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恒星の生と死の繰り返しのなかでつくられた豊富な元素

 元素表の元素を生成するためには、巨大な恒星内の核融合よりも莫大なエネルギーが必要だ、離散融合を繰り返す宇宙は、さらなる元素生成の実験場を誕生させた。

●鉄より重い元素をつくろう!

 恒星の中での核融合反応が止まると、核融合による「膨張する力」と重力による「落下する力」の均衡がくずれ、鉄の層は中心部に向かって光速の2割ものスピードで落下しはじめる(重力崩壊)。中心部は超高圧のため鉄原子に電子が押し込められ、陽子が中性子に変わり(弱い相互作用)中性子のコアができる。中性子のコアに鉄の層が落下し跳ね返り、激しい高密度の衝撃波が発生する。さらに、中心部のコアの重力崩壊が進み、やがて回転する巨大なブラックホールとなり、周囲を巻き込みながらジェット流にのせて元素をまきちらす極超新星爆発をおこす。

 この極超新星爆発において、ケイ素層や酸素層下部では、衝撃波が通過するときの高温高密度下で鉄を中心とした元素を生成、重い原子核は大量に生成された中性子を捕獲し、さらに重い原子核となる。陽子と中性子の均衡がとれる数に達すると電子を放射して安定した元素となり(弱い相互作用)、さらに中性子を捕獲してより重い元素を生成し、鉄より重い元素を生成する連鎖が続く。このようにして元素表にあるさまざまな元素が巨大なブラックホールの周囲から、ジェット流にのって宇宙空間に広がった。

 ファーストスターのサイズは、ダークマターの密度の偏りにより異なり、先に示した太陽質量の40倍程度のものから、大きなものは短期間に6万倍にも巨大化し、その最後に超新星爆発とともに中心核からモンスターブラックホールを形成、さらに周囲の星間ガスをとりこみ、モンスターブラックホールどうしが合体し太陽質量の10億倍もの超巨大ブラックホールとなり、ファーストスターからまき散らされた元素=星間ガスをもとに数千億の恒星を生み出す銀河へと成長してゆく。

 銀河の中では、ばらまかれた星間ガスが集まってさまざまなサイズの恒星が誕生と死を繰り返す。コアが中性子星となり恒星表面に到達した衝撃波により超新星爆発をおこすもの、超新星爆発をおこさずゆっくりとした中性子核融合によりプラチナよりも重い元素を生成するもの、連星系による核爆発型の超新星爆発により炭素、酸素、ケイ素、そして鉄を大量に生成するもの、中性子星の連星の衝突・合体により金やプラチナなどの重金属を大量に生成するものなど、現在に地球にある豊富な元素は恒星の生と死の振り子のリズムから徐々に生成されていったのだった。

参考書籍:
[1] 佐藤勝彦(2015), "宇宙137億年の歴史 -佐藤勝彦 最終講義-", KADOKAWA
[2] 和南城伸也(2019), "なぞとき 宇宙と元素の歴史", 講談社
[3] 谷口義明(2019), "宇宙はなぜブラックホールを造ったのか", 光文社
[4] 谷口義明(2019), "宇宙の誕生と進化", 放送大学市教育振興会


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