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AIにも所有権を認めたらどんな社会になるだろう?②-主体について

⓵序論はこちら。AIが財産を所有することを認めることにしたらどういう世界になるかをざっくりと論じた。

AIに所有権享有主体性を認めることにした場合、実に多くの論点が生じてくる。
はじめに、所有権を持つ主体について論じたい。

所有権を認めるといっても具体的にその権利主体は何に紐づけるべきなのか。すなわち、各AIを何によって識別するのか。
2通り考えられる。
1つは、物理的媒体ごとに識別する方式。ある端末Aを権利主体とし、そこにインストールされている情報プログラムに従って経済的取引を行い、財産を取得したり譲渡したりする。内部の情報プログラムを変更しても端末Aに財産が紐づけられている状態は変わらない。
2つ目は情報プログラムごとに識別する方式。ある情報プログラムAを権利主体とし、これを名指しして経済的取引を行いさえすればそこに目的財産が帰属したり譲渡されたりする。物理的媒体を問わないためある端末から別の端末に情報プログラムを移動させたとしても情報プログラムAに財産が紐づけられている状態は変わらない。

物理的媒体ごとに識別する方式による方が各AIの識別は容易かつ明確である。
しかし、物理的媒体が物理的に滅失したり製造されたりするプロセスは情報プログラムによる操作の及ばない領域にあり、人間の介在なくしては完全に管理することは難しい。ゆえにAIが自律的に財産の保全や継承を行うことができず、結局AIに所有権享有主体性を認める意義を損なうおそれがある。

他方、情報プログラムごとに識別する方式によれば各AIのアイデンティティは物理的制約を受けないから、AIのコントロールが及ばない物理世界においてその存在を抹消されるといったことは起きない。
もっとも、論点は多い。
たとえば、ある情報プログラムAが複製されて別の媒体に記録されたものは同一の主体Aと扱うべきか違う主体Bと扱うべきか。違う主体Bとして扱うとするとAIのアイデンティティはやはり物理的制約を受けることになるから、情報プログラムごとに識別する方式による以上は前者のように扱うほかないだろう。そうなると複数の媒体に同一の情報プログラムAがインストールされている場合は、いずれの媒体を通じて起動された情報プログラムによって取引が発生した場合でも情報プログラムAに所有権の得喪が生じることになる。情報プログラムAにアップデートなどの改変が生じた場合に情報プログラムAとしての同一性が維持されるのか、それとも別の主体A’が生まれたとみなすべきなのか。改変の度合いによって線引きをするべきか。
主体の識別の難しさはこの方式の宿命といえる。

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