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ゲームを作るために会社を作りました

2022年の5月にフツララ合同会社を設立しました。(社員は自分1人でも呼び方はなぜか"合同"会社です)

活動開始は8月頃の予定で、"CultureHouse"というタイトルのゲームを開発していきます。(会社の名前は覚えなくてもゲームの名前は覚えてくれると嬉しいです)

ゲームやアプリを作ることは一生続けていきたいくらい好きですが、仕事は作ることの後についてきたと思っているので、会社を作るのもビジネスというより開発活動の延長と考えています。
起業というとビジネスに対する意識の高い人がするイメージもありますが、個人でゲームやアプリを作っている人の場合は、その活動の一部として会社を作るという選択もあるのではないかと思います。

この記事では、個人開発者の視点から、会社を始める動機と会社設立の手続きについて書こうと思います。

開発環境やツールとしての会社

作りたいものを形にするには技術や知識だけでなく、そのための環境も必要だと考えています。
そんな環境が偶然出来上がる可能性は低いので、自分で作ってしまった方が実現できるアイデアの幅や、スケールの限界が広がりそうです。
それが会社を始める理由の一つです。

会社を始めるもう一つの理由は面白そうだからです。
言葉にすると軽いかもしれませんが、何かを始める動機として「面白そう」は「必要」や「義務」よりも強いと思っています。

例えば、3DCGソフトやゲームエンジンを使い始める理由が「仕事や就職に必要だから」という人と「面白そうだから」という人がいたとすると、後者の方が積極的にいろいろな機能を試して使い方を広げていけそうな気がします。

パソコンやスマートフォンもそうだったと思うのですが、「面白そう」から始めたことが、後で大きな意味を持つことは多いと思います。

というわけで会社を作ってみる

最初に会社形態を株式会社にするか合同会社にするかを決めます。

株式会社は株式を発行して資金調達できるメリットがありますが、株主総会や決算公告の義務などがあって運営に手間がかかりそうです。
それに、株式の保有比率で議決権が決まる仕組みは、資本が一番大きな力を持つという意味でインディーズ(独立系)の精神にいまひとつそぐわない気がします。

合同会社は株式会社に比べて歴史が浅い会社形態ですが、構造がシンプルで運営の自由度も高そうです。
意思決定の仕組みが内部で完結するのは、独自性や創造性が重要なインディーズの活動には適しているように感じます。

とはいえ、ゲームエンジンや3DCGソフトを選ぶのと同じで、会社形態も仕様だけ見ていてもわからないことが多いです。
必要があれば後で組織変更もできるので、とりあえず身軽で自由度が高そうな合同会社を作ってみることにします。

登記申請の準備

日本の法律上は法務局に登記申請をして、受理されると会社を設立したということになるようです。

専門知識がなくても会計ソフトの弥生やFreeeが提供しているWebサービスを使うと、会社設立の手順を案内してくれて、フォームを埋めていくだけで法務局への提出書類が出来あがるので簡単です。

法務局へ行かずに申請までオンラインで完結する方法として、デジタル庁の法人設立ワンストップサービスという仕組みもあります。

今回は法務局へ行って登記申請をするという体験もしてみたかったので、データではなく物理的な書類を提出することにしました。

定款

会社の原則として商号や事業目的、出資金などをまとめた文書を作ります。

定款は紙か電子署名されたPDFファイルをCD-Rに記録して提出するのですが、CD-Rだと紙の定款に貼る4万円の収入印紙を省略できるので、久しぶりにCD-Rを買いました。

前述の法人設立ワンストップサービスを使うとCD-Rも不要になるようです。

商号

会社の名前です。
"合同会社"は前につけても後につけても良いのですが、後につけるケースが多いようなのでフツララ合同会社にしました。
アルファベットでの表記はfuturala LLCになります。

フツララの由来はジオメトリック・サンセリフの代表的なフォント名でもあるラテン語のfutura(未来)です。
アプリの個人開発を始めた2012年頃に、いつか会社名にしても良さそうな名前として考えたのですが、10年経って本当に会社の名前になりました。

事業目的

フツララ合同会社の事業目的は次のようにしました。

  1. ゲームソフトの企画、制作、販売

  2. アプリケーションソフトの企画、制作、販売

  3. 画像、映像、音楽など、各種コンテンツの企画、制作、販売

  4. 前各号に付帯関連する一切の事業

ゲームやアプリの定義に当てはまらないものを作りたくなる可能性もあるので、3の項目を入れています。

社員及び出資

合同会社は出資者が経営者を兼ねていて、社員という呼び方をします。(従業員という意味の社員と言葉は同じですが別の意味なので紛らわしいです)

社員が出資したお金は合同会社の資本金になります。
資本金は1円でも会社を作れますが、低すぎると銀行口座の開設を断られることがある(悪用を防ぐため)ようなので、今回は100万円にしました。

印鑑

オンラインの登記では去年から印鑑の登録義務がなくなったようです。
法務局の窓口で登記申請をする場合、代表者印は必須なので、ついでに(使わない可能性もありますが)銀行員と角印も作っておきました。

耐久性も耐熱性もそこまで求めていませんが、どうせ作るならかっこいい方がいいのでチタン製です。

出資金の振り込み

定款に書かれた金額を出資していることを証明するために、出資金を代表者(自分です)の口座に振り込んで明細をプリントします。
自分の口座から同じ口座へ直接振り込むことはできなかったので、銀行の窓口で100万円を引き出して同じ口座に振り込んでもらいました。

手続きが儀式めいているので、法人という人格を呼ぶ儀式かな?と書こうと思ったらtwitterで先に言われてしまいました。

登記申請

準備ができたので法務局に行って登記申請をします。

登記には登録免許税が必要で、資本金が857万円未満の合同会社の場合は6万円の収入印紙を申請書に貼ります。(株式会社だと最低15万円かかります)
その他の出費は印鑑とCD-Rと交通費くらいなので、登記費用の中ではこの6万円が一番大きかったです。

窓口に書類を出すと職員の人が一通り確認して、『登記完了予定日のお知らせ』という紙をくれます。申請内容に問題がなければ10日後には登記が完了しているということでした。

印鑑カードと登記事項証明書をもらう

登記完了予定日を過ぎたので、印鑑カードと登記事項証明書をもらいに再び法務局へ行きます。

最初に印鑑カードを発行してもらってから、受付機に印鑑カードを入れて、必要な証明書の種類と数を選び、1通につき600円の収入印紙を買って窓口へ行くと登記事項証明書をもらえます。

証明書を見ると確かに、フツララ合同会社が令和4年の5月2日に設立されたということが記載されていました。

税務署と自治体にオンラインで設立届を出してみる

登記が完了したら税務署と都道府県と市区町村に設立届を出します。
3ヶ所も回ると1日では終わらなさそうなので、法人設立ワンストップサービスを使ってオンラインで申請してみました。

届出はパソコンのブラウザから行えますが、認証にマイナンバーカードとスマホのマイナアプリが必要です。

窓口を回るのに比べると時間も手間も節約できますが、届出先ごとに重複する内容の入力を求められるのは一回で済むようにして欲しかったです。
(まだ新しいシステムなので、これから洗練されていくのかもしれません)

経理はDIY

リアル店舗や人を雇う会社の経理は複雑だと思いますが、個人開発は入出金の頻度が少なく、経費の使い道も限られるので、会計ソフトの力を借りれば自分でなんとかなりそうな気がします。

表計算ソフトだと間違えない自信がない、というか100%間違える自信があるので、クラウドの会計ソフトに銀行口座やクレジットカードを登録して、キャッシュレス決済することで帳簿や決算書のミスを防ごうと考えています。

開発資金の管理に慣れることは、将来的に作りたいものをより理想に近い形で作ることにもつながっていくと思います。

とはいえ素人なので、最初の決算期に「うわあ」となっている可能性はあります。

これから

7月末に現在の仕事の区切りがつきそうなので、8月には有給を消化しながら"CultureHouse"を作り始める予定です。

タイトルから想像される通り、"CultureHouse"は一つの家を中心にしたゲームです。
森の奥に建てられたモダニズム建築の邸宅を舞台に、少し変わった或る仕事をしながら、静かに変容していく束の間の日々と、終末の訪れを繰り返し体験できるゲームにしたいと考えています。

主流とは異質で、普通の会社では企画が通らないタイプのゲームだと思いますが、だからこそインディーズとして作る意味があるとも感じます。

そんな体験を求める人が世界中に何人くらいいるのかはまだ分かりませんが、"CultureHouse"の中でしか味わえない、心地良いような悪いような体験を、遠くない未来にお届けできればと思います。

(会社を作ってみてどうだったか、ということはいつか改めて記事にします)

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