見出し画像

人生解読

まあいともあっけなく
そのときがやってきた
だれもじゅんびできてなかった
だってニュースでは
「衝突は明日となる見込みです」
って
他になにも言わなくなったテレビで
言ってた
だから
たまたま道端で会った
そこまでとくべつでもないともだちと
じゃあきょう
さいごに海をみにいこうって
さいごとかいいながらさ
あしたまでになんとかなるんじゃないかって
あした目がさめたら
こんなこと嘘でした夢でしたって
しらない機械がなんとかしてくれて
よくわからないけどなにかが起きて
今までがまたつづくんじゃないかって
わたしたちみんな思ってた
おもってたよ
 
電車はもう走らせる人いないし
道路はすっごい渋滞だし
まともな人は大切な人と過ごしている
東京からどうやっていこうかなって
なんとなくぶらぶら歩いてて
めちゃくちゃに汚れた道をふたりで
そしたら
西の方がさっきまでより
ずっと橙に明るくなってさ
まわりが騒がしくなって
パニックになった
こんなときでも
天気予報は外れる
 
海にすら
いけないのかあ
 
なんのじゅんびもできてなかった
わたしも
ともだちも
だれも
それで
いまからでもなにかできないかって 
いやこんなことは嘘できっと間違いでそして
人類は絶滅するんだ
地球上のほとんどの生命といっしょに 私は
しぬんだって
わかりながら
ともだちもわたしも
もうなんにもいえなかった
泣くことすら

だから
抱きしめるしかなかった
いままでそんなに
話したこともない
ともだち
趣味も思想も
よく知りもしない
体の芯があったかくって
しめっていて
小刻みにふるえていた
頬にふれる髪がやわらかくて
通勤ラッシュで触れてくる髪は苦手だったけど
もうなくなるものっておもったら
かたく抱きしめあうしかなかった
 
いざ
いざいざ
その時よ!
わたしたち
なんの準備もできませんでした
 
見えないくらい眩しくなって
ぜったいに離れないように
ともだちとかたく抱き合いながら
宇宙に放り出されたのがわかった
これが
死かあ
とか思って
死ぬ時ってどんな感じなんだろう覚えておかないと
とか考えている自分がおかしくて
最期のさいごに
よく知りもしない
いま感じていることわかりもしない
そんな人といっしょにいる
こういうものだった
わたしの一生
なんの準備もできませんでした
ただ痛みが怖くて
ともだちと
深いキスをした
だいすき と
ふたりで何度もつぶやきながら
全力で生にすがりつき
からだが外から崩れていく感覚は
予期していたほど痛くはなかった

短歌や散文詩、曲を作ります。スキやフォローしてくださる方本当にありがとうございます、励みになります。ブログもやってます。