もがいて変わった。社会人美大生を経て。
こんにちは。朝山絵美です。
この春に美大の博士前期・後期課程を修了し、5年間の社会人美大生に終止符を打ちました。最近は、多少の寂しさもありつつ、美大で培ったものを糧に新しいことにも挑戦しています。
戦略コンサルタントとして経営に携わるなかで、ビジネスになるとなぜ人は人間らしくなくなるんだろう、という疑問をもったのが、すべての探求のきっかけでした。もっとイキイキと仕事に携われる人が増えることを願って、探求した結果見えたことや、自分のこれからについて徒然なるままに書いてみようと思います。
私のいま
最近は、自分の使命が「ビジネス」と「アート」の架け橋になることだと捉えて活動しています。
所属している企業は、外資系コンサルティングファームでして、経営戦略にまつわるご支援をしていますが、そこで「アート」の考え方などを援用しながら事業を発展させるお仕事に務めています。
私が選んだ 学び場
学位にあるように、私は武蔵野美術大学大学院(通称 ムサビ)の造形構想研究科を学び場として選びました。
100周年を迎えるムサビは、これまで「造形」学科・研究科しかありませんでした。いわゆる絵画や彫刻、基礎デザインといった領域です。2019年に「造形構想」学科・研究科を開設しました。「造形」にビジネスやソーシャルでの「構想」を掛け合わせた学びを提供することを目指しています。
2019年に博士前期課程(修士課程)が設立され、2021年に博士後期課程が設立され、それぞれ1期生として入学し、2024年春に初代博士号を取得しました。ムサビで博士を取得すると「アーティスト」とも呼ばれます。。
もがいて。もがいて変わった。
元々からアートに精通していたわけでもなく、幼少期から学生時代はずっと理系で答えのある学問分野が好きでした。仕事は新卒以降1社しか勤めていないのですが、振り返ると私のキャリアには大きな分岐点がいくつかあったように思います。
サイエンス から ビジネス へ
最初の大学・大学院では、人工知能AIを扱った研究をしていました。AIを活用したシステムを、オフィスに導入するプロジェクトを行っていました。
プログラミング自体は好きだった私ですが、研究を通じて、機械としゃべるより、人間としゃべる方が好きかもと、いうことに気づき、人としゃべる機会の多い職業を志すことにしました。
そんな中、就活の初期にコーチングという職種に出会います。
プロのコーチの方に出会い、自分の中のモヤが晴れる感覚に感動し、自らがそのスキルを手に多くの人を感動させられるとよいなと思い、リーダーが夢を実現するのをお手伝いすることを使命に、職を就くことを目指すことにしました。
当時22歳。リーダーのお手伝いをするためには、リーダーの悩みを知ることから始めなくちゃ、と思い立ち、たくさんのリーダーにお会いできるコンサルタントという職業を選ぶことにしました。
ビジネス から デザイン思考 へ
新卒で入社したコンサルティングファームに、今も働いています。戦略コンサルタントとして15年以上、さまざまな仕事をしてきました。業務効率化、販売最適化、海外進出、M&A、サービス改善、中期計画策定、新規事業戦略、など。
そのような経験を重ねるなかで、ビジネスになるとなぜ人は人間らしくなくなるんだろう。ビジネスって論理と数字の塊。それは大事だけど、もっと大事なものが欠けてしまってるのでは。という、疑問が膨らんでいきました。
10年ほど前、デザイン思考の黎明期、デザイン思考をビジネスの方々に浸透させる役割を担うことになり、スタート地点に立つことになりました。しかし、これまでビジネス界のなかで培われてきた「思考」と別の思考を取り入れることの難しさを感じるに至りました。
具体的には、集まってアイディエーションしても結果が出ないよね。アフィニティダイアグラムってロジカルシンキングの構造化と何が違うの?、顧客インタビューしたって言っても定量的じゃないもんね、など。そのような疑問たちで積み上げられた壁を越えるのは至難の業でした。
それは、私の知識不足・言語化不足にあるはずで、デザインにはビジネスを人間らしくなるヒントがきっとあると信じ、社会人学生としてムサビに入学することに決めたのです。
「思考」 から 「形あるもの」 へ
ここから、ムサビを通じた新たなキャリアのスタートを切ることになります。修士の入学式では、学長が円形の演台に立ち、360度まわりながら祝辞を述べていることに度肝を抜かれました。
その演台にむかうランウェイには、名作椅子が飾られていましたし、キャンパスを歩くと、あちらこちらで学生が「形あるもの」(タンジブルなもの、手に触れられるもの)を制作していましたし、今まで過ごしてきたビジネスの世界には全くない景色でした。
そもそも、「形あるもの」をつくる経験を課さずして、本質には辿り着けないのでは、と思い、自身の力で椅子をつくることにしたのです。
それは、そう簡単ではありませんでした。誤解を恐れずに言うと、今まで解いてきたどんな経営課題よりも答えを導くのが難しく、つまり並大抵の努力で作れるものではありませんでした。
何か形あるものをと、椅子を作り、修士修了制作展で展示をしましたが、多くの訪問客の方の反応を見るに、その椅子には人々を魅了する美しさが備わっていないことに気づかされました。そうして、足りないスキルを補うために、博士進学を決意したのです。(詳しくは、こちらをご覧ください)
「形あるものを作る」から「美しいものを形作る」へ
ムサビの博士では、「美しい椅子を作る」ことを目指します。もちろんただ作るだけではなく、その行動の意味や経験の有用性を明らかにします。さらに、ビジネスの世界において活用できるのか、ビジネスの世界との接点を、経営学の研究を行うことになります。
博士3年間の研究活動と制作活動により明らかにしたことは、「美しいものを作る」スキルがイノベーションの創出を行うビジネスリーダーにとって重要なスキルであるということでした。創りたい未来を思い描き、それを美しいと感じられるものに転換する力です。
ここに至るまでの社会人美大生としての5年間は、振り返ると長かった、、、と感じますが、濃縮された時間でした。ムサビに通わなければ5年でたどり着かなかった。もしかすると、一生たどり着かない結末だったかもしれません。
これから
私は、探求のきっかけとなった「イキイキと人間らしく。」という気持ちにこだわって生きてきました。自身の人生のコンセプトとして、ビジネスを人間らしくすることで新たな文化を切り拓くことを掲げています。それを実現するためにイキイキと活きる力によるイノベーションを証明することを目指し、キャリアを歩んできたわけです。
これは、5年前の社会人美大生のスタート時に言語化したものです。5年の歳月を経て、イキイキと活きる力はイノベーションに寄与すること、そして美しいものを形作ることによりイキイキという感情が生まれることを示すことができました。
まずは。
もがいて。もがいて変わってきた。それによって見出すことができた結末を、ビジネス界の多くの方に知ってもらいたい。そう考えて、博士のゴールを博士論文にすることをやめました。博士論文は読者が学術界のコミュニティに限られてしまうからです。
そこでビジネス書として上梓することを目指してもがいてきました。出版社の編集者さんとのご縁もありまして、無事に本屋さんに並べてもらえる本をつくりあげることができました。社会人美大生としての5年間だけでなく、これまでの人生で考え続けてきたことも含めて、学びのすべてを一冊にまとめています。
この本を手に取ってくださった多くの方と、この領域のコミュニティを広げていきたい。ビジネスとアートをつなぐことで、ビジネスの世界でもイキイキと人間らしく仕事に携われる方が増えると良いなと切に願っています。
さらに。
創りたい未来を思い描き、それを美しいと感じられる形あるものに転換する。そのスキルを持ったビジネスリーダーを増やすだけでなく、さらにもう少し先の未来を見据えています。
今後は、現ビジネスリーダーに対してだけでなく、未来のビジネスリーダーをつくっていくことも視野に、小中学生の未来につながる手助けをしたいと考えています。
これまでも人生の節目節目で二択で悩んだら挑戦することを選択してきました。またこれからも困難にぶちあたるかと思いますが、変わらず挑戦を続けていきたいと思います。
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