026話:靴木型で踵の設計について
既成靴と私の靴との踵の違い
左はこちらで紹介したVASS。かなり小さい私の踵にもフィットした数少ない既成靴です。当初はその踵のフィット感に感動したものでした。
そして右が2011年当時の私の木型。もともと踵のサイズがタイトな VASSよりも一段と小さいことがわかります。
踵の設計について
私は必ず、足より木型の踵を小さく設定します。
青いボールペンで書いた線が私の踵のアウトラインですが、既成靴は踵と同じくらいか、それよりやや大きいくらいで設定しております。なお、こちらは国内のハンドソーンウェルテッドで作っているメーカーで、カカトが従来より小さくフィッティングが良いとされている木型です。
対して、私の木型は踵より木型を小さくしていることがわかります。
なぜ、そのようにしたか?
(お見苦しくてスイマセン)
私の踵を手で握りこんだ画像です。このようにして、思いっきり力強く握りこんでください。いくら強くしても、私の場合には痛みが走らなかった。
手と同様に柔軟に馴染む「革」という素材を、適切な形状で強くフィットさせれば、踵が抜けずに済むのでは?と仮説を検証してみたことがきっかけです。
いくつか試した結果、カカトの内側から土踏まずをくるむようにホールドすることで得られる心地よさは確かにある。・・そう思うのです。カカトは、足にあわせては緩い、骨に合わせて削りだす必要があると確信しています。
人の踵の骨にあたる部分を木型で支え、、その外にある肉や皮の機能は革本来の弾力性に任せるという考え方。そうすることで、足と靴が一体化し、歩く力を効率的に靴に伝達させることに強く貢献します。
踵のフィッティングを既成靴で検証するには?
でも、それって所詮オーダー靴の話でしょ?
そんな声が聞こえてきます。確かに既成ではなかなか、そこまで小さい踵の靴はないかもしれません。個人的には、何故に売っている靴の踵がそんなに大きいのか不思議に感じています。
素朴な疑問として靴工場の方にぶつけたことはあるのですが、メンズの紳士靴を機械で成型する場合、踵の大きさの下限がきまっており、そこに引っかかるためと聞いたことがあります。(本当かどうかは検証できていません)
既成靴で踵が合った靴を探す方法
それでも、あきらめずに探せば、既成の範囲でも皆様の足に踵が合う靴をみつけることができます。その方法として、踵が靴に合っているか簡単な検証法があります。それは。。。
『紐を取り外して履いても、カカトがカパカパ浮かないこと。』
紐靴の場合、締めるテンションがなくとも、素の状態で木型が踵をとらえきれているかがわかります。お店で紐を外すことが難しければ、思いっきり緩く結んでみてください。
もし、歩いて踵に靴がついてくれば、踵は足に合っていることになります。踵から靴に伝達される運動エネルギーは、踏付け部を支点とした、てこの力となり、踵が合っていれば、靴の返りが柔らかく感じられます。
皆様が、そんな靴に出会えることを心から願っています。
気軽にカジュアルに履く方も作る方も革靴を楽しんでいただきたいので、有益な靴や革の情報を基本的には無償で公開していきたいと思います。 皆様のスキやサポートのおかげもあり、何とか続けてこれました。今後とも応援していただければ嬉しいです!何卒よろしくお願い致します!