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ハンナ・アレント 全体主義という悪夢

読書をしているとハンナ・アレントという哲学者がよく引用されているを目にする。

「悪の陳腐さ」

本当の悪は「思考停止した凡人によってなされる」、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺計画において、主導的な役割を果たしたアイヒマンの裁判を傍聴したアメリカの政治学者ハンナ・アレントはそう結論づけた。

「悪とはシステムを無批判に受け入れることである」

つまり、思考停止した状態で受動的になされることにこそ「悪」の本質があるのではないかと指摘しているのだ。

ハンナ・アレントはナチズム、スターリニズムなどの全体主義国家の歴史的位置と意味の分析から現代社会の精神的危機を考察した哲学者である。

今もなお、ハンナ・アレントがよく引用されるのは、こうした「無批判人間」がますます増加している現状があるからかもしれない。

牧野雅彦の著書「ハンナ・アレント 全体主義の悪夢」はそんなハンナ・アレントの思想を端的に解説した本である。

ナチスの犯行に関わった多くの人々からは、まっとうな感情や感覚、正常な判断力が失われていた。

ナチスの暴政はユダヤ人の抹殺にいきつく運動に多くのものを巻き込むことによって彼らの人間性を奪い、人間を人間として成り立たせている基盤そのものを破壊した。

こうした人間破壊の現象をアレントは「全体主義」と名付けた。

今やナチスやスターリンの失敗によって「全体主義」は生まれないのかといえばそうではない。

グローバリゼーションの名の下で進められているヒト・モノ・カネの国境を超えた移動や交流は、経済的な格差の拡大やそれにともなう民族、人間間の対立を生み出す。

科学技術・テクノロジーの進展は、それまでの人間のあり方を変容させ、人間の基盤をぐらつかせている。

世界を取り巻くヘイトや陰謀論、これまで聞こうと思わなければ聞けなかったものも簡単に手の上で聞ける時代である。

人々の不安や対立を煽り、思考停止にさせ、コントロールすることはどの支配者もやっていることである。

支配者の「正義」が間違った方向にいけば、歴史は繰り返すだろう。

先日、とあるコンサートのグッズ売り場で、誘導員や規制線がないのにも関わらず、きれいに並び、待つ日本人の姿を見た。

日本の教育の素晴らしさを思うと同時に、怖さも覚えた。

はみ出る人を作らないのが日本の教育である。

フランスでは年金の受給開始年齢が2年繰り上がるという政府の決定に対して暴動が起きた。

内乱といっても過言ではない激しさであった。

日本は5年繰り上がるという議論に対しても、なんら無風状態である。

異次元の少子化対策についても、その財源は社会保険が基本となるとの報道もある。

国会前は静かなもんだ。

思考が異次元過ぎて追いつかないだけなのか。

もはや何も考えれない思考停止状態なのか。

であれば、日本は民主主義の皮をかぶった「全体主義国家」になりつつある。

まさに支配者層が理想とする「形」ではないだろうか。

この時代にハンナ・アレントが注目されている事実に目を向けなければならない。

「自分で考えること」を放棄してしまった人はだれでもアイヒマンのようになる可能性がある。

私たちが自由と民主主義を守るためには、システムを批判的に思考することが大切なのである。

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