かみなりさまの喉(日記)

 かみなりさまが大きな喉を頭上でごろごろ鳴らしている。
 見上げた毛並みは薄墨のような灰色で、けれど墨のようには濃淡がない。一様に淡く、のっぺりと同じ方へ撫で付けられており、高いも低いも、奥行きが判らないのでまるで自分の座標が狂って感じられた。
 ぶ厚い空気のかたまりの前脚で、町ひとつをぎゅむ、とつかまえて、太く伸びやかな喉をぐんっと反らしているかのようだ。
 ごろごろ、ごろごろ、しきりに鳴る喉元を見上げながら、私はよく冷えた巣穴へ逃げ込む。窓の外に大きな目の瞳孔がぴしゃりと光る。

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