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【自作詩】 オアシス

オアシス/匤成深夜

水滴が窓や壁に貼りつくと 下へ下へ一本
線を引きながら降りてゆく
雨として降った雲の シャワーの湯として
利用されたあとの虹

雫に残された 束の間の余生
窓の向こうには刈っても刈っても伸びてくる
アパートの植え込みが映り込み
ぼんやり輪郭を滲ませている

浴室の蒸気に赤らむ我が身の熱
ふと目を上げれば飛び散った湯が壁を伝う
無地の壁だからこそ くっきりと残る一条の線

変わる壁の色調に 自分が映ったような気がして
少しく恥じらってしまう この感覚は
夢を追いかけ やがて破れた昔の傷跡

生とは 雨粒のなかに映り込んだ低木が
揺らめいた時の間(あはひ)
実物よりもみどりの色を濃くして鈍く光る

それが落ちて見えなくなった後も 
ほかの誰かが来るまで
雫が通った形跡はしばらく残る

世界とは そんな光の中に在る
屈折した光を誇張しながら 
終わりを待つように揺れつづけている

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118字
少し格好つけて書いたものもありますが、楽しさも忘れず書きました。

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