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『クレヨンしんちゃん』に見る書店復興のヒント

未来出版研究会事務局長のKです。

アニメの話で恐縮ですが、先日ケーブルテレビのチャンネルを回していたら、クレヨンしんちゃん『本屋さんをお助けするゾ』というタイトルが見え、観てみました。

舞台は埼玉県・春日部市。春日部駅前にある「シタヤ書店」が、コーヒーを飲みながら未購入の本を読めるブックカフェのサービスを始めたことで、商店街の本屋「かすかべ書店」にお客さんが来なくなってしまった、という設定でした。(アニメながら、リアルな設定です)

本屋で立ち読みをしていたしんちゃん。お客さんがいないので、偶然通りかかったしんちゃんのお友達を呼び止めます。「本屋さんに入るの久しぶり~」「町の本屋さんは行かなくなったよね~」「欲しい本はパパがネットで買ってくれるからね」など、思い思いに口にするお友達たち。(幼稚園児のセリフとしては違和感がありますが、現実世界でも同じような状況だと思います)

「やっぱり自分で欲しい本を探せる書店はいいよね」「でも欲しい本が置いてないと困る」「ネットなら当日に手に入るのに」と、これまた幼稚園児らしからぬ会話が続くのですが、最終的には、お客さんが来なくて困っている「かすかべ書店」を助けようということになります。

そして、しんちゃんたちのアイデアで、店前でサイン会をしたり、ヘルシードリンクを作って本を買ってくれた人にプレゼントしたり、ポップを作ったりと、各々にお店の改善に取り組みます。それでもお客さんがはなかなか来ないので、今度は商店街でビラ配りをしだします。

「本屋さんで、直接手にとって本を買ってみませんか」とビラを一生懸命配りはじめると、閑古鳥が鳴いていたお店にはポツポツと入店客が……。町の書店に、ふたたび地域住民の客足が戻った、というお話でした。

長くなってしまいましたが、ここには、いままさに書店が置かれている状況が描かれています。家にいながら注文できるネット書店を使う人が増え、本屋に出向く人は少なくなっています。

しかし、本屋には自分の興味のある本だけでなく、求めている本の関連本や無関連の本まで、あらゆる本がディスプレイされていますから、そこには「出会い」があります。1冊の本との出会いで、人生が大きく変わってしまうという体験が、本屋にはあるのですが、ネットではキーワードを自分で検索しなければ商品が出てきませんから、偶然の出会いが生まれる可能性は極めて低いですよね。

もう一つ印象的だったのが、しんちゃんたちのビラを受け取って入店したお客さんに対して、店員さんが「ミステリーの新作、入ってますよ」と声をかけるシーンでした。お客さんは「僕のこと覚えてくれていたんですね」と喜ぶのですが、こうした交流が図れるのも、リアルな書店ならではです。誰がどんな本を買っているかを店員さんが知っていて、「この人にはこの新作を読んでもらいたいなぁ」とおすすめしてくれる。そんな交流の場が生まれる書店が、これからは求められるのではないでしょうか。

ネット書店の発達で、たしかに欲しい本はすぐに手に入れられるようになりました。しかし、ただ「その場にいながら、素早く本が手に入る」ということが実現可能になっただけのこと。「自分が思ってもみなかった世界との出会い」はきっと生まれません。

欲しいものがただ手に入る便利な世界。ネットに比べれば時間と労力は使うけど、書店で人や本との出会いを楽しめる世界。どちらが魅力的でわくわくするか、答えは明白です。

未来出版研究会では、「かすかべ書店」のように、お客さんのことを店員さんが知っていて、そこに交流が生まれる書店を応援していきます。いまは、旧態依然の業界の構造と、スマホの台頭などによって本が売れなくなることで、町からは書店が姿を消している状況です。書籍を通した「文化の発信地」でもあり、地域住民や趣味を同じくする人の交流の場にもなり得る書店を守っていく活動に、どうかお力をお貸し下さい。

未来出版研究会は毎月第3木曜日の夜に、東京・篠崎にある「読書のすすめ」さんの店頭をお借りして開催しています。

「読書のすすめ」さんは、まさに今回のアニメに登場した「かすかべ書店」のような取り組みを、25年も前から行っている書店です。私自身、ここで自分が知らなかったジャンルの本と出会い、いままで以上に深みのある人生を歩むためのきっかけを与えていただきました。
出版社や書店に携わる関係者の皆様は、「読書のすすめ」さんに来るだけで、いま抱えている問題に対して、解決の糸口をつかめると思います。

ぜひ、お越し頂き、未来出版研究会の仲間になってください。


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