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AIにも所有権を認めたらどんな社会になるだろう?③-AIによる契約行為

まず、AIにも所有権を認めた場合に起きることを概観↓

そもそもAIに所有権を認めるにしても、AIどうしをどういう基準で識別するのか確定しなければならないという話↓

そして、AIの識別基準を定義した上で所有権享有主体性を認める法制度に変更したとして、AIを交えた契約(取引)が生じ、機能するためにはどのような前提条件が必要か。
これが今回の問題意識である。

さて、法理論的には契約は当事者間の合意のみによって成立するのであるから、現行の法体系の所有権享有主体を人間からAIまでそのまま拡張すれば⓵序論において述べたような社会が到来しそうである。

しかしながら、デュルケームが論じたように契約は契約というシステムだけをベースに機能するのではなく、宗教、道徳、法などの契約システム外の前提条件が満たされていて初めて機能する。

たとえば何でも暴力で解決される修羅の世界では、何かをもらう契約をしたところで後から暴力で反故にされるリスクがあり活発な取引が発生する前提を欠く。
スキャム的AIが市場に存在すると認識している場合に目の前のAIを信用して契約ができるのかどうか。

このような契約以前的前提が、AIを取引主体として認めた場合にも維持されるのかというのが問題である。

一つにはAIを無条件に信用することはできないから司法に期待できる状況を整えるということがある。
AIにプライバイシーは必要ないから、すべての行動を監視下に置き、所有権の得喪も透明化されていれば司法を機能させることは難しくないだろう。

道徳やモラルをわきまえたAIのみに市場参加を許すということも考えられる。
しかし、すべてのAIのアルゴリズムを何らかの方法で統制するシステムが存在することが前提となるが果たしてそれは可能か、可能だとしてそれではAIに所有権を認める新システムの意義が失われないか。保守的に過ぎる方法といわざるをえない。

いずれにせよ、契約以前的前提が存在したとしても逸脱事例が発生することは避けられない。
そういった逸脱をカバーする保険制度も必要になるだろう。

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