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怪談04 写真と情

今日のお話は、知人のOさんの体験談を、表現含めて許可を得て書いています。

彼女は現在、会社にお勤めされているのですが、10年ほど前・当時のOさんはフリーランスでデザイン関係のお仕事をしていました。

最初は四苦八苦しながらも、いろんな方の紹介や、直接営業をかけていくなかで、一人分は食べて行ける状況にはなっていたそうです。

そのお客様の中に、彼女が独立してから数年に渡って、依頼をくださっている女性がいました。名前はNさん。年は一回りほど離れていましたが、頻繁に利用してくれることから連絡を取り合うこともあり、何となく距離が近くなっていったそうです。

ただ、このOさんは仕事とプライベートは分けるタイプ。そして、今しているお仕事以外の世界にも興味を持ち、将来的には引っ越しをして、県外で全く別のお仕事をすることも視野に入れていました。

対してNさんは、どちらかというと仕事よりもプライベートを重んじるタイプ。お金は欲しいけれど働くことに興味はなく、そんなことより遊ぼうよ…ということが多かったそう。

何となく仕事を超えた友情を求められているような気がしたものの、時折卑屈な発言もあったことから、Oさんはこれ以上親しくなることはよそう…と思いつつ卒のない対応をしていました。

時は経ち、Oさんは本格的にキャリアアップのために新しい家を探しはじめます。そして、現在の仕事を始めるにあたって新しい人間関係もはじまり、移住先の街並みや仕事先を紹介してくれた友人との時間を、SNSに上げていきました。

当時はまだビジネス用ページのようなものがない時代で、仕事関係者とごく少数の友人との連絡を、ページ一つで管理していたとのことです。

当然、Nさんもそのページを知っていたわけですが、その辺りから、少しずつNさんの連絡が頻繁になっていったのです。

最初は「これまでお世話になりました。お体に気をつけてお過ごしくださいね。」と少しずつ距離をおこうとしていたOさん。しかし、仕事が変わるならば、お客さんとしてではなくプライベートで遊べるよね?県外だけど車があるから遊びに来るよね?と、より距離を縮めようとする会話に困るようになりました。

しばらくして。ついに引越しをする週になり、最後だから・長い間お世話になったからと自分に言い聞かせて、Nさんの申し出でランチに行くことになりました。

その日はつつがなく終わり、最後に写真を撮ろう!と言われたため、お店の前でNさんの携帯で二人で写真を撮って、サヨナラをしたそうです。

その日の夜。今日は楽しかったよと、最後に撮った写真が送られてきました。

しかし、そこに写っていたのは、髪が乱れ、顔が煤けた老婆のようになった自分の姿でした。

最初は気持ち悪いと思いながらも、きっと気を遣って疲れていたんだ・引越しのために挨拶回りなど忙しくしていたから、顔に出たのだと気にしないようにしていましたが

その日から、遠のくどころかメールやSNSでのコメントを通して、お互いの絆は永遠だ…のようなことをNさんが送ってくるようになったらしく、度が過ぎた様子に気味が悪くなったOさんは、ついにいい加減にしてくださいと伝えて連絡を一切取らないようになり、全てのアクセスを拒否したとのことでした。

ただその写真だけは、なぜか消さずに残していたそうです。

月日は過ぎ去り。新しい会社に馴染んだころ。Oさんは、少し不思議なことに縁のある仕事仲間の男性と食事をしていました。

話の流れで、そう言えばこんな写真があって…と思い出し、その男性に見せると

「うわ、これはOさんの顔じゃないよ。疲れているのではくて、別人じゃない。」と言われたそうです。

詳しく話を進めるうちに、Nさんは離れてほしくなかったんじゃないか・あなたのことに親しみを感じながらも、嫉妬が大きくなって呪ってしまったんじゃないか…そのような話を聞き、Oさんはそれ以来、仕事を通して関わる人とは業務連絡以外のことを話さなくなりました。そして、優柔不断に人に関わることもやめたそうです。

写真はその後に消去して、念のため、その地域で徳があると言われるお寺へお祓いに行って心の荷を下ろしたと仰っていました。

今彼女は職場で邁進しながら、幸せに暮らしています。そもそもバイタリティがある人なので、きっとこれからも走り続けていくのではないでしょうか。

仕事とプライベートで見せる顔は別。しかし、だからこそ本当の姿を知り、全てを自分のものにしたい…というのも人間の心なのかもしれません。

ただ、輝かしい和かな顔だけを見られるというのも、幸せのカタチであり素行を知らない人間の特権です。

アイドル然り、憧れの人然り。

それを味気ないと思わず、妬ましいと思わず、特別な関係よりも細く長く、何事もなく関われることに感謝しよう。そして、境界線を自分から踏み越えることがないように気をつけようと、この話を聞いた時に考えた。

というお話でした。


最後に詳しくお話を聞いた時「Nさん、いい家族や彼氏がいたのに、素直になれない人だったから。寂しかったのかな。」とOさんが呟いておられました。そばに居てくれる人に気付いて、幸せに暮らしてくれているといいですね。


このお話は、ご本人が特定されないようフィクションを交えながら構成しています。






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