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世界はまだまだ広いと感じた日。

仕事中にコンビニで一休みをする。お昼ごはんは家から持ってきたおにぎりだ。水を買おうとお店へ向かうと、出入り口に大きなおにぎりのような男性が立っていた。久々に見るレベルで大柄な男性のシルエットが、ぼくに「ばくだんおにぎり」を連想させた。「シャケなのか、昆布なのか、あるいはからあげなのか」とこちらが具材の妄想をしていると、その男性はちらっと後ろに停めてある黒いSUVを一瞥した。なるほど、この車でここまでやってきたんだと私は思った。それにしても、この体格からしたら少し車が小さいのではないか。乗り降りが大変だし、運転時も窮屈なのではないか。そんなことは余計なお世話だと我に返ったぼくは、店内に入って飲料コーナーへ向かった。

 水を買って店を出ようとすると、さきほどの男性もレジで何かを買っている最中だった。特に気に留めることもなく、車に戻ったぼくは、しばらくしてからコンビニを出た。すぐにトンネルに入り、走っていると、追い越し車線にもかかわらず前の車が少し遅く感じた。よくよく見てみると、前の車ではなく、一つ前を走っている車が少し遅いようである。すると、トンネルを抜けてすぐ前の車が左折して、ゆっくり走る車が目の前にやってきた。鮮やかな黒のSUVだ。「まさか」と思っていると、後ろのガラスのところに小さなステッカーが貼られているのがわかった。何か文字が書いてあるのが見にくく、少しずつ車を詰めてステッカーを覗き込む。

「横綱 in CAR」

あいつやん。「ばくだんおにぎり」のあいつやん。
自分が横綱くらいに大きいよという自覚なのか、あの横綱の誇りを自分も持ち合わせているぞという自負なのかはわからない。わかっているのは、さきほどコンビニにいた男性が横綱で、目の前の車にその横綱が乗っている。その事実にぼくはなぜか興奮を覚えた。そして、横綱だって少し小さめの黒いSUVに乗るし、しっかり安全運転なのだ。
世界はまだまだ広い。
何かとてもいいものを見せてもらったと思える時間だった。

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