020話:実験結果 レザーアワード2012受賞

もう一度。こちらが実験前です。

こんな実験をしたあと、、、

こうなりました。

柿渋やヒノキから抽出されたタンニン(鞣し成分の一種)の色が移って多少のムラ感が出ています。また、質感はかなりコシがでており、足をガッシリ支える感じになりました。

ソールはこんな感じです。

思いっきり、土踏まず部分を絞ってインソールの面積を極小にしていますが、こちらは再鞣し処理をしたことにより、アッパーのコードバン自体がしっかり適度な硬さを保ち、第二のインソールとして機能するので、気持ち良いフィット感が得られました。

Japan Leather Award 2012に出展

こちらをレザーアワード2012のアマチュアメンズ部門に出展することに。

出展動機としては、当時は自信があったわけではなく、受賞したいというより別の目的がありました。参加した出展者全員にプロや靴を見て下さった方から、個別にコメントを頂けるということ。

私は、革業界で仕事をしているわけでもなく、一般企業勤務の合間に趣味的に靴を作っており、客観的なコメントをもらえる機会がありませんでした。少しでも多くの方と繋がりたい、それが目的でした。

その結果

アマチュアメンズ部門賞を受賞してしまいました。
その時の感想としては、正直嬉しかったということより、他の靴作品を見て「靴の木型って一流とされるメーカーでもあんまり足本意に練られていない」ってこと。

私は、色んな市販されている既成靴を試して、散々失敗してきましたが、その当時持っていた仮説は、、

「多くの人に合わせようとすると、どうしてもそういう形になる」というもの。でも、このような技術の粋を集めて競うコンペで一品モノとして設計できるのに、他部門で受賞した一流メーカーの靴は、既製品と木型の基本設計に大きな違いが見られなかった。

この靴とか(宮城興業。プロの靴部門レディース部門賞受賞)

この靴とか(スコッチグレイン。プロの紳士靴部門の部門賞受賞)

・この靴も(リーガル)

・この靴も(マドラス製靴)

木型に関して、自分には、どうにも人の足に向き合った設計に感じることはできませんでした。足に合わせるより、「キツイ、当たる」って文句言われないための設計じゃないかと。

その設計が、誰に最適化されていたかというと、50−60代の一流メーカーのエライ人なんですよね。実際にそういう方と合って顔より足見たけど。

そこに、(私のような)今の人の足が無視され続けたってわけ。

いざ、実際に作り手に会って話す機会があり、木型の技術的なことを話そうとしても、「それは特殊な領域だから。。」とか、あまり具体論にいかない感じ。

ひとりの、靴消費者として実感しました。このまま待っていても良い靴木型の既成品は生まれない。だから自分でやるしかない!

学んだこと:

100年の伝統、職人の熟練された技術、情熱。。。批判覚悟で言いますが、こんなの全部テキトーにメディアが理解せずに書いてることです。実際は色んな事情が重なりあって、そういう足に合っていないのが出回っているだけ。

ただ、一つだけ弁護しておきますと、スコッチグレインを除いて(出展者は社長だからね。。)他の出展者は、色んな制限(例えば出すまでの決裁)があって、木型に関しては無難な形に落ち着かざるをえなくて。。

または、入社当初から、「木型は昔のプロが築いてきた。君が手を出そうなど30年早い」っていう空気で、本人もそういうもん。って思わされて今に至ったのではないかとおもいます。たかだか、一般企業勤務のサラリーマンがサークル活動的な時間と労力でできるラストメイキングが、本職のプロができないのは、何らかのメンタルブロックが生じているからとしか思えません。

実際に自分で試して、検証して、改善してみる。こんな単純なことを、愚直にやること。それが何より大切だと感じ、プロに対する引け目がなくなった瞬間でもありました。

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