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キング・イン・ザ・ミラー(2010/10/16)/清涼院流水【読書ノート】 231211

清涼院流水の小説作法』(2011/9/24)の中で、著者ご自身の自信作としてオススメしていたので読んでみました。

ご参考までに告白しますと、これまでに発表した約70冊の本の中で、作者の立場から揺るぎないベスト3だと思えるのは、既に何度か話に出た『キング・イン・ザ・ミラー』、『コズミック・ゼロ』、『成功学キャラ教授』の3作品です。執筆時には毎回、どの作品もベストにするつもりで書き上げているのですが、時間をおいてふり返った時、まったく評価が変わらないのが、右記の3作です。
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ぼくの中で、『キング・イン・ザ・ミラー』、『コズミック・ゼロ』、『成功学キャラ教授』3作の評価は、死ぬまで変わらない、という強い確信があります。ぼくが死ぬ時に、この3作がそのままベスト3でも、なんの不思議もないほどです。ぼくが今後何年生きても、あと何十作品も発表しても、現在のこのベスト3が将来のベスト5から外れることはないと思っていますが、できればベスト5の残りの2席を占める作品を書いてみたいですし、次回作がそうなるように、2年前からこつこつ準備を続けています。

清涼院流水の小説作法

『キング・イン・ザ・ミラー』は、ぼくが今まで書いた中で最高の、一生に2回は書けない本だと思っていますが、この作品の意味や狙いが伝わらない人も多いだろうな、というのは、執筆当時から実は覚悟していました。 『キング・イン・ザ・ミラー』こそが最高の作品だとぼくが思えるのは、「小説とビジネス書と音楽本の融合を理想的に果たせたこと」や「マイケル・ジャクソンさんの永年の誤解を解く、ジャーナリスティックに価値のある内容にできたこと」だけでなく、「何度でも読み返せる文体」と「どのページを読んでも楽しめるつくり」に辿りついたこと、「英訳すれば、そのまま海外の読者に楽しんでもらえる内容にできた」などといった理由が挙げられます。ただし、これらはすべて作者側の自己満足であることも、ぼくは充分に自覚しています。刊行直後の取材でお会いした記者の方から「この作品の志の高さには驚嘆しましたが、大衆に届くのには、かなり時間がかかるかもしれませんね」と言われ、その通りだと思いました。
なお、『キング・イン・ザ・ミラー』は、実はミステリーとしても自分の最高の作品だと思っています(と書くこと自体が既にネタバレなのですが、ミステリーだと気づかない人があまりにも多いので、あえて書きました)。なぜなら、それまで謎とすら思っていなかったはずの「ある言葉」が、最後の章で、まったく別の意味を持ち、すべての読者の世界を反転させるからです。作者が説明しすぎるのは無粋なので、これ以上は書かないでおきますが……

清涼院流水の小説作法

今ではもう四半世紀近くも前となる、ある日のできごとを、ぼくは、つい昨日のことのように、鮮やかに思い出せます。1987年9月19日。
当時中学1年生だったぼくは、部活動を終えた学校帰りに自宅の最寄り駅・阪急電車西宮北口(にしのみやきたぐち)駅でホームに降り立った時、駅を埋め尽くす信じられないほどの人込みに圧倒されました。
駅の近くにはプロ野球チーム・阪急ブレーブス(現・オリックス・バファローズ)のホームグラウンドであった西宮球場があり、プロ野球の試合やオールスター・ゲーム、競輪などのイベントが行われる際にはいつもたくさんの人であふれていたものですが、「なんだこれっ!」と思わず声に出してしまうほど異様な群衆の熱気を体験したのは、あとにも先にも、あの時だけです。
それは、マイケル・ジャクソンのコンサートを観るために集まった人たちでした。彼自身初のソロ・コンサート・ツアーとなる『バッド』ワールド・ツアーを日本から開始したマイケルが、東京の後楽園球場(現・東京ドーム)に続いてコンサート会場に選んだのが、ぼくの実家の近所にある西宮球場だったのです。
当時のマイケルと言えば、アルバム前作『スリラー』がレコードセールスの世界新記録を達成してギネスブックに認定され、新作『バッド』が世界25か国で初登場1位を記録した直後であり、その華々しいキャリアのまさに絶頂を極めていた時期でした。
その夜のコンサートのものすごい熱狂ぶりは、スタジアムから徒歩10分ほどの距離の実家まで響いてくるほどでした。
それは中学1年生の少年にとっては「ちょっと怖いな」と感じるほどの狂騒で、記憶に深く刻みつけられた一種のトラウマ的な、ぼくの「原体験」となりました。
あれから四半世紀近くもの時が流れ、さまざまな紆余曲折を経て、まさかあの「マイケル・ジャクソン」が他人とは思えないほど大切に想える存在となり、自分が彼の小説を書くことになろうとは......不思議な運命の悪戯です。
親友でもあるカナダ人マンガ家のカイ・チェンバレンに本の表紙と著者イラストを描いてもらうのに際し、ぼくはマイケルの歴代の衣装写真を資料として準備したのですが、その中から妻が「これがいいんじゃない?」と先入観なく選んだ服は、なんと、偶然にも、マイケルが『バッド』ツアーで着ていた衣装でした。その瞬間、過去と現在の自分が結ばれたような感覚に襲われました。
この作品『キング・イン・ザ・ミラー』は、マイケル・ジャクソンの生まれてから死ぬまでを描いた小説であり、各章ごとに設けられたテーマに沿って成功哲学を学べるビジネス書でもあり、そして、もちろん、マイケルの傑作群について語った音楽本でもあります。
読むにあたっての予備知識はいっさい必要ありませんので、マイケル・ジャクソンの音楽と人物を心から愛する方たちはもちろん、謎に満ちたマイケルの人生に興味があるという方や、歴史上の偉人の人生から成功哲学を学びたいという方には、どなたにも、きっと楽しんでいただける内容になっていると思います。なにかの要素が引っかかった方は、ぜひご一読ください。
清涼院流水

かつてこんなにも人を好きになったことがないかも......
というほど今では愛しく想えるミスター・マイケル・ジャクソンに、本書を捧げます。 清涼院流水
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栄光、失墜、そして、新生----。「MJ」(マイケル・ジャクソン)の繊細でミステリアスな魂を描き出した物語。本書は、これまでの著者のファンだけでなく、マイケル・ジャクソンを愛する人、マイケル・ジャクソンをもっと知りたいと考える多くの人々に、読んでほしい一冊です。


この物語は、マイケル・ジャクソン、彼の1歳年上の兄(マーロン・ジャクソン/Marlon Jackson)、そして著者自身の視点から綴られた自伝風の小説だ。マイケルが経験した人種差別の苦しみは、彼の兄弟やファンにも深く感じられていた。小さな頃から、彼は常人を凌駕する歌唱力とダンスの才能を発揮し、兄弟の中でも際立っていた。この才能は彼の絶え間ない努力の賜物であり、兄弟たちはこれを認め、尊敬していた。
頂点への道を歩んでいたマイケルは、全米のトップヒットを連発するようになると、メディアによるゴシップ記事のターゲットとなった。根拠のない噂や誤解が彼を苦しめ、ファンはこの状況を理解しながらも、メディアの影響力の前では無力だった。マイケルの人気は浮き沈みを繰り返し、彼自身もこのプレッシャーに悩まされた。
人種差別撤廃を願い、そのために努力していたマイケルの夢が、オバマ大統領の誕生と共に実現の兆しを見せた時、彼は不慮の事故でこの世を去った。彼の死は、彼の夢が成就する瞬間と重なり、その速さと意味深さには深い哀悼の念が込められている。
マイケルの才能に嫉妬し、低俗な人種差別によって彼を迫害した者たちがいたが、彼の人生はそれ以上の意味を持っていた。彼の話は、彼の偉大さと共に、人種差別の残酷さをも浮き彫りにする。読者は、彼の才能と彼が直面した試練に対して、静かな哀悼を捧げたくなるだろう。

目次
Introduction 才能の謎
Chapter1 成功の謎
Chapter2 戦略の謎
Chapter3 再起の謎
Chapter4 栄光の謎
Chapter5 羨望の謎
Chapter6 失墜の謎
Chapter7 新生の謎
FinalChapter 運命の謎
Outroduction 天意の謎
Anecdote 真実の告白

#ネタバレ

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