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いじめがきっかけで不登校に 学校と生徒で「認知差85倍」の理由【全文公開】

 不登校の児童生徒数は29万9048人――。10年連続で増加し、5年前と比べて倍増している不登校。なぜ不登校がこれだけ増えたのか。不登校を20年取材してきた本紙代表・石井しこうが考える、不登校増加の背景にある2つの要因とは。

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 新たに不登校の数が発表されました。小中学生の不登校児童生徒数は29万9048人と過去最多を更新。10年連続で増加しており、5年前と比べるとその数は倍増していました。なぜこれだけ不登校が増えたのか。取材から見えてきた増加の背景に2つの要因が考えられます。

 1つは、「コロナ禍の影響」です。公立中学校の教員は「ここまで不安に揺れる子どもたちを見たことがない」と、コロナが与える子どもへの影響を危惧していました。コロナ禍が始まった2020年は、部活や学校行事がなくなりました。そうした行事のなかには「一生に一度だ」と子どもが楽しみにしていたものもあります。しかし「部活がなくてつらい」と言える雰囲気もありませんでした。こうした精神的ストレスが不登校や行きしぶりとして顕在化するのは「直後」とはかぎりません。東日本大震災では震災の数年後に顕在化した例もあり、子どもたちにとっては今こそ「コロナ禍」なのかもしれません。

 もう1つが、「生きづらさの低年齢化」です。「フリースクール寺子屋方丈舎」(福島県)の代表・江川和弥さんは「生きづらさは中高生以降の問題だと思われていましたが、小学生でも人間関係や学校生活のなかで生きづらさを感じる子が増えている」と語っています。

 小学生がいま苦しんでいることの1つが「同調圧力」です。「チャイ着運動」というチャイムが鳴る前に着席する運動が小学校で流行っています。ある小学校教員は「年々、子どもに求める規範意識が上がっている」と悩んでいました。コロナ禍、そして生きづらさの低年齢化が不登校増加の背景にあると私は見ています。

不登校の理由 いじめが最少

 不登校になる理由として、もっともすくないものは「いじめ」だということをご存じでしょうか。文部科学省の調査によれば不登校理由のうち「いじめ」は0・3%のみ(3つまで選択可の複数回答)。一方、同じ文科省調査でも当事者に聞くと結果が異なります。約2000人の不登校生に聞いたところ、「いじめ」を理由に挙げた小学生は25・2%、中学生でも25・5%いました(複数回答)。

 これだけ結果がちがうのは、回答者が「学校」と「当事者」で異なるためだと考えられます。より踏み込んで言えば、子どもへの重大ないじめの大半が見過ごされてきた可能性が高い、ということです。「階段から突き落とされたことを担任に相談したら、『そんなことを気するんじゃない』と一蹴された」、「ばい菌扱いされていることを相談室で打ち明けたら『負けてどうする?』と言われた」など、いじめで苦しむ子どもが必死の思いで相談したにもかかわらず、学校が取り合ってくれないという事例をいくつも取材で聞いてきました。

 こうした状況はいち早く変えなければいけません。また、いじめは「問題の一端」にすぎません。子どもからの訴えは無視されやすいのです。そこをあらためて考え直さなければいけません。(本紙代表・石井しこう)

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