見出し画像

「世帯分離をすれば安くなる」そろそろオブラートに包みましょう

青空に横並びの二世帯住宅


こんにちは。

名古屋で社会保障制度の調査代行をしている社会福祉士の稲山です。

好きな家事は「食器洗い」です。



世帯と世帯分離


世帯
・・住居と生計が同じ人の集まり。

世帯分離・・住居は同じだけど、生計は別々なので住民票の世帯も別々にすること。

※世帯分離は、親と子が行う場合が多いです。




世帯分離のメリット


世帯分離は、生計が別々なので住民票の世帯も別々にします、という単なる事務手続きです。

しかし、一定割合の当事者や福祉関係者(特に高齢者福祉の関係者)にとって世帯分離は、経済的負担を軽減するための「スタンダードな手段」になっています。

その理由は、日本の税制度の仕組みにあります。その仕組みとは、たくさんお金をもらっている人からはたくさん税金を徴収して、少ししかお金をもらっていない人からは少ししか税金を徴収しない、というものです。

収入が少ない高齢の親であっても、収入が高い現役世代の子と同じ世帯だと、国民健康保険料(もしくは後期高齢者医療制度の保険料)も住民税も介護保険料も高額なまま。

世帯分離をして収入が少ない親だけの世帯にすれば、諸々の保険料や税金の負担が軽くなるというわけです。




世帯分離で気を付けること


しかし中には、世帯分離をしても保険料や税金の負担が軽くならない世帯もあります。

収入が少ない人が世帯にいることで既に保険料や税金の負担が軽くなっていた場合、世帯分離を行うと収入が高い人がいる世帯の保険料や税金の金額が上がります。

世帯毎にかかる保険料や税金は、世帯分離をすると二世帯分かかります。

①②を併せた結果、世帯分離をしたことでトータルの保険料や税金の負担が重くなってしまうということも考えられます。

一般的に世帯分離をすれば保険料や税金の負担は軽くなる、しかし中には負担が重くなるケースもある、ということを覚えておいてください。




世帯分離の手続きの方法及び必要な物


世帯分離の手続きの方法及び必要な物は、お住まいの市区町村の窓口に確認をしてください。

弊所が一つの区、二つの町(それぞれ県は異なる)に確認をしたところ、いずれの地域においても、窓口で手続きをする人が身分証明書を持参し、届出書を記載すれば手続きは完了だそうです。世帯分離をするにあたって生計が別々であるという証明は特にしなくてもいいとのことでした。




「不適切な世帯変更届の届出をしないよう、ご注意ください」


世帯分離とは、あくまで生計が別なので世帯を分けます、という事務手続きです。結果的に保険料や税金の負担が軽くなることがある、ということです。

しかし、保険料や税金の負担が軽くなるから世帯分離をしよう、という順序が逆のケースが増えてきているようです。それに伴って、それがさも当然のことのように考える人も増えてきています。

新潟市「不適切な世帯変更届(世帯分離・合併、等) の届出をしないよう、ご注意ください」
P1/2


新潟市「不適切な世帯変更届(世帯分離・合併、等) の届出をしないよう、ご注意ください」
P2/2


こうした内容の文書は他の地域では見たことがありません。しかし「不適切な世帯変更」が今後も行われ続けると、他の地域でも世帯変更のチェックが厳しくなることが考えられます。




本音と建前


新潟市が今回のような文書を出した理由は、本音と建前の「建前」を間違えないでね、ということではないでしょうか。

新潟市としても、世帯分離をすることで保険料や税金の負担が軽くなる世帯があることは当然承知をしています。しかし、世帯分離が単なる事務手続きである以上、保険料や税金の負担軽減は、あくまで手続きの「結果」であって、それを「前提」としてもらっては困る、ということです。

世帯分離を含めた様々な社会保障制度を利用をするにあたっては、その趣旨と恩恵は正確に把握をしておかなくてはいけません。世帯分離が単なる事務手続きである、という趣旨を理解せずに、保険料や税金の負担が軽くなる、という恩恵を前提に手続きを進めてしまうと、市区町村としても何らかの対応を取らざるを得なくなってしまいます。




補足


夫婦での世帯分離

・夫婦での世帯分離ができるか否か、手続きの方法及び必要な物は地域によって異なります。※夫婦での世帯分離を認めていない地域もあります。

・夫婦での世帯分離を認めている地域であっても、生計が別々であるという証明が必要だったりするなど、親子での世帯分離に比べ必要な書類や手続きが煩雑になります。

・夫婦での世帯分離は親子の場合に比べてハードルが高くなります。

いいなと思ったら応援しよう!