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心の五感のセンサで提案することが真のユニバーサルデザイン|赤池 学さん

8月17日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第14回の授業内にて、ユニバーサルデザイン総合研究所代表の赤池学先生のお話を聴講しました。

「Design for ALL」という言葉を掲げ、多様な市民にとってシェアできるものから、生態系を意識したところまでシェアできることを重要と唱えておられる。そのDesign for ALLを構築するために重要なのが、以下であるとのこと。

意味と価値のイノベーションを通じ、ステークホルダーとの補助線を引き直し、新しい価値の連鎖を想像する。

ユニバーサルデザインを定義する要件として、一般的には10の要件があるそう。セーフティ、アクセシビリティ、等の機能性や、サステナビリティ等の持続可能性など体系的に定義されている。

一般的にユニバーサルデザインでXXをデザインして欲しいというご依頼がクライアントからある場合は、段差をなくすなどの機能性を追求するケースが多いが、それだけで本当にものが売れるのか?と問いを設定し直し、オリジナルの提案をしたエピソードを話してくださいました。滋賀県の和菓子屋さん「たねや」の案件です。そもそも和菓子を作られてきた想いを大切に、商品の個性を大切にし、その和菓子が魅力的に感じられそして多く売れることを大切にした提案としたそうです。さらにソフト面のユニバーサルデザインのご提案も兼ねたそうで、接客員さん向けのユニバーサルデザインの考え方の導入・研修をご提案したということでした。ハードだけで解決できない部分をソフトでも補い、補うどころか更に良い体験をお客様に提供できることにつながるのではと思います。

ものづくりにおける「21世紀品質」開発の循環図というものを紹介してくださいました。これまで特にデザインについてはHARD WARE(技術基盤がもたらす品質)だけだったところに少しずつSOFT WARE(アプリケーションがもたらす品質)も含むようになってきたことで、HARD ・SOFT両面でデザインすることを望まれ、先ほどのような提案をされたことにもリンクしています。赤池先生はさらに、その循環図にSENSE WAREとSOCIAL WAREを足したとおっしゃっておられていました。SENS WAREは五感と愛着に基づく品質であり、SOFTで使い勝手が生み出されたものに五感と愛着を付加するという。さらに、愛情・愛着・愛嬌を生み出すことでSOCIAL WAREは公益としての品質へと繋がり、それによって新しい価値やビジネスモデルを生み出すという循環図だとのことでした。

今のこの時代、ユーザを越えたステークホルダーに対して価値を提供することが、今後のデザイン・クリエイティブに重要だと語られている。その上で、SOFTから次の循環先であるSENSEは非常に重要だと語られています。心と五感に訴えかけるもの、感性価値に訴えるものを生み出せることが重要だということを感じます。

更に、ユーザにとって五感に刺さるものはもちろんですが、提供する側・企業サイド自身が、心の五感のセンサを大事にしながら、バックキャスティングで作るべき未来を描き、それを実現していくことが重要になってくるとも語られていました。

本講義を受けるまでのユニバーサルデザインの印象は、やはりどこかHARD中心のデザイン規則の印象ですが、心の五感のセンスを作り手も受け手も大切にしながら提案していくことが。この時代のユニバーサルデザインではないかと、そう感じました。

最後にひとつ、議論になっているLAWSONの新しいロゴです。可視性等の観点で問題視されていますが、五感として心地よく感じるのが私の印象です。果たしてこのデザインは、この時代のユニバーサルデザインでしょうか?

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