見出し画像

天国と地獄:A

・エアコンは何処に行ったってエアコンでしかない。空調とも呼ぶ。暑い日には涼しく、寒い日には暖かく。湿気と酷暑に襲われる8月の東京だろうが、冬本番となる2月の青森だろうが、エアコンはエアコンの仕事をするだけだ。その恩恵は計り知れないモノがあり、最早僕たちが快適に暮らすには必要不可欠なモノとなった。

・ただ、厳密に言うと冬場の青森でエアコンというのは、本当はコスパが悪い。未だに灯油やガスのストーブが、部屋を暖かくするには主流だ。僕の実家では、エアコンは専ら「クーラー」と呼ばれ、夏以外に使うことは殆どないのが実情だったりする。東京での暮らしは年がら年中エアコン頼りだし、逆をいえばエアコン以外の空調機器は無くても全く問題ない。そりゃ、青森でも、乗り切ろうと思えばやれるのかもしれない。それでも費用面であったり、その場所特有の何かしらの理由…この場合は寒さが桁違いなことであったりとか、「エアコンの機能は変わらなくても」、その存在の価値に対しては「多少のズレ」が、環境によって生まれてしまうことは多々ある。

・砂漠での毛布、南極での水風呂、飼い犬に漫画本、石像に音楽。全て割と無意味だ。そのモノ自体の機能や良さは変わらないが、与える対象や環境によって、価値は大きく変動してしまう。これは人間にとっても、僕らの行動についても、同じことがいえる。素晴らしいものには手を伸ばしたいし、興味のないものには触れない。そのくらいシンプルでいい。「心が動いたかどうか」これに尽きる。

・今回は、「機能や良さが変わらないもの」を通して、「心が動いたこと」と「心が動かなかったこと」について、2編に分割して綴る。思いがけないところにいた味方、味方だと思ったらそんなことはなかった他人、僕の音楽を愉しんでくれる人たち、僕の音楽を消費した奴ら。すべて忘れないために。

・ひとつ確実にいえることは、僕は自分たちの作る音楽や、それに伴う活動を応援してくれる、愉しんでくれる人たちへ心から感謝している。特に今。なんだか痛烈に。あなたたちのおかげで、まだ腐らず先を見てやれている。そして、そんな味方たちに対して、自分に何が出来るか、何を返せるかをずっと考えている。多分、それは作品や活動でしか返せないと思っているし、僕やメンバーやあなたたちで作ってきた、護ってきたこの10年を、より美しい夜に磨き上げ、未だ見ぬ味方たちに届けていきたいとも思っている。19歳の自分が憑依するこの頃、あの頃は居なかった人たちが僕の背中を支えて、押し上げてくれている。だからこそしなやかに、夜の語り手として存在し続けられている。心から、そう思っている。この場を借りて、感謝の意を残しておきたい。本当にありがとう。

・美しい夜、渦巻く色々はそれぞれの正しさだけで成り立っている。ここからは報われた夜と報われなかった夜の話。全て夜のせい?どうだろう。強いていうなら、全員のせいなんだよな。本当は。

ここから先は

4,411字 / 3画像
残滓、文化的屍者の記録。

中枢第3区画

¥500 / 月 初月無料

~2023.03.31

僕が良質な発信を行い続ける為には生きていないといけないので、サポートしていただけたらその金額分生きられます。主に家賃に使います。