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書評;アーサー・クラーク 「都市と星」

こんにちは、匤成です。だいぶ前にアーサー・クラークの「都市と星」を読みながら短歌を詠むというシリーズを書いていました。大筋が決まれば、あとは世界観は変わらないだろう、と甘く見ていたのですが、舞台が思ったより大きくて、短歌シリーズは志半ばですが、終了しました。

現代の技術を預言した?

アルヴィンという若者が暮らすダイアスパーは、都市の周りを外壁で覆われた機械(テクノロジー)が発達した大都市だ。全てのものは中央コンピューターにデータとして残されている。それもベストな状態のものばかりで、醜いものは存在しないのだ。そのデータは年数にして10億年。

これが書かれたのが、テクノロジーが発達したここ20年のことではなくて、1956年〈原語は1955年かもしれない〉だという点だ。鉄腕アトムよりも精細な点まで現代に近い所がこの本の、C・クラークの凄さだ。

都市・ダイアスパー

主人公・アルヴィンが生きている都市。この物語では、地球の人間はかなり減少している。かつては宇宙進出を果たし他の星々を侵略・傘下に治めたものの宇宙からの侵略者に返り討ちに遭い、今度は地球が侵略された。

それでダイアスパーでは侵略を恐れるあまり、その事実を無かったかのように扱う事にした。過去の人々は都市の中に閉じこもる事に決めたのだ。都市の周囲を壁で覆い、外界の事は他言無用,興味を持つことさえタブー視されている街なのだ。

私たちの、現在の機械よりも進んでいて、頭の中でイメージするだけで具現化できるほどのテクノロジーが発達している。自動歩道路(空港にある平らのエスカレーターのような)歩道まである。人間は何十万年と長寿だが、一定の人間モデルがあって、差異こそあれ病気や老衰で死ぬ事はない。全てはメモリーバンクに収められているので、幾つあるかも分からない“前世の記憶”と共に新たに生まれるのだ。

ただ、アルヴィンの場合は少し違った。前世の記憶を持たない最初の人間、特異スタイルだった。アルヴィンはその事に途中で気付くが、この世界の記憶がないので、興味津々な所があり皆がこの街から出ようとしないのが不思議でならない。真実を確かめようとあらゆるデータにアクセスしていく。そして、他の町へ繋がっていそうなものを発見する。

リスの村

ダイアスパーの他にリスという村が出てくる。アルヴィンの友となるヒルヴァーがいる村だ。無機質な都市とは全く異なり、自然や川、森などがある

こちらには老いも若きも子供さえもいて、寿命と生殖機能で世代が交代していく村落だ。文明の代わりに精神世界が発達しており、テレパシーという特別な力を有している。いくつかのコミュニティに分かれていて、各々に首長のような人がいる。しかしダイアスパーとリスは互いに認め合っておらず、相手のほうが劣っていると考えている。それで、セラニスという女性に「ここに残るか、帰るなら記憶は消させてもらう」と言われてしまうのだ。

都市や村の外れに行けば、外には砂漠が広がっているのが確認できる。人々は、外(砂漠)に出れば生きては帰れないと刷り込まれているが、アルヴィンは他人と違う興味を持って、地球の歴史データにアクセスしては過去の地球の自然美に感銘を受けていた。

だから地球の何処かにはかつての海や山並みや文化の違う町々があるのではないかと疑っていたが、リスを知る前には過去の産物に過ぎないと思う事もあった。

〈道化師〉というキャラが現れて、アルヴィンと共に歴史を紐解いていきながら、10億年前、ダイアスパーが出来た瞬間をデータの中から見つけ出した。そして地底に何かがあるのを見つけ、リスに続く交通システムの名残りだと分かった。そこでリスを発見する。

その後ヒルヴァーと出会い、リスを探索する旅に出かける。登山,ハイキングの様相だ。いくら精神世界で繋がっているとはいえ、真夜中だったために皆は眠っていて、道のりを誰にも教えてもらえずに遭難してしまった。彷徨っているうちに、人間が宇宙を侵略する際の要衝にしたシャルミレインという宇宙港の遺跡を見つけたのだった。

この先はネタバレになるので、無料公開部分はここまでとする。

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1,521字
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