事でご紹介しております。また、当シリーズの趣旨のご説明もこちらで行っていますのでご覧ください。消費者調査の弊社HPはこちら

<シリーズ説明>

【6月調査編第1回】なぜ若者はコロナ禍でも外食・飲み会へ行ったのか?

今回は6月に実施した第一回調査から、気になるトピックを拾っていきます。下記は6月調査の実施要項です。

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宣言解除直後の6月でも、依然として警戒している人が多かった外食・飲み会。


出典元となる調査資料では様々な日常消費について掲載していますが、今回は外食や飲み会の消費マインドから読み取れることについてみていきたいと思います。

緊急事態宣言が5月31日(大都市圏以外は5月16日)に解除されたことにより、6月には感染が収束し、自粛生活から解放され、再び元の生活に戻るとの期待感が高まっているように感じられました。しかし、調査結果を見る限りでは、全体としては依然として外出を伴う消費に対し、警戒感が残る結果となっていました。


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上図は、前の四半期(3か月前)と比較して、今の四半期に、外食や飲み会に使う金額が増加(した・しそう)と回答した人の割合から、減少(した・しそう)と回答した人の割合を引いたもので、左側の列が4-6月期の実績値、右列が7-9月期の予想値です。

緊急事態宣言が発令された期間を含む4-6月期の外食に対する消費マインドは一気に冷え込み、全体として30後半から50半ばの大きなマイナスの値となっています。

また、6月調査時の7-9月期の予想は、おおむね0に近い値となっています。これは、消費金額が増加すると予想する人と、減少すると予想する人の割合が拮抗しているということを表しており、自粛期間中からほとんど外食や飲み会の消費金額が変わらないということを表しています。

6月調査当時、連日報道されるPCR検査の新規陽性者数は減少傾向にあるものの、0になるわけではなく、第二波の懸念もありました。そのため、5月中に緊急事態宣言の解除があったものの、依然として消費者の外食や飲み会への消費マインドは改善せず、おおむね自粛期間中を維持することが予想されたものと考えられます。


街に出始める若者と自粛を続ける中高年の二極化。

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しかし、7-9月期予想の結果を世代別に見てみると、プラスの値になっている群マイナスの値になっている群の二群に分けられそうであることに気が付きます。

プラスの値になっている群はゆとり世代~プレッシャー世代(およそ25歳~37歳)の若者、マイナスの値となっているのはポスト団塊jr.世代~しらけ世代(およそ38歳~60歳)の中高年となっていることがわかります。

この値がプラスになるということは、4-6月期と比較して、7-9月期に外食や飲み会の消費金額が増加すると予想する人の数が、減少すると予想する人の数を上回っているということです。

このことは、ポスト団塊jr.世代~しらけ世代の中高年が自粛を継続する一方で、若者(ゆとり世代~プレッシャー世代)の大勢が、外出の再開に舵を切り始めている予兆が、結果に反映されていると言えるでしょう。この6月調査時点ですでに、若者と中高年のコロナに対する見方に、差異が生じ始めていたことがわかると思います。


外出自粛はみな同じ。しかし世代間には影響の差が。

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そもそもの自粛期間中の影響は、世代ごとには、どうだったのでしょうか。

グラフを確認すると、世代が上になるほど、マイナスの値が大きいことがわかります。その世代間の差もかなり大きく、最も値の小さいしらけ世代が▲55.3なのに対し、最も値が大きいゆとり世代は▲37.3となり、約1.5倍となっています。

つまり、緊急事態宣言期間中、外出自粛の制限はほぼ一律に訪れたのに対し、上の世代ほど外食や飲み会に使うお金が減少する影響を広く受けた、ということになります。言い換えれば、若い世代ほど、外出の制限を受けても、外食や飲み会に使うお金が減少する影響が出た人の割合が比較的小さかったということです。

これには二つの原因が考えられます。一つは、今回の新型コロナウイルスは高い年齢ほど重症化リスクが高いとの報道があり、高い年齢層ほど外出を自粛する人の割合が大きかったため、減少の影響が大きく出たこと。もう一つは、若い世代ほど、コロナ以前からそもそも外食や飲み会に行く人が少なかったため、外出を制限されても外食や飲み会の消費額が減少する影響を受けなかったことが考えられます。

いずれにせよ、外食・飲み会消費はコロナ以降、若者に消費の中心が移動していることがわかります。7-9月期調査で、中高年の外食消費がどのように回復していくのか、気になるところです。

出典:Withコロナ社会の消費者心理の変化を捉える定点調査2020


※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。




今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。