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ふたしき
2022年1月5日 19:41
「ほら、飲んで」 朦朧とする意識の中、黒塊は声の主をたしかめた。砂埃に煙る視界の中には小さな影。 傍に跪く少女が、両手を黒塊に差し出す。手のひらで象る椀の中には水があった。水は先ほど、奴隷商人の男が商品どもに注いで回ったものだ。商人と奴隷の列は数刻ごとに休息をとりながら、オアシスに栄える街を目指していた。ひとり、またひとりと干涸びていく中、これ以上の〈欠品〉は儲けに関わると判断した奴隷商は、貴